白物家電市場いよいよ「底打ち」--需要回復を牽引するのは参入相次ぐ人気ジャンル

 電機大手をはじとめする主要家電メーカー各社の2023年度第3四半期(2023年10~12月)決算を見ると、低迷が続いていた白物家電市場もいよいよ「底打ち」が感じられる内容となった。

  1. ハイエンドモデル中心に需要回復の兆しを見せる白物家電
  2. 需要回復を牽引する高機能ドライヤー
  3. 外出機会増加でデジカメ販売増
  4. 想定外の落ち込みを見せた欧州空調事業

ハイエンドモデル中心に需要回復の兆しを見せる白物家電

 白物家電事業を担当するパナソニックグループのくらしアプライアンス社や、日立グローバルライフソリューションズ(日立GLS)は、第3四半期は減収減益の厳しい業績となっているが、「国内ではビューティ・パーソナルケアが引き続き堅調を持続した」(パナソニックホールディングス 代表取締役 副社長執行役員 グループCFOの梅田博和氏)といった声が聞かれたほか、「国内需要の低迷は見られたが、2023年度がボトムになり、2024年度はリカバリーが始まるだろう。コロナ禍の巣ごもり需要の反動調整が終わるタイミングに入る」(日立製作所 執行役副社長兼CFOの河村芳彦氏)と、明るい兆しを指摘する声があがっている。

 また、シャープでは「国内では個人消費が旅行や外食にシフトしたことで、白物家電市場全体は依然として低調ではある。また、調理家電などでは流通在庫の抑制を進めた影響があった」としたものの、「美容家電が大幅に伸長した」と、一部カテゴリーでの回復ぶりを示す。国内外を含めた白物家電事業全体で、第3四半期は増収に転じるといった動きも見られた。

 上場以来初の通期赤字決算となったバルミューダも、2023年10~12月は、国内家電カテゴリーの四半期実績で過去最高を更新しているという回復ぶりだ。高級家電の需要が見られているというわけだ。

 このように、白物家電事業に関しては、各社とも厳しい決算内容とはなっているが、2024年度からは回復基調に転じるというのが、共通した見方になっている。関係者からは、数値の厳しさとは別に、明るい声が徐々に聞かれ始めているのが印象的だった。

需要回復を牽引する高機能ドライヤー

 なかでも、需要回復を牽引しているのが、理美容家電である。

 一般社団法人 日本電機工業会が発表した民生用電気機器の国内出荷実績によると、2023年1~12月において、出荷台数で前年実績を上回ったのは、23カテゴリーのうち、ヘアドライヤーだけとなっている。

 髪の毛や肌に、ツヤや栄養を与える機能などが追加されるなど、機能の進化に加えて、コロナ禍では自宅で美容を行いたいというニーズに支えられたのに続き、新型コロナが5類に移行したあとも、髪や肌を他人に触れられるのを避けたいといった需要があったり、マスクを外す機会が増えたことで肌の手入れに気をつけたいといったニーズがあったりといったことで、理美容家電が継続的に売れている。この勢いはまだ続きそうで、理美容家電の展示に力を注ぐ量販店も少なくない。

シャープのプラズマクラスタードレープフロードライヤー シャープのプラズマクラスタードレープフロードライヤー
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外出機会増加でデジカメ販売増

 もうひとつ好調なカテゴリーがデジタルカメラだ。

 一般社団法人 カメラ映像機器工業会のデジタルカメラ統計によると、日本向けの出荷台数は、2023年12月の実績で、前年同月比12.5%増という高い伸びを見せている。

 ソニーグループでは、「デジタルカメラは、中国、北米で想定を上回る需要に支えられている。デジタルカメラおよび交換レンズは、新製品の市場導入などもあり、引き続き事業拡大に取り組む」(ソニーグループ 執行役員 財務IR担当の早川禎彦氏)と語る。また、キヤノンでも、「カメラの需要は底堅く推移しており、価格競争が激化するなかでも、ミラーレスカメラの比率を高めながら、通期でも前年から売上げを伸ばすことができた」(キヤノンの専務執行役員 経理本部長の浅田稔氏)と語る。パナソニックグループでも、「デジタルカメラは旅行需要の再開に伴い増益基調にある」(パナソニックホールディングスの梅田グループCFO)とコメントしている。

 コロナ禍での制約が徐々に緩和されたことにより、外出機会が増加しており、それに伴って撮影機会が増加。デジタルカメラの販売にも弾みがついている状況にある。

ソニーのレンズ交換式デジタル一眼カメラ「α9 III」 ソニーのレンズ交換式デジタル一眼カメラ「α9 III」
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想定外の落ち込みを見せた欧州空調事業

 今回の各社の決算発表のなかで、マイナスの動きが顕著だったのが、欧州の空調事業だ。

 パナソニックグループでは、「空質空調は欧州を取り巻く環境悪化による需要減が見られる。下期には市況が改善すると見込んでいたが、四半期ごとに成長が鈍化し、第3四半期は減収に転じた。年間の総需要は前年実績を大きく下回ることになる」(パナソニックホールディングスの梅田グループCFO)とコメント。三菱電機でも、「欧州を中心に空調機器の需要が減少しており、想定以上に落ち込んでいる。期待していたほど市場が成長していない」(三菱電機 常務執行役 CFOの増田邦昭氏)というように、想定外の低迷となっている。ダイキン工業でも「欧州ヒートポンプ暖房需要の回復には遅れが見られる」と指摘し、富士通ゼネラルでも、欧州のルームエアコンの販売減と、補助金制度の変更をはじめとしたA2W(Air to Water=ヒートポンプ式温水給湯暖房機)を取り巻く一時的な市場環境の変化を受けて売上げが減少したという。

 とくにパナソニックグループでは、成長事業のひとつに、欧州でのA2W事業を位置づけて積極的な投資を行っていただけに経営への影響は少なくない。

 梅田グループCFOは、「欧州A2W事業は、2022年度までは2倍で成長していたが、2023年に入り急減速している」と指摘。「脱炭素社会に向けた流れから、長期的には成長する事業領域と考えているが、回復には2年程度かかるだろう」と予測する。

 三菱電機でも「個人消費が停滞しているのに加えて、欧州でのガス価格の値下がりや、省エネ補助の終了あるいは減額といった政策の転換で、欧州での空調事業が厳しい状況にある」とする。

 また、ダイキン工業では、「欧州ヒートポンプ暖房市場は、中長期的な脱炭素への流れは変わりなく今後も拡大する」としながら、「空調の販売店での暖房の取り扱い促進や、異業種での新規チャネルの開拓など、販売およびサービス体制の強化を図り、商品ラインアップの拡充や、省工事化など需要の創造につながる取り組みを進める」と語る。

 欧州空調市場の市況回復は、日本の空調メーカーにとっても重要なポイントになる。欧州市場の個人消費低迷の長期化に加えて、補助金制度の効果や、運用時において電気の優位性を示すことができるかがポイントであり、これらの課題を克服できるかが鍵になる。

 このように白物家電を取り巻く環境を見てみると、まだ本調子とは言えない状況にあり、いくつか課題もあるものの、明るい兆しが少しずつ見られ始めているのも事実だ。2024年度に向けて、回復基調がどんな角度で顕在化してくるのかが注目される。

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