2007年に発表されて以来、「iPhone」はタッチスクリーンキーボードと必要最小限のハードウェアボタンが特徴となっているが、Clicks Technologyの新しいiPhone用ケース「Clicks Creator Keyboard」はそれを一変させようとしている。2人の人気YouTuberによって創設されたスタートアップである同社は、「iPhone 14 Pro」「iPhone 15 Pro」「iPhone 15 Pro Max」で本物のボタンが付いた物理キーボードが使えるiPhoneケースを「CES 2024」で披露した。
Clicksは、Z世代でブームになっているレトロな「アナログ」テクノロジーのたぐいのものだが、それよりも上の世代は、「BlackBerry」や「Palm Treo」など、初期のスマートフォンの時代を思い出して、懐かしさを感じるかもしれない。筆者は先日、Clicksのケースを実際に触って、使い勝手を確認する機会を得た。
iPhoneユーザーの筆者は時折、物理キーボードがあればいいのにと思う。運動をして汗をかいたり、水滴のついたアイスコーヒーのカップを持ったりして、指先が湿っているときはなおさらだ。ノートPCでの正確なタイピングや、物理的なキーボードを親指で入力するときの身体的な満足感が恋しくなることもある。
ただし、重要なことを忘れてはならない。iPhoneは単に物理キーボードを搭載しなかっただけではない。物理キーボードを搭載していないことが、iPhoneが革新的だった理由の1つでもある。ホームボタンとほかのいくつかの操作ボタンを除けば、iPhoneのキーボードは完全にバーチャルだ。
Clicksのケースは、iPhone 14 Pro用が米国時間2月1日に、その後iPhone 15 Proは3月中旬、iPhone 15 Pro Max用が初春にそれぞれ発売される予定だ。現在、予約受付中で、価格は139ドル~159ドル(約2万円~2万3000円)となっている。カラーバリエーションは、バナナイエローの「BumbleBee」と、落ち着いたグレーの「London Sky」が用意されている。
本記事では、筆者がiPhone 15 Proを物理キーボード搭載スマートフォンに変身させたときの感想をお伝えする。
最初に結論を述べてから、詳細の説明に移ろう。タイピング中に画面が狭くならないのは夢のようで、ケースは驚くほど軽く、キーボードのショートカットにもすぐ慣れた。
Clicksのケースで一番分かりやすいメリットは、タイピング時の画面サイズの変化だ。ケースにはすでにキーボードが搭載されているので、タイピング時にデジタルキーボードが画面に表示されることがなくなり、表示スペースがこれまでよりもはるかに広くなる。
それは良い意味で変な感じで、本当に驚いた瞬間だった。表示スペースを広げるためだけに購入してもいいかもしれない。筆者が見たデモでは、「Instagram」のストーリーズの下書きを入力している画面が表示されていたが、違いは劇的だった。画面を行ったり来たりしながら、下書きの投稿がどのように表示されるかを確認することにうんざりしているクリエイターにとっては間違いなく使いやすいはずだ。
一番良かったところは、「設定」アプリの中を探し回らなくてもキーボードの設定を変更できるところだ。変更は、iPhoneにケースを差し込むとすぐに有効になる。
キーボードを搭載できるほど大きなケースを装着すると、かなり重たくなるのではないかと考えていたが、Clicksのケースは思ったよりも軽かった。ケースを装着したiPhone 15 Proをジーンズの前ポケットや後ろポケットに入れることもできた。明らかにポケットからはみ出てはいたが。ケースを装着した状態で番号を入力するには、最初に「Shift」キーかナンバーロックコマンドを押す必要があるので、ポケットの中でキーボードのボタンが勝手に押されて、デバイスからロックアウトされてしまう心配はない。iPhoneにケースを装着すると縦長になるので、扱いにくいと感じて、日常的な用途(イヤホンなしで電話に出るなど)にはケースを取り外すことを選択する人もいるかもしれない。
ケースの底部にはUSB-Cポートが突き出ているが、本体の装着は驚くほど簡単だった。キーボードのキーと同様、ケースも少し伸縮性のあるゴムのような素材なので、iPhone 15 Proをポートに接続した後、ケースの縁を引っ張って、スマートフォン本体の上部にかぶせるのも簡単にできた。取り外すときは、背面を軽く押して、スマートフォンの上部を前方に押し出し、iPhoneをスライドして取り出すという流れだ。
ケースの底部には「MagSafe」パススルーポートがあるため、ケースを装着したまま、充電ケーブルやそのほかのアクセサリーを必要に応じて使用できる。
ケースには、事前にプログラムされたキーボードショートカットがいくつか搭載されており、ユーザーが自分でカスタマイズできるショートカットも含め、全部で36個まで利用できる。筆者は、ホーム画面に戻る「Command」+「H」というショートカットと、ブラウザーでウェブページを下にスクロールするときに使えるスペースキーのショートカットの2つを試してみた。プロダクトマーケティング担当シニアバイスプレジデントのJeff Gadway氏に、このショートカットはSNSのフィードでも使えるかを確認したところ、ハードウェアの設定ではなくアプリに依存する、という答えが返ってきた。
とはいえ、どちらのショートカットも本当に便利かつ慣れるのも簡単で、ほんの数回試しただけで完全に習得できた。「Kindle」などの電子書籍リーダーを使うときと同じように、親指を何度も動かすことなく、長文の記事やウェブサイトを閲覧している自分の姿が目に浮かんだ。
キーボードのキーは少しゴムのような感触があり、Appleの「Magic Keyboard」よりも「たまごっち」に近い。物理キーボードのレイアウトは、iPhoneのデジタルキーボードと異なる。最大の違いは、Clicksのキーボードは一番下の列が広くなっており、コマンドキーとタブキー、記号キーが追加されていることだ。
筆者がテストしたiPhone 15 Pro用のモデルでは、物理キーボードの方がスマートフォンのデジタルキーボードよりも小さかった。ボタンに慣れるのにどれくらい時間がかかるかは読めなかったが、最初はキーが少し密集しているように感じた。結局、指先を少し傾けて、爪でボタンを押すようにした。スマートフォンで記事を書きたくなるかどうかはこのケースを試す時間が20分間しかなかったので、現時点では何とも言えない(ちなみに本記事はCESの会場にてスマートフォンで執筆している)。なお、iPhone 15 Pro Max用のモデルには、もっと大きなキーボードが搭載されていた。
最も驚いたのは、キーボードインターフェースの変更が瞬時に反映されたことだ。ケースをiPhoneに挿し込んだ瞬間に有効になった。なぜほかの誰かがもっと早くこれを思いつかなかったのだろうと不思議に感じた。おそらく、これは2人の経験豊富な業界のプロフェッショナルが指揮を執っていることのメリットなのだろう。Michael Fisher氏とKevin Michaluk氏はYouTube上でそれぞれMrMobile(ミスターモバイル)、CrackBerry Kevin(クラックベリー・ケビン)として知られている。
ClicksのiPhoneケースは、2月から出荷が始まる。その頃には、より詳細なレビューをお届けできるだろう。少なくとも第一印象からすると、物理的なキーボードを使用したいと思っているiPhone Proユーザーにはぴったりの製品かもしれないと感じる。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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