「チュニジアでワーケーションしたい人います?」
CEOであるジョン(oVice 代表取締役CEOのジョン・セーヒョン氏)の突然のチャットから実現に至った、oVice(オヴィス)の有志メンバーによる北アフリカ、チュニジアでのワーケーション。もともとoViceはチュニジアにも開発チームがあったが、正式にチュニジアに子会社「oVice Tunisia」を設立し、オフィスの開所式を行うこととなった。それに合わせてワーケーションしようと、CEOが参加者を募った。
今回は、日本と韓国からチュニジアを訪問して行われた1週間のワーケーションの様子を紹介したい。
oViceは石川県七尾市に本社があり、約100人の社員が日本、韓国、オーストラリア、チュニジアなどの各都市にいる。自宅に加え、時には全く違う都市のコワーキングスペースやホテルなどで働く「デジタルノマド」な働き方だ。バーチャルオフィス「ovice」を提供しており、普段はovice上でやり取りをしている。
日程は1月7日にチュニジア着き、1月13日にチュニジアを発つ1週間。SlackのチャットでCEOのジョンから送られた「ゆる募」の直後にメンションされた私は、参加を即決意した。最終的に、日本と韓国所属の社員10人が参加することになった。
日本からチュニジアへの飛行機は、最短1回の乗り継ぎが必要。移動時間は乗り継ぎ時間込みで最低20時間ほどだ。アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ、カタールのドーハ、トルコのイスタンブール、いずれかを経由して行くのが一般的で、航空券は往復で20万円程度。私はエミレーツ航空の関西国際空港(関空)~ドバイ~チュニス(チュニジアの首都)の往復で、みんなより1日早い1月6日に到着する便を購入した。
エミレーツ航空に搭乗した瞬間に流れる優雅なBGMが、中東のラグジュアリーな雰囲気を醸し出していた。機内食はおいしく量も十分で、関空からドバイの11時間は快適に過ごすことができた。
ドバイ国際空港に到着。空港内はとても広く、3時間ほどの乗り継ぎ時間もあきることなく過ごすことができ、時間通り無事チュニス行きの飛行機に搭乗した。
関空~ドバイ間と、ドバイ~チュニス間の飛行機で感じた一番大きな差は手荷物の量だ。日本からの大きなおみやげを携えて最後の方に搭乗した私は、手荷物を入れる場所探しにかなり苦戦した。ドバイなどでたくさんのおみやげを買って、大きめのキャリーケースやバッグに入れて機内に持ち込む人が多いのだろうか。
ドバイからチュニスは約6時間。着陸直前に見える砂漠と青い海のコントラストが美しかった。着陸した瞬間、なぜか皆が拍手をしていた。
チュニスの空港はかなりごちゃっとした印象で、対応もゆっくりだった。入国審査の待ち列はもちろん、預け荷物も待てど暮らせど出てこない。全ての手続きを終えて空港の外に出られたのは、到着から約2時間後だった。
同じく1日前乗りした同僚と合流し、チュニスのホテルに向かった。到着当日は8時間の時差に慣れるために身体を休め、翌日別の社員たちと合流するまでチュニス市内を観光した。
チュニスではタクシー配車アプリの「Bolt(ボルト)」が使えた。ただ、チュニジアの公用語はアラビア語とフランス語。アプリ上のナンバーは左から右だが、チュニジアの車のナンバープレートはアラビア語と同じで右から左に読みつつ数字だけは左から右に読むため、初めは呼んだタクシーが見つけられずに苦労した。
チュニスの旧市街であるメディナは規模も大きく見どころも豊富だが、観光地なだけあり客引きも多い。大きな市場は活気があり、見ているだけでも楽しかった。
チュニスで一番リラックスできて良かったのは、チュニジアンブルーと白がきれいな「シディ・ブ・サイド」だ。ギリシャの島々をほうふつとさせる美しい景色で、地中海を眺められるカフェや、アラビア文字がデザインされた食器が売られている店など、歩いているだけで楽しかった。そしてくつろぐ猫たちが何ともかわいらしかった。
チュニスでの観光を終え、1月7日午後にはほかのワーケーション参加者たちと合流した。2台のバンに分かれ、チュニスから車で3時間ほどの距離で、oViceのチュニジアオフィスがある、リゾート地として有名な北東部の都市モナスティールへ向かった。
1月8日は初めてoViceのチュニジアオフィスに出勤。ホテルからオフィスまでは徒歩で20分ほどの距離。通勤路とは思えない美しい景色にみんな大喜びで、写真を撮りながら向かった。
