ソニーグループは、2023年度第3四半期(2023年4~12月)の連結業績を発表した。
売上高および金融ビジネス収入は、前年同期比20.2%増の9兆5398億円、営業利益は同15.3%減の9793億円、調整後OIBDAは同5.1%減の1兆4503億円、調整後EBITDAは同5.0%減の1兆4376億円、税引前利益が同10.8%減の9921億円、当期純利益が同9.6%減の7815億円となった。
また、第3四半期(2023年10~12月)連結業績は、売上高および金融ビジネス収入は、前年同期比21.7%増の3兆7475億円、営業利益は同9.9%増の4633億円、調整後OIBDAは同12.0%増の6283億円、調整後EBITDAは同14.3%増の6050億円、税引前利益が同17.2%増の4586億円、当期純利益が同13.2%増の3639億円と増収増益になった。売上高は四半期実績としては過去最高、営業利益は過去2番目に高い水準となった。
一方、2023年度通期(2023年4月~2024年3月)業績見通しを修正し、売上高および金融ビジネス収入は、8月公表値に比べて1000億円減額の前年比12.1%増の12兆3000億円としたほか、営業利益は100億円増加の同9.4%減の1兆1800億円、調整後OIBDAは据え置いて同1.8%減の1兆7850億円。調整後EBITDAは150億円減額の同1.5%減の1兆7700億円、税引前利益が300億円増加の同6.6%減の1兆1900億円、当期純利益は400億円増加の同8.5%減の9200億円とした。
また、年間2500万台の販売目標を掲げていた「PlayStation5」(PS5)は、第3四半期までの販売状況を踏まえて、2100万台前後に下方修正。さらに、「PS5ハードウェアは発売5年目となり、コンソールサイクルの後半に入ることから、収益とのバランスをより重視した販売最適化を進めることになる。2024年度以降の販売台数は緩やかに減少することを見込んでいる」(ソニーグループ 執行役員 経営企画管理の松岡直美氏)とした。PS5の累計出荷台数は2023年12月末時点で5470万台に達している。
今回の業績について、ソニーグループ 代表執行役社長 COO兼CFOの十時裕樹氏は、「営業利益が過去最高に迫る水準となったことで、2023年度を最終年度とする中期経営計画の総仕上げに向けてよいモメンタムを作ることができた」と総括する一方、「PS5では、過去最高の年間販売台数の更新はできないとギブアップするつもりはない。次期中期経営計画のなかで取り組んでいきたい」とも語った。
セグメント別に第3四半期(2023年10~12月)実績と、通期見通しを見てみよう。
ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野の売上高は前年同期比16%増の1兆4444億円、営業利益は26%減の861億円、調整後OIBDAは19%減の1131億円となった。また、通期見通しは、売上高は前回公表値から2100億円の下方修正を行い、前年比14%増の4兆1500億円とした。営業利益は据え置き、8%増の2700億円、調整後OIBDAも据え置き14%増の3850億円とした。また、2024年度はG&NS分野の営業利益で若干の増益を見込むことも明らかにした。
2023年度第3四半期は、サードパーティーソフトウェアの増収や為替の影響などにより、売上高は大幅増となったが、PS5のプロモーション費用の増加などによるハードウェアの損失拡大により大幅な減益となった。また、PS5の販売台数減による在庫増加が影響し、その引き当てにより、営業利益で約300億円が第3四半期から第4四半期にシフトすることになるという。
PS5ハードウェアの第3四半期の販売台数は820万台。「年間2500万台を前提とした販売目標には及ばなかったが、四半期販売台数としては過去最高になった」(松岡執行役員)と述べた。
PS5の普及拡大に加えて、サードパーティーのFree to Play(基本プレイ無料)タイトルのヒットの影響もあり、2023年12月の月間アクティブユーザー数は過去最高となる1億2300万アカウントとなり、第3四半期の総ゲームプレイ時間は前年同期比13%増になり、「主要なエンゲージメント指標は大きく伸長した」と強調した。
