むやみやたらと1on1の頻度を増やさないために--高めるべき「誰」「いつ」「何」の解像度

川本周 (アトラエ)2024年02月03日 09時00分

 本記事は皆さまに「より“いい”1on1」の時間をお過ごしいただけるよう、1つでも多くの「きづき」をお届けするコンテンツとなっています。前編はこちら【「神1on1を目指さない」--1on1をより良くするために転換するべき思考ポイント】。

よりよい1on1のために高めるべき3つの解像度:「誰」「いつ」「何」

 これまでの前提を踏まえた上で、よりよい1on1を実現するために高めていくべき3つの解像度は「誰」「いつ」「何」の3つです。これらが低いと、真に向き合うべきものが粗くぼやけて、いい方向に進んでいかない結果に陥りやすくなります。

1.「誰」

 ここでいう誰とは、文字通り”誰”を指すのでしょうか。もちろん、回答は「1on1の相手」になるのですが、重要なこととしては、その人の「業務上の役割」ではなく、一人の人としての「人となり」「特性」を指しています。

 みなさんは1on1の相手のことを、業務上の役割や出来事以外で、どのくらい説明できますか?試しに以下の項目をどの程度埋められるか考えてみてください。

  • コミュニケーションの特徴
  • ポジティブな時の振る舞い
  • ネガティブな時の振る舞い
  • イライラする相手の特徴
  • 仕事を通じて実現したいこと(ビジョン)
  • 仕事をする上で大事にしたいこと(価値観)
  • 仕事を進める上での困りごと/悩み/問題
  • 今後やってみたいこと

 いかがでしょう?どのくらい埋められましたか。「いや、全然わからないな……」と、知らないことを知ることも大きな前進です。

 最近では、1on1として話すだけではなく、特性診断や価値観ゲームを通じてデータを獲得した上で、これらを抑えながら1on1に取り組まれる企業も多くいらっしゃいます。

【コミュニケーションの型】

上司も知っておいたほうがいい相手のコミュニケーションの形
上司も知っておいたほうがいい相手のコミュニケーションの形

【特性診断結果イメージ】

特性診断結果イメージ
特性診断結果イメージ

【価値観ゲーム イメージ】

価値観ゲーム イメージ
価値観ゲーム イメージ

 また、こういったデータを通じて、1on1の相手だけではなく、「自分」という“誰”を知ることも非常に有効的です。自分のことと言えども、先ほど挙げさせていただいたような項目をきちんと言語化する機会は多くなかったりします。自分自身がどんな特徴・強み・コミュニケーション上の“癖”があるかを知ることにより、よりよき1on1の実現に繋がります。更に、そういったデータ同士を掛け合わせることで、お互いの特性上の「相性」もわかるようになりました。

【相性分析イメージ】

相性分析イメージ
相性分析イメージ

 最近はこういった「相互理解」や「相性」も取り入れながら、1on1の組み合わせを考えたり、コミュニケーションの質向上に取り組まれたりする企業様も多くいらっしゃいます。「相手」「自分」「お互い」の解像度を高めて、よりよい1on1につなげましょう。

2.「いつ」

 続いて1on1において大事なのが「タイミング」のキャッチです。なんとなくの勘、感覚、経験等に基づいて、あるいはルーティンとして定期的に決め打ちで、という形で1on1が開かれているケースが多くありますが、これだけでは危険が潜んでいます。

 実は1on1の相手であるメンバー(に限らずですが)の心の状態は変わりやすいもの。また、一度変わったときに、解決が遅れれば遅れるほど、深刻化していくものでもあり、自然回復がなかなか難しいものでもあります。

 本人が主体的に仕事や組織に対して取り組めている状態を示す「エンゲージメント」データとの関係で少し紐解いていきましょう。

エンゲージメントは鮮度の高いデータをもとにアプローチすることが重要
エンゲージメントは鮮度の高いデータをもとにアプローチすることが重要
エンゲージメントが下降する要因はなにか
エンゲージメントが下降する要因はなにか
タイミングによって下降している原因は異なる
タイミングによって下降している原因は異なる

 タイミング並びに要因を機動的に捉えていくことの重要性が伺えるかと思います。悲しきことに、新卒社員のエンゲージメントは入社後右肩下がりで下がり続けるのです……。また、先ほど「自然回復を見込むのは難しい」とお伝えした通り、データ上からもその難しさが示されています。

エンゲージメント低下と経過期間の関係性
エンゲージメント低下と経過期間の関係性

 いかに機動的にエンゲージメント(働きがい)を育んでいくかが重要と、そのことが把握できると思います。さらに、これらのデータと1on1の関係性もわかっており、まさに1on1はエンゲージメントを育むことに非常に有効的な手段であると言えるでしょう。

データ活用事例:1on1とエンゲージメントの関係
データ活用事例:1on1とエンゲージメントの関係

 上記においても、

  • より短い頻度(1週間に1度や2週間に1度)で話せば話すほど、よりスコアが良い
  • 1on1の有無で「支援スコア(上司や仕事仲間から、職務上又は自己成長の支援を受けているのかの実感値)」が大きく異なる→1on1があったほうが当然スコアが良い
  • 1on1での会話の中身に際しても「よりプライベート(業務外)な話も交えてできているほうがスコアがよかった」

 ということがデータからも判明しています。……ですが、だからといってむやみやたらに「1on1の頻度を増やす」、「プライベート話をしまくる」という判断には当然ならないかと思います。改めて、「誰」の深い理解と「いつ」の機動的な把握がお互いの関係性構築(=よりよい1on1)にも、大きくつながることを認識いただければと幸いです。

3.「何」

 いよいよ最後の「何」についてです。改めて皆さんは1on1でどんなことを話されていますか。よくよく陥りがちなのが……

  • 「最近どう?」とオープンなクエスチョンでキックオフし、特に盛り上がらず/深まらず「はい、頑張ってます(苦痛だな……)」という部下が答えるだけで終わってしまう。
  • 上司ばかりが話して半ば説教になっている(上司と部下の間で満足度に大きな乖離がある)。
  • 結局話題が「数字」に着目してしまい、いかに数字をつくるか?ばかりに終止している。
  • 個々人の価値観の話題のみが優先/優遇されてしまい、チームで必要な活動との接続が十分になされない(1on1ですっきりして、職場に戻ると元に戻る)。

 などといった状態ではないでしょうか。こういった状態から脱却するためにも、「自由演技」「何でもOK」と捉えられがちな1on1を、「データ」を活用した良い1on1にすべく、次回は実践事例を交えてTipsを紹介します。

川本周

川本周

株式会社アトラエ Wevox営業責任者・ビジネスサイド統括 / SMBC Wevox株式会社 取締役副社長

新卒で当時未上場の株式会社アトラエ入社。入社後はIT業界に強い求人メディア「Green」のコンサルティング営業を担当。その後、新規事業の組織力向上プラットフォーム「Wevox」へ異動。現在は、Wevox営業責任者/ビジネスサイド統括を担う。通常業務の他に、社内のバリュー刷新や全社コミュニケーションの設計などの自社の組織力向上にも従事。2023年10月より三井住友フィナンシャルグループとの合弁会社であるSMBC Wevox株式会社の取締役副社長に就任。ISO 30414 リードコンサルタント/アセッサー資格ホルダー。

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