フードテック官民協議会は2月2日に、令和5年度「未来を創る!フードテックビジネスコンテスト」本選大会を開催した。これからフードテックビジネスの取り組みを進めていくビジネスアイデアを募集する「アイデア部門」と、具体的な事業検討が行われている取り組みや、実際に展開中でさらなる成長や発展が見込まれるプランを募集する「ビジネス部門」に分かれて合計12組がプレゼンテーションを実施し、各部門ごとに最優秀賞と優秀賞、さらに審査員特別賞が授賞された。
受賞者と受賞対象のタイトルは以下の通り。
アイデア部門の最優秀賞に輝いたプラントフォームの遠崎英史氏が発表したのは、魚と植物を同じシステムで育て、同時に収穫できる循環型農法のアクアポニックスを棚田で実現する棚田ポニックス(循環型施設園芸)だ。
バクテリアで生物濾過を行い、野菜の有機肥料を生成する「濾過棚田ハウス」、有機肥料による水耕栽培を行う「LED補光栽培棚田ハウス」の3つで構成される。
「養殖棚田で魚に餌を与えると魚がフンをし、それが水に溶けてアンモニアになったものが濾過棚田に移る。するとバクテリアが分解して野菜の肥料に生まれ変わる。それをその下の棚田で受けて水耕栽培で野菜が育つ。綺麗になった水は、また養殖ハウスの方に戻るという循環型の棚田を想定している」(遠崎氏)
プラントフォームでは年間10プラントほど立てて栽培しており、「新潟県長岡市で-4℃の極寒から40℃の猛暑まで安定して生産し、現在は大手のイオンなどに卸している」と遠崎氏は語った。
遠崎氏は棚田ポニックスの取り組みについて「人口の高齢化」と「食料安全保障問題」、「環境温暖化、燃料問題」の3つの課題解消につながると語る。
「農業人口を増やすことはすごく難しいが、中山間地域の棚田を活用し、それをIoTで管理することで解消したい。それに加えて何ができるかというと、すべての野菜とすべての魚をここで作ることが可能になり、地産地消ができると我々は思っている。また、中山間地域の棚田を運営される方が減っていることから農業用の水路問題が発生している。その辺の管理もしていくことで、その下の棚田に、良質な水を運んでいけるような形にしていきたい」(遠崎氏)
棚田ポニックスでは輸入小麦に対して価格競争力のある国産小麦を栽培することで価格の安定化を図るだけでなく、化学肥料や農薬を使わない農業のため「『みどりの食料戦略システム』とマッチした農業だと思っている」と遠崎氏は語った。
投資を農産物ではなく養殖業で回収するというのがビジネスモデルのポイントだ。
「農産物で回収しようとするとたくさんの年月がかかってしまうが、これは基本的には養殖業で回収するシステムなっている。野菜はそもそも0円で提供してもビジネスが可能になる。現状22万ヘクタールあるとされる棚田をすべて棚田ポニックスにすると、現在の輸入量の約67%を自国で生産できるシステムを供給できることになる」(遠崎氏)
最優秀賞を授賞した理由について、審査員を務めたUnlocX代表取締役でSKS JAPAN主催者の田中宏隆氏は「発想が一番大きかった」と語った。
「棚田を使って新しい循環型の仕組みを作るというのは恐らく海外でも行けるだろうし、その考え方がいろいろところに転用できるのではないか。広範な社会課題を解決するこのアイデアが実現される世界を見てみたいとみんなが思った」(田中氏)
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