オフィスに着き、チュニジアの社員たちとリアルで初対面。子会社設立の前からoviceの開発に関わっているためovice上で話したことがある社員もいる。リアルで対面するのは初めてなのに、どこか初めてではない感覚が新鮮だった。
みんな少し緊張した様子だったが、アイスブレイクを挟んでかなり打ち解けることができた。
チュニジアでは、子会社である「oViceチュニジア」のオフィスのオープニングセレモニーの開催や、オフサイトミーティングを行った。
チュニジアのoVice社員のほとんどがエンジニアだ。チュニジアでエンジニアリングを勉強する場合、英語を含む複数言語の習得が必須であることに加え、かなり厳しい教育を受けるため、特にヨーロッパではチュニジアには優秀なエンジニアが多いことで知られている。
アラビア語に加えてフランス語や英語も堪能で、「oviceをどう変えて行くべきか」「oviceをどのように表現すると伝わるか」といった議論でも活発に意見している様子が印象的だった。
コミュニケーションは英語で行っていたが、よりきちんと理解したい場合などはoviceの翻訳機能を使い、リアルとオンラインを組み合わせながらコミュニケーションを取った。
日本とは8時間の時差があるため、基本的に日本との打ち合わせはチュニジアの朝8時頃(日本の16時頃)から行っていた。開所したばかりのオフィスだったためWi-Fiが思ったよりも弱く、途中で途切れてしまうなど対応に苦戦した。各自のeSIMは機能していたため、オフィスのWi-Fiが不調のときはテザリングで行っていた。
リモートワークだと簡単に済ませがちな昼食も、お昼はチュニジアの同僚たちと食事に行ったり散歩をしたりして、うまくリフレッシュの時間に充てることができた。せっかくの機会なので、チュニジア、韓国、日本の社員がそれぞれの国の料理を作って互いにふるまったりもした。
夜は仕事をできるだけ早めに終わらせ、皆で集まって食事に行った。
実はoViceが提供するバーチャルオフィスoviceは、CEOのジョンがチュニジアに出張中に新型コロナの急拡大の影響でロックダウンにあったことがきっかけで開発されたものだ。そのoviceのアイデアが生まれた「聖地」にも、今回行ってみることができた。
私自身これまでに50カ国以上を旅し、日本国内やアジアを中心に約10カ国でワーケーションをしたが、チュニジアのワーケーションは時差ボケに悩みながらも刺激が多くリフレッシュできたと感じている。文化も食べ物も習慣も全く違い、良くも悪くも日本を感じる時間が短かったことが理由かもしれない。また、会社のメンバーで参加しながらも、各自が休めるタイミングでしっかりと休み、プライベートな時間も楽しめたのも大きかったと感じている。
オフィスのネットワークは改善の余地があったものの、eSIMを使ってテザリングするなど、工夫をすれば特に問題なく仕事もでき、どこでもワーケーションができるという自信もついた。
チュニジアの物価は、体感的には日本の半分ほど。料理の量も多く、普通の料理を注文すると大量のパンがついてくることがほとんどだ。ストリートフードは3.5ディナール(約170円)でおなかいっぱい食べることができ、少し高級なしっかりしたレストランに入っても30ディナール(約1450円)もあれば十分で、色々楽しめたのもうれしかった。因みに料理は全般的に辛く、イスラム教の国のため基本的にお酒は飲まない。
チュニジア国内でも、各都市の印象は大分違った。各都市に旧市街と呼ばれるメディナがあるが、それぞれに個性があって飽きない。今回は時間の都合で行けなかったが、サハラ砂漠のツアーにも行けるそうだ。
アジア諸国に比べると航空券は高いが、かなり楽しめたので、次はチュニジアを含む北アフリカや中東諸国を周りながら数週間滞在してワーケーションしてみたい。
このワーケーションの直前に、令和6年能登半島地震が発生した。oViceは石川県七尾市に本社を置いており、多くの方々からご心配の言葉を頂いた。石川県内にいた社員は1名のみで、無事も確認できたため、サービスを継続することも、今回のチュニジア行きも予定通り実施することもできた。
社員が無事だったこと、社員が分散していることでサービスを止めることなく過ごせていることに感謝しつつ、たまにはこうした形でリアルでも会える機会も大事だと実感した。拠点があるチュニジアや韓国はもちろん、今後は色々な所に一緒に行き、互いの関係を深めるワーケーションも楽しんでみたい。
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