Appleの「iPhone 15 Pro」やサムスンの「Galaxy S23 Ultra」など、最近のスマートフォンの上位モデルは、はっとするくらい美しい写真が撮れる驚異的なカメラを備えている。普通ならプロ仕様のデジタル一眼レフが必要だろうと思えるほどのレベルだ。世代が少し古いか、やや価格が抑えられたモデル、例えば2021年の「iPhone 13 Pro」や、先頃発売された「Google Pixel 8」でさえ、プリントアウトして壁に貼っておきたいくらい美しい写真を残すことができる。
本記事では、田園地帯や山の奥深くなどの風景写真をスマホで撮影するときのコツを紹介する。複数のレンズを備えた最近のモデルに固有のヒントもあるが、多くは3カ月前あるいは3年前のモデルでも、またApple製デバイスと「Android」搭載デバイスのどちらでも通用するはずだ。
皆さんが今お使いのスマホは、デフォルトのオート設定でも見事な風景写真を撮れると思うが、少しだけレベルアップしてみよう。
設定を手動で調整できる「プロ」モードがあるなら、そのモードに切り替える。そうしたモードがない場合は、「Pro Camera by Moment」「Lightroom」「MuseCam」などのアプリを使えば、ISO感度やシャッタースピード、ホワイトバランスなどの設定を操作できるようになる。
特に重要なのは、このようなアプリを使うとRAWフォーマットで撮影できることだ。RAW画像の場合、JPEG画像に通常適用される、ホワイトバランスやシャープネスといったオート設定の多くの情報が保存されない。そのため、RAW画像では後からホワイトバランスや色調を変えたり、ハイライトや影のディテールを補正したりするのが、単純なJPEG画像のときよりずっと簡単で、しかも画像の劣化が少ない。この話は、編集に関する部分でまた詳しく説明することにしよう。
Appleの「iPhone」のうち「Pro」モデルでは、何世代か前から同社固有の「ProRAW」というフォーマットを採用している。これはHDRブレンディングなどのコンピュテーショナルフォトグラフィー技術を用いつつも、編集の容易なDNGファイルを生成するフォーマットだ。カメラのスクリーンにある「RAW」ボタンをタップすると、RAW撮影が有効になる。Googleの「Pixel」シリーズも同じようにRAWフォーマットに対応している。
風景を撮影する場合は、ホワイトバランスの調整が特に重要になることが多い。オートホワイトバランスだと、暖色が多めの風景(木々の紅葉など)を捉えた場合、調整のために寒色系のホワイトバランスを使おうとするのだが、そうすると今度は、自然な温かみが失われてしまう。明るい空のハイライトの一部をトーンダウンしたり、前景の影を強調したりできる機能が重要になってくるし、撮影後にホワイトバランスを変えられる方が、撮影時に画像のカラーを固定するより、編集の自由度がはるかに高くなる。
RAWフォーマットでの撮影には難点もある。写真を共有する前に、Lightroomや「Snapseed」といった編集アプリである程度の編集が必要になるということだ。風景写真の撮影は、時間も手間もかかるプロセスであることが多く、美しい画像を残そうとすれば、編集にかなりの時間を費やすことになる。
風景写真では、1日のうちの時間帯が決定的な要因になる。太陽の動きに伴って、光の状態が全く違ってくるからだ。ドラマチックな光を捉えるのにベストな時間帯は、やはり日の出か日没の頃だろう。どちらの時間帯でも太陽の位置が低くなるので、光の方向が明確になり、風景全体に影が長く伸びる。
一般的に、正午をはさんだ時間帯は、撮影に最も適さないとされている。太陽が頭上にあって影のディテールがはっきり出ないため、写りがフラットになり、精彩さを欠くからだ。
想定している撮影場所が決まっているなら、目覚まし時計をセットして早朝に出かけていき、日の出の時間にどんな写真が撮れるか確かめてみるといいだろう。時間が許すなら、別の時間帯に同じ場所に戻り、どの時間がベストか調べてみよう。
天候は、どんな屋外撮影でも重要な役割を果たすが、風景写真となると、その影響は限りなく大きい。天候状況によって風景の様子は一変し、雰囲気も光も色もまるで変わってくる。といっても、悪天候だから写真が悪くなるとは限らない。
