大阪の梅田から難波を北から南に走る御堂筋は、先日開催された阪神&オリックスのダブルパレードのコースにもなった主要道路で、側道を含めて6車線(一部8車線)の国内最大級の一方通行路である。大阪市では2019年に策定した「御堂筋将来ビジョン」に基づき、車中心から人中心のストリートへと御堂筋を再編するため歩道の拡幅工事などを行っている。
また、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)にあわせてスマートな御堂筋をつくる社会実験「御堂筋チャレンジ」を2020年にから実施。整備により広がった長堀通からなんば駅前までの区間で最先端技術を活用した空間の利活用を行い、滞在や回遊状況にどのような影響をもたらしているかを周辺エリアも含めて検証している。
11月4~30日にかけて実施された「御堂筋チャレンジ2023」は、大阪市が指定する道路協力団体や国土交通省近畿地方整備局、大阪市建設局を主体に、複数の団体が協力し、最先端技術を使った実証実験としては、足で踏むと電力が発生する床発電や路面太陽光パネルの設置、その電力を使用した夜間のプロジェクションマッピングなど行われた。
中でも注目を集めていたのが、ゲキダンイイノが開発する自動運転スローモビリティの実証実験だ。御堂筋の側道(公道)を走行する2タイプのモビリティを乗車体験できるというもの。8人乗りタイプは初めての公道走行とのことで、安全性とストリートの共存性をメインに検証が行われた。
予約なしで誰でも気軽に乗れることから地域で働く人たちや観光客の注目を集め、11月24~26日と11月30日と限定的な実施だったが、のべ1000人が体験を楽しんだ。
今回の実験は8人乗りタイプは歩く速度でドライバーは乗車せず、人が横に付き添う形で走行する。著者も乗車してみたが適度なスピード感があり、それでいて御堂筋の銀杏並木をゆったりながめたり、周囲にあるショップをチェックしたりできた。
3人乗りの「iino type-S712」は一見すると乗り降りが不安定に見えるが、ステップの幅は十分にあり、中央部の上はしっかりグリップできるようデザインされている。これまでにもいろいろな場所で実証実験が行われているが、自動車用に整備されたアスファルトでも安全に走れることがわかった。
スローモビリティの実証実験は以前にも何度か取材したことがあるが、今回についてもいろいろ思うところがあった。例えば8人乗りタイプだが、閉鎖されているとはいえ公道を走行するため、軽自動車としてナンバープレートを付け、さらに実証実験であることを表示する必要があった。また、乗車の受付場所が2カ所だったというのもあって、その2地点を移動する乗り物と思われていたような節がある。
ゲキダンイイノの車両は乗車ステップの端を踏むと速度が落ちて、乗り降りがしやすくなる機能があり、車道に動く歩道を設置するようなことができる。つまり乗り物というより道路などに自在に設置できる動く歩道というようなサービスが提供できるはずなのだが、単にゆっくり走るオープンカーと思われているかもしれないとしたらちょっと残念だ。
実際に3人乗りタイプは、見た目からして今までとは違うモビリティだとわかるというのもあり、走り出した車両と並走して乗り込んだり降りたりしている人たちもいた。本体はスピーカーで音楽を流したり、ライトを点滅させたりもできるので、そうした機能もうまく使ってエンターテインメント性を打ち出す実験ができれば、もっと御堂筋ならではの魅力としてアピールできるのではないかと感じた。
スローモビリティを取り巻く規制や課題がまだまだある中で、それを超えるアイデアを実現しようという動きが始まっている。座長の嶋田悠介氏も「今後もゲキダンイイノらしく、大阪のまちを引き立てられるような移動体験の提供にチャレンジしていきたい」とコメントしており、2025年の万博までにどのようなトライをしてくれるのか注目したい。
御堂筋チャレンジ2023CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス