「Apple Watch Series 9」は、前世代の「Apple Watch Series 8」から劇的に変わったわけではない。それでもAppleのスマートウォッチは、2023年も大きく進化した。例えば、「watchOS 10」から新たに導入されたウィジェット中心のインターフェースは情報の一覧性を高めた。Apple Watch Series 9から登場したダブルタップのジェスチャーは、Apple Watchに新たな操作方法を数年ぶりにもたらした。
しかし、Bloombergの記事が正しいなら、2024年はApple Watchにとって、さらなる飛躍の年となるかもしれない。iPhone10周年を記念して「iPhone X」が登場したように、Apple Watch発売10周年を記念して、Appleは次のスマートウォッチを「Apple Watch X」(アップルウォッチ テン)と名付ける可能性がある。Bloombergによると、Apple Watch Xは2024年か2025年に登場予定で、これまでよりもさらに薄いデザインとなるほか、リストバンドの取り付け方法が一新され、microLEDディスプレイ、血圧モニターなどが搭載されるという。
しかし、Appleは他にもさまざまな方法でApple Watchを進化させることができる。例えば、人工知能(AI)の統合をさらに進めれば、Apple Watchはさらに優秀で便利な健康アシスタントになるだろう。ダブルタップのジェスチャーはまだ比較的新しい機能なので、アップデートや最適化の余地が大きい。今後の進化によっては、実際に画面をタップするよりも便利な機能となる可能性を秘めている。
他にもバッテリー駆動時間の延長、ワークアウト後の回復に関する指標の充実、アクティビティー目標のカスタマイズ性の向上、睡眠関連の分析の強化などは、筆者が長年望んできたアップグレードだ。こうした改良が新モデルか、ソフトウェアアップデートによって実現することを筆者は今も期待している。この記事では、2024年にApple Watchがさらなる進化を遂げるための方法として、考えられるものを紹介していく。
Apple Watch Series 9ではAIが強化され、「Siri」への一部のリクエストがオンデバイスで処理されるようになった。インターネットからの回答を必要としない指示、例えばアラームやタイマーの設定などは、クラウドに接続することなくデバイス上で実行できるため、プロセス全体が高速化された。将来のソフトウェアアップデートにより、Siriが健康関連の質問にローカルで回答できるようになれば、前の晩の睡眠やアクティビティリングの進捗状況に関するリクエストも、オンデバイスで処理できるようになるだろう。
しかし、AppleはApple Watchをさらに直感的な健康エージェントに変えることも可能だ。Siriまわりの進化は、この方向への一歩のように感じられる。生成AIの台頭は、ユーザーの質問に会話に近い形で答えることで、データの意味をユーザーに分かりやすく伝える方法を切り開いた。健康データのトラッキングの分野でAppleと競合するGoogle傘下のFitbitは、すでに先駆的な試みを始めている。Fitbitは10月、2024年に開始予定の新プログラム「Fitbit Labs」を予告した。Fitbit Labsは、まずは特定のデータポイント間をつなげ、生成AIを活用することで、「朝のランニングの後、なぜいつもより疲れていたのか」といった質問に回答できるようになるという。
この種の分析情報があれば、単にデータを記録し、それをもとにグラフやチャートを生成するだけでなく、スマートウォッチから送られてくる情報を使って、習慣を実際に変えやすくなる。Apple Watchのアクティビティリングは、今でも起床や運動、あと少しのウォーキングを促してくれるが、こうした所見も伝えてくれるようになれば、運動のモチベーションはさらに上がるはずだ。
実際、将来のApple WatchにはAIを活用した健康ツールが新たに追加される可能性がある。Bloombergの記事によると、AppleはAIを活用したコーチングプログラムの開発を進めており、Apple Watchのユーザーに個々人に合わせた提案やアドバイスを提供できるようになるという。
ダブルタップ機能については、カスタマイズ性の向上を期待したい。現在は、親指と人差し指を2回タップすることで、ウィジェットのスクロール、電話への応答、アラームのスヌーズ設定、タイマーの一時停止などができる。