個人的には、暗い雨雲が頭上に広がった、不吉なくらいに陰鬱な景色も嫌いではない。荒天の後で差し込んでくる光は、特にドラマチックに見えることが多い。したがって、どしゃ降りの中を撮影地まで歩いていくのは気が重いかもしれないが、最後には素晴らしい写真が撮れることを期待して頑張ろう。
風景の撮影に最も好ましくないのは、平坦な曇り空の日だ。雲を彩る陰影もなければ、地上に当たる光の変化も乏しく、目の前の風景にコントラストもない。
いつも使っている天気予報アプリに注意しておき、予報をもとに予定を立てよう。服装の準備さえ万全なら、最悪の天気でも立ち向かうことはできる。それ以上に荒れるようなら、「Googleマップ」を見て最寄りのパブに避難し、飲み物を片手に待てばいいだろう。
使っている機種に広角モードがあるなら、それを試してみるいい機会だ。広角モードがない場合には、レンズを追加して同じ効果を得ることもできる。
風景写真で超広角を使うと、1枚の画像に多くの情景を取り込めるので、とりわけ印象的な写真に仕上げられる。普通ならフレームに収まらない山頂まで捉えた荘厳な山容も撮影できるし、蛇行する美しい川筋も途切れることなく1枚に収めることができる。
ただし、全景を撮影できることに満足したら、今度はスマホの望遠レンズを使って、その中の細かな部分に焦点を絞ることも試そう。特徴的な形の岩石とか、風景中に見られるパターン、変わった形のものなどを見つけたら、ズームしたり、それ以外の要素を取り除いたりして、それらを目立たせることができる。
できるだけ広いアングルを使いさえすれば、良い風景写真が撮れると思いがちだが、もちろんそうではない。実際に、広角を最も効果的に活用したければ、なおのこと構図を意識する必要がある。
前景に興味深い被写体を探そう。木の切り株、苔むした岩、可憐な野の花でもいい。そういったものがあれば、見る人の視線を引き付ける効果を持つ。丘のてっぺんで写真を撮るときなら、時間をとって周囲を見回し、構図に収めて写真を引き立てられそうなものを探してみよう。
リーディングラインも、見事な風景写真の構図に大きな役割を果たす要素だ。小道や、いい感じの壁など、景色の中を一定方向に長く続いている要素を探してみよう。写真を見る人は、その要素に視線を誘導され、そのまま景色の中に引き込まれていく。
スマートフォンの画面上にグリッド線や水準器の機能がある場合は、それを利用して、水平を保つようにしよう。ただしそのときは、山でもビルでも樹木でも、被写体のてっぺんが切れてしまわないよう、必ず再確認すること。ありきたりの写真にも編集でいろいろと手を加えることはできるが、構図を失敗した写真は後から挽回のしようがないということを忘れずに。
写真は、シャッターボタンを押して終わりではない。編集アプリで少し手を加えるだけで、平凡なスナップ写真が美しい芸術作品に生まれ変わりもする。
筆者が愛用している編集アプリは、Adobeのモバイル版Lightroomだが、GoogleのSnapseedでもかなりの効果がある。Snapseedは、Android版も「iOS」版も無料で利用できる。
筆者の場合は、色合いを正確に出したり、美しい夕陽に暖かみを加えたりするために、ホワイトバランスから調整し始めるのが普通だ。ここで、RAWフォーマットでの撮影が、威力を発揮する。露出レベル、特にハイライトと影を調整し、青空の明るさを少し抑えたり、前景の影を強めたりしてコントラストを少し強くするだけでも、場面の精彩さが増す。
筆者が勧めたいのは、まずコーヒーでもいれて、くつろぎなから編集アプリの調整スライダーを心ゆくまでいじってみることだ。画像の保存と再読み込みを繰り返しながら、各種のフィルターや設定を変えてさまざまな効果を重ねてみるといい。画像の編集に良い悪いはないので、満足するまで試してみよう。編集した結果に最終的に満足できなければ、いつでも元の画像に戻すことはできるのだから。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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