Appleが2023年に入って「Vision Pro」を発表したとき、仮想現実(VR)ヘッドセット市場には既にMeta、ソニー、HTCなどが参入し、競合ひしめく状態にあった。
フィンランド企業のVarjoが現地時間11月27日、同社の次世代ヘッドセット「XR-4」シリーズを発表したことで、この市場の競争は激しさを増した。この製品は、市場に存在する他のヘッドセットと似ているかもしれないが、1つ大きな違いがある。
3990ドル(約58万8000円)という価格が付けられたXR-4は、AppleやMetaのモデルとほぼ同じように機能する。120度の視野、2000万画素のデュアルカメラ、4K×4Kのデュアルディスプレイ、視線誘導型オートフォーカスシステムを搭載し、そのすべての仕様がVision Proに匹敵する。
しかし、Varjoの製品は、一般消費者ではなく企業をターゲットとしている。Fortune 100に名を連ねる企業の25%以上が、宇宙飛行士やパイロットのトレーニング、生産工程の再構築から先進的な医療研究にいたるまでのさまざまな形でVRを利用していることから、数多くの応用分野が見つかるはずだ。
多くのVRヘッドセットが、2次元の用途に複合現実(MR)を加えているのに対し、XR-4はMRに照準を合わせている。
基本バージョンに加えて、大幅に強化されたパススルー機能(と9990ドル[約147万円]という大幅に高い価格)を備える「Focal Edition」と、Varjoいわく「政府グレードのコンプライアンス」と「パイロットグレードの視覚的忠実度」を備える「Secure Edition」が存在する(Secure Editionの価格は公開されておらず、要問い合わせとなっている)。
Secure Editionは、おそらく最も興味深い。「Unity」「Unreal Engine」「OpenXR 1.0」や、Bohemia Interactive Simulationsの「VBS Blue IG」、Lockheed Martinの「Prepar3D」、 FlightSafety Internationalの「Vital」といったハイエンドのトレーニングソフトウェアに対応するよう設計されているためだ。
同社は8月、米軍のポータブル訓練プログラム「Reconfigurable Virtual Collective Trainer Air Program」用のヘッドマウントディスプレイの供給元として選定された。同プログラムは、さまざまなヘリコプターのパイロット訓練に使用される。Varjoは応用分野の一部として、軍のパイロットを対象とした飛行訓練を想定しているようだ(同社は同ヘッドセットについて、「非常に効果的でコスト効率の高い訓練シナリオ」を実現すると説明している)。
また、他のヘッドセットとの最大の違いは、XR-4のSecure Editionは、オンライン接続を必要としない点である。
XR-4は企業向けな上、上位モデルのSecure Editionは政府向けなので、消費者が手にする可能性はかなり低い。しかし、このようなヘッドセットが市場に出回るという事実は、一般消費者向けのVRが最終的にどこに向かう可能性があるかを示し、エンターテインメントをはるかに超えたVRの能力を示しているという点で重要な意味を持つ。
Varjoのプレスリリースこの記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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