今後は、ダブルタップをもっとパーソナライズできるようにしてほしい。現在はダブルタップの動作で、スタックのウィジェットをスクロールするか、特定のウィジェットを選択するか、または音楽を一時停止するか、次の曲に飛ぶかを決定できる。これも便利ではあるが、もっと選択肢があってもいい。例えば、タイマーを止めるか繰り返すか、アラームを解除するかスヌーズにするかを選択できるようにしてはどうだろう。現在のダブルタップでは、タイマーの解除やスヌーズの設定しかできず、他のアクションを実行させるという選択肢はないが、例えばトリプルタップ等で別のアクションも選択できるようにしてほしい。
ダブルタップはApple Watchの画面に直接触れるわけではないため、タップやスワイプといったジェスチャーよりも機能が限定されるのはやむをえない。もしAppleがダブルタップ機能のアップデートを計画しているなら、Apple Watchの新モデルが登場するのを待たずとも、次のソフトウェアアップデートでダブルタップの強化が実現する可能性も(理論上は)ある。
Appleは、Apple Watchのデザインを何年もかけて改良してきた。しかしディスプレイの大型化、耐久性の向上など、物理面での変化が際だって大きかったのはハイエンドモデルの「Apple Watch Ultra」だ。現行モデルの外観を大きく変える必要はないが、ちょっとした変更は見てみたい。iPhone10周年を機にiPhoneのデザインが刷新されたように、Apple Watchも10周年を機に特別な変更が加えられるかもしれない。新しい仕上げや色の追加は、その一例だ。
Bloombergの記事によると、うわさされているApple Watch Xではデザイン面でいくつかの変更が行われる可能性があるという。記事ではケースのスリム化やmicroLEDディスプレイの搭載による鮮明度の向上などが挙げられている。
Bloombergによると、Apple Watch Xに搭載されるかどうかは不明だが、将来のモデルではリストバンドを磁石で装着できるようになる可能性があるという。こうした変更はユーザーにとってメリットもあるが、デメリットを伴う可能性も高い。Bloombergの記事によれば、現在のリストバンドの装着方法は場所を取るが、新しい方法なら時計のケースをスリム化しやすくなる。しかしそうなると、この10年間に登場した既存のリストバンドとの互換性が失われる恐れがある。
ITガジェットの場合、デザインは必ずしも最重要事項ではない。しかし、スマートウォッチは例外だ。一日中、視界に入るスマートウォッチは、見た目が新しくなっただけで新機種に乗り換えたいと感じさせる、数少ないガジェットのひとつだ。
2022年にApple Watch Ultraがデビューして以来、筆者はApple Watchの下位モデルにもアクションボタンが搭載される日を待ち望んできた。アクションボタンがあれば、ワークアウトを素早く開始し、アプリを瞬時に切り替えられることに気付いて以来、この機能はすべてのApple Watchに標準装備すべきだと訴えてきた。2022年にApple Watch Ultraを始めて試した時は、2回指をタップするだけで屋外ウォーキングを開始できる便利さに感動した。
Appleは「iPhone 15 Pro」にもアクションボタンを搭載した。この機能が他のデバイス、例えば今後登場するApple Watch Xにも搭載されることを筆者は期待している。アクションボタンが、まずはApple Watch UltraやiPhone 15 Proといった上位モデルに搭載されたことは、出発点としてはいい。今はApple Watchを操作する方法として、ウィジェットの役割が大きくなっているが、特定の状況、例えばショートカットの実行などは物理的なボタンを使った方がはるかに便利に感じられる。Apple Watchのようなディスプレイが小さいデバイスの場合は特にそうだ。
Apple Watchの登場からすでに10年近くがたった。健康分野のトラッキングを強化し、他のApple製品に搭載されているアクションボタンなどの便利機能を取り入れ、ファッションアクセサリーとしての出発点を大切にし、デザインを刷新することで、Apple Watchがさらなるレベルアップを達成することを期待したい。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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