ダイハツ工業(ダイハツ)は12月20日、4月のドアトリム不正を発端とする一連の調査報告書を受領し、今後の対応と併せて国土交通省や経済産業省へ報告したと発表した。
調査の結果、4月のドアトリム不正、5月のポール側面衝突試験不正に加えて、新たに25の試験項目で174個の不正行為を確認。認証試験に合格するための意図的な不正に加え、合格を見込むものの確実にするための不正も含むという。
不正行為が確認された車種は、すでに生産を終了したものも含め、64車種・3エンジン(生産・開発中および生産終了車種の合計)。この中には、「ダイハツ」ブランドの車種に加え、トヨタ自動車(トヨタ)、マツダ、SUBARUへOEM供給をしている車種も含む。
あわせて、国内外で生産中の全てのダイハツ開発車種の出荷を一旦停止することも発表した。
4月28日に対外的に実施した“第1次公表”となるドアトリム不正は、ダイハツが開発した海外市場向け車両4車種における、側面衝突試験の認証申請での不正行為となっている。
試験実施担当者は、仮に認証試験に不合格となった場合には開発、販売の日程を守れず大変なことになると考え、認証試験に確実に合格すべく、認証試作車の衝突時にシャープエッジが生じないような割れ方をするように加工。樹脂製のフロントドアトリム裏面に切込みを入れるなど、量産車とは異なる手加工を実施したという。
5月19日の“第2次公表”となるポール側面衝突試験不正は、ダイハツ「ロッキーHEV」トヨタ「ライズ HEV」のポール側面衝突試験の認証手続での不正行為となっている。
左右の試験を実施、その試験データを提出する必要があるなか、2021年7月に助手席側(左)の立会試験を実施。しかし、運転者席側(右)での届出試験は実施せず、改めて試験を実施する時間も車両もなかったという。
試験成績書作成者は、安全性には問題ないと考え、認証試験に合格するため、社内試験として実施した助手席側(左)の試験結果を運転者席側(右)の試験結果として提出したという。
また、ダイハツは5月15日、第1次公表時に判明した不正行為の重要性から、事案の全容解明、真因分析及び再発防止策の実施に向け、ダイハツと利害関係のない外部の法律面及び技術面の専門家から構成される第三者委員会を設置。
認証試験に合格するため意図的に行われた類型の不正行為を「類似案件」として調査したところ、合計174個(不正加工・調整類型:28個、虚偽記載類型 :143個、元データ不正操作類型:3個)を確認。一番古いもので1989年、全体では、2014年以降の期間で不正行為件数が増加する傾向があるとしている。
なお、類似案件の一例として、衝突時の衝撃を検知して動作する「エアバックECU(Electronic Control Unit)」による「自力着火」が必要なところ、タイマーで動作する「タイマー着火」で試験を実施した不正などを挙げている。
第三者委員会は、不正行為が発生した直接的な原因及びその背景として、担当者はやむにやまれぬ状況に追い込まれて不正行為に及んだ、ごく普通の従業員であると結論づけている。
原因としては、(1)過度にタイトで硬直的な開発スケジュールによる極度のプレッシャー、(2)現場任せで管理職が関与しない態勢、(3)ブラックボックス化した職場環境(チェック体制の不備等)、(4)法規の不十分な理解、(5)現場の担当者のコンプライアンス意識の希薄化、認証試験の軽視――という5点を挙げている。
加えて、現場の実情を管理職や経営幹部が把握できなかった原因として、(1)現場と管理職の断絶による通常のレポーティングラインの機能不全、(2)補完的なレポーティングラインである内部通報制度の運用の問題、(3)開発・認証プロセスに対するモニタリングの問題――の3点があるという。
合わせて、問題の真因として(1)不正対応の措置を講ずることなく短期開発を推進した経営、(2)ダイハツの開発部門の組織風土――という2点を挙げている。
第三者委員会の委員長を務めた、大手町法律事務所所属(元東京地方裁判所所長・東京高等裁判所部総括判事)で弁護士の貝阿彌誠氏は、1番の原因として、「短縮開発を推進しつつも、問題や課題を早期に発見、措置を図ることができなかった」と、経営陣や上司に問題があったと指摘。
そのほか、委員会メンバーからは、現地に赴く「現地現物」が少なかった、多忙などから上司が現場を把握できず、部下からの相談があってもその内容の正しい把握、解決策の指示ができないという傾向があるなどの指摘もあった。
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