また、2023年10月に発売したPS5専用タイトル「Marvel's Spider-Man 2」の世界販売本数が2月4日に1000万本を突破。PC向けタイトルを含むMarvel's Spider-Manシリーズの累計出荷本数は5000万本を超えたという。だが、2024年度については、ファーストパーティーによる大型タイトルの発売が予定されていないことも明らかにした。
「PlayStation Plus」の会員数は若干減少したが、上位サービスへのシフトや価格改定の影響により、ネットワークサービスの売上高は前年同期比11%増になった。
十時社長は、2023年10月に、PlayStation事業などを行うソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の会長に兼務で就任しており、4月には暫定CEOに就任する予定だ。「会長に就任してから、SIEのリーダーシップチームと積極的にミーティングを重ねたり、スタジオにも訪問したりといったことをしている。自分たちの責任範囲で最適化してやっていることは理解している。だが、全体の成長やサステナブルな利益の創出についての理解が必ずしも深くないという点が組織の問題である。できるだけ会社の状況、業界の状況を、透明性を持って説明し、全体をハーモナイズさせたい。大きな目標に向かうことを考えてもらいたいと思っている」などと述べた。
今回の会見では、PS5の収益性などについても言及した。
十時社長は、「PS5は、シングルnmのチップを使用しているが、『PlayStation 4』(PS4)などに比べるとチップシュリンクによる恩恵が受けにくく、コストダウンが難しい。新たな筐体になってもコストが下がるわけではない。採算性ではPS4の方が上である」とコメント。「PS5は、マージンとのバランスを取りながら、普及させるのが大きなチャレンジである。チップセットやメモリのコストがあがっており、気軽に購入できる製品として、販売を継続することが大きなポイントとなる。本体のディスカウントではなく、収益性やユーザーエンゲージメント、販売台数のバランスを取ることが大切である。PS4との違いは、ネットワークサービスにシフトしていること、PS4からPS5に顧客を引き継いで行けること、サーバパーティーを含めたマーケットが大きくなっていることであり、MAUを落とさないための努力が大切となる。また、ファーストパーティーのタイトルは、かつてはコンソールを普及させるためのマーケティングツールという側面があったが、いまはPCへの対応も含めて、しっかりと利益を確保することが大切である」などと述べた。
音楽分野の第3四半期の売上高は前年同期比16%増の4221億円、営業利益は21%増の761億円、調整後OIBDAは25%増の985億円となった。また、第3四半期のストリーミング売上高は、音楽制作が12%増、音楽出版が17%増となった(いずれもドルベース)。2023年度通期見通しは、売上高で100億円の上方修正を行い、前年比14%増の1兆5700億円、営業利益は据え置き前年比12%増の2950億円、調整後OIBDAは100億円増額し、前年比14%増の3600億円とした。
「ストリーミング市場の拡大により、リリースから一定期間を経過した音楽カタログの収益機会や資産価値が大きく上昇している。当社所属アーティストによるホリデーソングカタログ6作品の米国のストリーミング再生総数は、第3四半期だけで10億回を突破した。マライア・キャリーのアルバム『メリークリスマス』は発売から29年を経過しても、SMEのアルバム売上トップ10に入っている。業界を代表するアーティストの音楽カタログ群の取得により、音楽事業の安定的な収益とシェア拡大に貢献する基盤を確立している」(松岡執行役員)と述べた。
映画分野の売上高は前年同期比10%増の3663億円、営業利益は64%増の416億円。調整後OIBDAは43%増の546億円となった。2023年度通期見通しは、売上高は100億円増額とし、前年比7%増の1兆4700億円、営業利益は据え置き同4%減の1150億円、調整後OIBDAも据え置き、同2%減の1650億円とした。
第3四半期は、映画製作におけるテレビおよび動画配信サービス向けライセンス収入が増加。ホームエンターテイメント売上の増加により、大幅な増収増益となったほか、クランチロールは、2023年12月31日時点の有料会員数は1300万人を突破。買収完了以降、年平均23%増のペースで拡大しているという。
