テクノロジーを活用して、ビジネスを加速させているプロジェクトや企業の新規事業にフォーカスを当て、ビジネスに役立つ情報をお届けする音声情報番組「BTW(Business Transformation Wave)RADIO」。スペックホルダー 代表取締役社長である大野泰敬氏をパーソナリティに迎え、CNET Japan編集部の加納恵とともに、最新ビジネステクノロジーで課題解決に取り組む企業、人、サービスを紹介する。
ここでは、音声番組でお話いただいた一部を記事としてお届けする。今回ゲストとして登場いただいたのは、伊藤忠商事 情報・金融カンパニー情報産業ビジネス部ITビジネス第三課の増田昂也氏。味覚データと消費者の行動、購買データなどを集約し、ワンストップ で分析業務が完結できるSaaS型サービス「FOODATA」(フーデータ)について聞いた。
加納::伊藤忠商事は今どんな事業を展開していますか。
増田氏:総合商社の1つで、創業は1858年になります。祖業は繊維の行商で、現在では、機械や金属、エネルギー、化学品、食料とさまざまな事業分野を手掛けています。非資源分野に強く、加えて、取引先の方が本当に欲しいものは何かを考えて商売をする、いわゆるマーケットイン型の発想を大事にしてきました。
大野氏:今回ご紹介いただくFOODATAは、複数の部門が集まってできたサービスと聞いていますが。
増田氏:私が所属している情報・金融カンパニーと食関連のビジネスを手掛ける食料カンパニーの2つで実施している共同プロジェクトになります。情報・金融カンパニーでは、FOODATAの戦略パートナーである、味香り戦略研究所という味覚分析を手掛ける会社とデータベースの活用について検討を進めていました。一方、食料カンパニーでも同様に、食品のDXについて新規事業を模索していて、そこに携わっていたスタッフがジョインしてFOODATAの事業が大きく前進しました。
大野氏:部署を横断したプロジェクトは、御社のような大企業では珍しいように思います。
増田氏:昨今、各業界でDXの流れが盛んですから、カンパニー間の協業は今後さらに活発になってくると思います。
大野氏:FOODATAのサービス内容について教えてください。
増田氏:食品の企画開発プロセスのデータ分析とその解析サービスになります。さまざまなデータを収集、分析して、ダッシュボードで可視化できるソリューションを提供しています。味覚、栄養、原材料といったデータとID-POSデータに消費者の意識調査や口コミをかけあわせて分析できます。
食品の企画、開発現場では、膨大かつ多様なデータを収集、分析する必要があり、そこに相当な手間と時間がかかっていました。また味覚や食感は定量化しづらいという課題がずっとありましたが、FOODATAを活用すると、この感覚も可視化できるようになります。これにより、現場の担当者が、商品の魅力を上層部の方などに伝えやすくなるのではないかと考えています。
大野氏:なるほど。今までは人の感覚というか属人的、主観的な部分で商品開発していたものが科学的な分析メソッドを融合できる。その分析業務の部分を担っているというイメージなんですね。
加納::食感や味を見える化するとどんな部分に役立つのですか。
増田氏:食感や味を自分以外の相手に伝えるのは大変難しいですよね。食品の新商品開発は、企画と開発など、異なる部署同士が関わることが多いのですが、人によって異なる味覚を他者に正しく伝えるのは非常に難しい。これを味覚データとIDPOSデータが共通言語となって、企画者と開発者をつなぎます。
大野氏:商品開発に役立つデータとなると、エンジンそのものの開発も大変かと思いますが、データ量はどのくらい収集されたのですか。
増田氏:味覚データについては、味香り戦略研究所が集めていまして、社内には、人間の舌の機能を模した味覚センサーもあります。これを使って、酸味や苦味、旨味など13種類の味覚を数値化できます。さらに12万点ほどの食品をデータベース化し、この一部をFOODATAに格納しています。
購買データについては、全国のスーパーマーケット、コンビニエンスストアなどの約800万人分のデータを格納しております。そのほか、ウェブサイト上でのアンケート調査、SNSの分析などもFOODATAには格納しています。
大野氏:購買データだけではなく、SNSなどのデータも収集しながら、消費者の考え方や指向性を捉え、さらに味覚センサーから得たデータを入れながら、ワンストップで分析業務ができるんですね。
増田氏:ここまでワンストップでできるのはFOODATAのみと自負しています。味覚データだけでもかなりユニークだと思いますが、そこに消費者の関連データなどをかけあわせて、1つのプラットフォーム上で使えるのは、世界的にみてもかなり独自性の高いサービスではないでしょうか。
加納::数多くのデータをどのように分析しているのですか。
増田氏:導入いただいた企業によってさまざまですが、飲料メーカーの伊藤園様では抹茶ラテの開発に使用していただきました。市場に数多く登場している抹茶ラテですが、分析してみると甘みが強調されている反面、渋み、旨味の値が低いことがわかりました。
伊藤園様は、栽培農家と契約を結ぶなど、良質なお茶の調達にも強い。抹茶本来の味を引き出すことで、差別化を図るという仮説を立てました。そこから購買データを分析したところ、実は20代の若年層よりも50~60代の購入者が多いことがわかりました。つまり、抹茶の渋み、旨味を求めているのだと。この結果を踏まえ、茶葉を選定し、店頭では色がきれいに見えるよう加工プロセスなども見直してできたのが「タリーズコーヒー 抹茶がおいしい 抹茶ラテ」です。こちらは市場に受け入れられ、かなりヒットしました。
下記の内容を中心に、音声情報番組「BTW(Business Transformation Wave)RADIO」で、以下のお話の続きを配信しています。ぜひ音声にてお聞きください。
【音声配信で聴ける内容】
大野泰敬氏
スペックホルダー 代表取締役社長
朝日インタラクティブ 戦略アドバイザー
事業家兼投資家。ソフトバンクで新規事業などを担当した後、CCCで新規事業に従事。2008年にソフトバンクに復帰し、当時日本初上陸のiPhoneのマーケティングを担当。独立後は、企業の事業戦略、戦術策定、M&A、資金調達などを手がけ、大手企業14社をサポート。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会ITアドバイザー、農林水産省農林水産研究所客員研究員のほか、省庁、自治体などの外部コンサルタントとしても活躍する。著書は「ひとり会社で6億稼ぐ仕事術」「予算獲得率100%の企画のプロが教える必ず通る資料作成」など。
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