前の週末に大手家電量販店のBest Buyに行ったところ、これまで見たことのない光景を目にした。仮想現実(VR)ヘッドセットの「Meta Quest 3」を試すために家族連れが列を作っていたのだ。「Meta Quest」の売り場にはBest Buyの店員2人が常駐し、それぞれがデモの合間にヘッドセットを拭いたり、列に並ぶ家族連れを誘導したりしていた。その間、店員は保護者らに10〜15歳の子がVRでどんなことを体験できるかを説明し、その傍らでは子どもたちが熱心にヘッドセットを試していた。
行列していた家族連れは、Quest 3を試してみて、今年のホリデーシーズンの買い物リストに入れるかどうかを検討していた可能性が高い。そしてそこでは、Quest 3がほぼゲーム機とみなされているように見えた。しかし、Questには大人にとってもキラーアプリがあることに、本人たちが気付いているかどうかは分からない。
それは「Supernatural」というフィットネスアプリだ。VRの特に優れたいくつかの機能とQuest固有の強みを活かして、ルームランナーやエアロバイク、ローイング(ボート漕ぎ)マシンなど、高価な運動器具を使うよりもはるかに楽しくワークアウトができる。場所も取らず、費用の節約にもなるだろう。
Best Buyの例で言えば、親たちはQuestを購入して、日中は子どもたちがゲームに使い、早朝や深夜には自分たちがSupernaturalでワークアウトするために使えると気付くかもしれない。
10月に発売されたQuest 3のテストの一環として、ここ2週間ほどSupernaturalを使ってみたが、あっという間に夢中になってしまったことにわれながら驚いている。既存のもので例えるなら、人気のVRゲーム「Beat Saber」とAppleのフィットネスサービス「Fitness+」を組み合わせた感じだろうか。念のため記しておくと、Supernaturalは「Quest 2」でも同じように使える。
Supernaturalで選択できるワークアウトは、ボクシングとフローの2種類だ。フローでは、仮想空間の中で両手にそれぞれライトセーバーのようなバトンを持って振る。世界中の美しい山々やビーチなど息をのむようなロケーションに移動し、コーチがワークアウトを指導してくれる。ヒット曲のビートに合わせて、ボクシンググローブやバトンを使い、ランダムに飛んでくるターゲットを打つ(筆者は特にImagine Dragonsのミックスが気に入った)。
Supernaturalは驚くほど病みつきになると感じた。「Apple Watch」とペアリングして心拍数のデータを取り込み、ワークアウトでどれほど運動できたか表示されるようにしたところ、Supernaturalで20〜30分運動するだけで、朝のエアロバイク、ルームランナー、クロストレーナーのワークアウトでこなしていた有酸素運動量に達し、心拍数は1分あたり140〜150を超えるまで上がった。いつものワークアウトに代えてSupernaturalのアクティビティーを2週間やってみたのだが、最大の驚きは、バイクやルームランナーに乗る前に自分を奮い立たせる必要もなく、朝のワークアウトを始めるのが待ち切れなくなったことだ。なお、Supernaturalのアプリには瞑想とストレッチも含まれている。
Supernaturalは、Quest 3の軽さ(515g)、ワイヤレス、使いやすさ、快適さといった特長の恩恵を受けている。また、グラフィックスの改善により、Supernaturalで世界中の美しいロケーションを一層楽しめるようになった。繰り返すが、これらのメリットの大部分はQuest 2でも享受できる(Quest 3の最大の違いは、グラフィックスと解像度がアップグレードされたことだ)。
また、Appleの「Vision Pro」は2024年初頭に米国で発売予定で、VR、拡張現実(AR)、複合現実(MR)に多くの注目と関心を集めると予想されているが、リリース時点でフィットネスに焦点を当てることはないだろう。それはおそらく、Vision Proの第1世代が本体だけでも453gほどあり、外付けのバッテリーパックもワークアウトでは不便だからだ。価格も、499ドル(日本では7万4800円)のQuest 3に対し、Vision Proは3499ドル(約52万円)と桁違いに高い。従って、VRフィットネスに興味を持つ人にとって、Quest 3のSupernaturalは現時点で他にはない革新的な選択肢だと言える。
Supernaturalで有酸素運動を行うことの欠点といえば、スクリーンの前で多くの時間を過ごすことになるという点だ。一方で、通常のワークアウトの最中は往々にして、明るい画面を見つめていない貴重な時間になる。SupernaturalとQuestを有酸素運動に使う場合は、散歩やハイキングなど、画面を見ない他のワークアウトを行う時間ともバランスを取る必要があるだろう。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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