一方で、「ハリウッドのストライキはようやく終結したが、脚本制作の遅れにより、映画の公開スケジュールの変更やテレビ番組作品の納入遅延が続いており、ストライキによる2023年度収益への影響は200億円弱と試算している。2024年度は公開遅延の継続に加え、2023年度の公開作品の減少したことによる動画配信サービス向けライセンス収入の減少が想定され、ストライキによる損益への悪影響がピークとなる。損益額はドルベースで前年比2倍に増加する」としたが、「クランチロールのさらなる成長、グローバルでの積極的なコンテンツ制作などにより、2024年度の営業利益は増益を目指す」との考えを示した。
エンタテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S)分野の売上高は前年同期比2%減の7357億円、営業利益は5%減の772億円、調整後OIBDAは2%減の1034億円となった。2023年度通期見通しは売上高が100億円の下方修正とし、前年比2%減の2兆4300億円、営業利益は据え置き、前年並の1800億円。調整後OIBDAも据え置き、前年並の2800億円とした。
ソニーグループ 執行役員 財務IR担当の早川禎彦氏は、「第3四半期はテレビの販売台数の減少が響いたが、年末商戦は想定通りに推移した。北米市場では需要の大きな減衰は見られず、順調な売り上げとなった。中国市場ではテレビ需要が大きく落ち込んだが、デジタルカメラは想定を上回る需要に支えられた。第4四半期は、テレビについては、もう一段の在庫圧縮と費用抑制を進めるが、デジタルカメラと交換レンズは新製品の市場導入などにより事業拡大に取り組む」と述べた。
イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)の売上高は前年同期比21%増の5052億円、営業利益は18%増の997億円。調整後OIBDAは22%増の1637億円となった。2023年度通期見通しは、前回公表値を据え置き、売上高は前年比13%増の1兆5900億円、営業利益は同8%減の1950億円。調整後OIBDAは同8%増の4400億円とした。
「モバイル向けイメージセンサーが増収となり、第3四半期の売上高、営業利益は過去最高を更新した。マイナス成長を続けてきたスマホ向け製品市場は第3四半期で底を打ったと見ているが、北米市場が前年割れを継続しており、先行きの不透明感は完全に払拭していない。製品市場動向や在庫状況などに注視し、慎重な事業運営を継続する」と述べた。
また、2023年度の最重要課題と位置づけたモバイル向けイメージセンサーの歩留まりは予定通りに改善していることを報告。だが、産業および社会インフラ向けセンサーは、市場の回復の遅れがあり、第4四半期では生産調整を進め、在庫の適正化を図ることになるという。
さらに、I&SS分野は、2023年度までの3年間の売上高が、年平均成長率が22%増(ドルベースでは8%増)となり、モバイルセンサーの大判化、高付加価値化が着実に軌道に乗っていることに言及。「次期中期経営計画期間中も事業成長を継続できる」と意気込んだ。
なお、次期中期経営計画期間中のI&SS分野への設備投資については、「既存生産設備と戦略在庫を最大限に生かすことで、原中期経営計画期間の7~8割程度に抑えられると想定している」(十時社長)とした。
金融分野の金融ビジネス収入は前年同期比1177%増の3117億円の大幅な増収となり、営業利益は64%増の773億円、調整後OIBDAは57%増の305億円となった。2023年度通期見通しは、金融ビジネス収入が900億円上方修正し、前年比46%増の1兆3000億円、営業利益は200億円増額の同45%減の1750億円、調整後OIBDAは据え置き同44%減の1800億円とした。
なお、金融事業のパーシャルスピンオフに関しても触れ、産業競争力強化法に基づく事業再編計画の認定を受けたことで、2025年10月のスピンオフの実行と、ソニーフィナンシャルグループの株式上場に向けた準備を進めていく考えも示した。
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