アップル「Vision Pro」3度目の体験--iPhoneで撮影した空間ビデオで見る自分の日常

Scott Stein (CNET News) 翻訳校正: 編集部2023年12月27日 07時30分

 先日、Appleの最新ヘッドセット「Vision Pro」のデモに参加した。2023年に入って、これが3度目だ。今回は映画「アバター」の映像や、Appleが用意したサンプル写真やサンプル動画を見たわけではない。今回見たのは、感謝祭を祝う筆者の母親ときょうだい、甥っ子と一緒にギターやピアノを弾く筆者の子供たち、自然史博物館で息子を追いかけ、発光石の展示コーナーに駆け込む自分の姿だ。

さまざまな生物の写真
ニューヨークにあるお気に入りの博物館の展示。筆者がスマートフォンで撮影した3D映像だ
提供:Scott Stein/CNET

 Appleは12月中旬に「iOS 17.2」を公開し、「iPhone 15 Pro」で3Dの「空間ビデオ」を撮影できる機能を追加した。撮影した空間ビデオを3D映像として再生するためには、2024年に登場見込みのVision Proが必要だが、今回のデモでは一足先に試すことができたので、その様子をレポートしたい。

 数週間前のデモで、Appleが用意した空間ビデオのサンプル映像を見た時も、空間ビデオを撮影する機会があった。この時はiPhone 15 Proの撮影性能やVision Proのディスプレイに感心したが、今回のデモでは何とも言えない、不思議な感覚を覚えた。というのも、今回撮影したのは自分の普段の生活であり、Vision Proのディスプレイを通して見たのは記憶の中の自分、自分がすでに経験したことだったからだ。

 「空間」という言葉は付いているが、空間ビデオは立体的な3次元の映像であって、その中を自由に動き回ることはできない。記録した思い出に近づいたり、横から眺めたりすることも不可能だ。それでも映像は感動するほど美しく、逆に空間ビデオの撮影・再生の限界を感じる場面もあった。

自分の人生を見るという経験

公園のような場所で過ごす人々の写真
数十本の3D映像を撮影したが、再生する機会があったのはその一部だけだ
提供:Scott Stein/CNET

 筆者が撮影した写真や動画は、デモ用にVision Proと紐付けられたiPhoneに「AirDrop」で送られた。感心したのは、Vision Proが最初からiPhoneのフォトライブラリ(とAppleのエコシステム内のすべて)と同期されていたことだ。AirDropで送られたファイルをVision Proで受け取るために下を向いて画面をタップしていると、奇妙になじみのある感覚に包まれた。

 今回、Vision Proで見たのは、自分で撮影した何十本もの空間ビデオの中から選んだ10本と、ニューヨーク近郊のストーム・キング・アートセンターとイングランド南西部で撮影した数枚のパノラマ写真、それからニュージャージー州のデコルテパークで撮ったHDRの家族写真だ。どの写真も美しく、画質は「Mac」やテレビで見るのと同じか、それ以上だった。HDRはきわだって鮮明で、拡大するのも楽しかった。パノラマ写真はヘッドセットを通して見ると独特の没入感があり、ディスプレイの解像度のおかげもあって輝くような美しさだった。

 空間ビデオはフレーミングが特殊で、映像のサイズがディスプレイのサイズと合わないと、足りない部分を補うように外縁部がぼやけて表示される。この点は2回目のデモの時の方がはっきりと感じた。一般的なビデオはピンチやズームで拡大できるが、3Dの空間ビデオはできない。少しでもいいので、拡大できるようになってほしい。

 Appleは空間ビデオ撮影時の留意点として、あまり動かないこと、明るい場所で撮影することを推奨している。筆者はこうしたルールを破り、うろうろと移動したり、暗い場所で撮影したりした(例えば米CNETの同僚と薄暗いバーに行ったり、自然史博物館では暗闇で光るタイプの岩の展示コーナーに行ったりした)。それでもかなりいい映像が撮れたが、明るい場所の方がより立体的な映像を撮影できた。

 フレームレートは30fpsに制限されている。特に動きのある被写体を撮影した場合は目に見えてカクつくため、できれば60fps程度は欲しい。例えばセントラルパークの一角で、子供たちが池のほとりの岩を登ろうとしているのを見て猛ダッシュで追いかけた筆者のように、高速で移動している人を現在のフレームレートで撮影した場合、Vision Proのような高リフレッシュレートのヘッドセットで再生すると、個人的にはカクつきがかなり気になる。

おすすめは家族や親しい人との団らん写真

カメラに向かってほほ笑む筆者の母
筆者の母
提供:Scott Stein/CNET

 今回のデモで最も感動したのは、自分の目線の近くにiPhoneを置いて、家族との団らんを撮影した動画をVision Proで再生した時だ。例えばある動画には、感謝祭の日に筆者が母親のそばに座り、将来のプロジェクトに備えて3Dの動画を撮影しているのだと説明している様子が映っていた。少し眉を上げて私を見ている母の姿は、Vision Pro上ではほぼ等身大で表示されることも相まって、目が合いそうなほどリアルだ。実際に目の前にいるような気がする。もやもやに縁取られた画面を抜けて、向こう側にいる家族のもとに行きたいという気分になった。

 動きの少ない動画だったため、フレームレートの低さもそれほど気にならなかった。再生時のフレームサイズ等を考えると、空間ビデオを撮るなら、少人数でくついろいでいる時の写真が一番適しているかもしれない。

 自然史博物館のお気に入りの展示物を3Dで見るのも楽しい経験だった。博物館では海洋生物の展示エリアに行った。最上階の3つの小さな水槽に、先史時代の海の生物がジオラマ風に展示されている。子供の頃から大好きな場所だ。アンモナイトや三葉虫を撮影しながら展示ケースを移動していく。撮った空間ビデオをVision Proで3D再生すると、まるで家でジオラマを見ているようだった。小規模な没入型のインスタレーションや、簡単には行けない場所を撮影し、その映像を後から自分の眼前に展開できることの喜びを感じた。ぼんやりとした枠の中に小さなスケールで再現される巨大な被写体はなんとも愛らしかった。

Vision Pro
Vision Pro
提供:John Kim/CNET

高まる期待

 短くはあったが、これが筆者の経験した3度目のVision Proのデモだ。まるでVision Proを通じて、自分の生活を追体験したように感じた。今回の体験は、すでにAppleのエコシステムにどっぷり浸かっている人がVision Proを手にした時に、どのような体験ができるかを予期させるものだった。Appleユーザーなら、Vision Proを入手次第、それまでに撮りためた写真や動画をすぐに楽しめそうだ。

 Vision Proのディスプレイは今も美しいと感じるが、フィット感や使用感はMetaのヘッドセット「Quest」とかなり似ている。シンプルなインターフェイスもまだ新鮮さを失っていないが、Appleは今後、どうやって空間ビデオの撮影・再生を改善し、操作感、解像度、フレームレートを改善していくのだろうか。少なくとも再生時の操作については、もっと選択肢が増えることを期待したい。

 Vision Proは2024年初頭に登場するとみられているため、年明けには新しい情報が出てくるだろう。この記事が、iPhone 15 Proで撮影した空間ビデオがVision Proでどのように見えるのかをイメージするヒントになれば幸いだ。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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