「iPhone 15 Pro」でプロ並みの動画編集を可能にする「ProRes Log」とは

　「iPhone 15 Pro」と「iPhone 15 Pro Max」は、その新しいチタニウムデザインとパワフルな性能が印象的だ。だが、カメラの本格的なアップグレードも、とりわけ動画制作者にとって大きな魅力だと言える。Proモデルは、最大4K、60fpsの「ProRes」撮影や、「Log」撮影が可能になり、驚くほど美しい動画を撮影できるようになったからだ。

提供：Andrew Lanxon/CNET

　この「Log」と「ProRes」とは、どんなもので、どのように優れているのだろうか。使用した方がいいのか、という重要な疑問もある。以下で、この両方について知っておくべきことを紹介しよう。

ProResとは

　ProResは、2007年にAppleによって開発された動画コーデックで、映像および映画分野の多くのプロフェッショナルが採用している。ProResファイルは、一般的にハイエンドのビデオカメラでサポートされており、撮影時により多くのデータを記録するため、通常のスマートフォンや一部の専用カメラを使用する場合に比べて、より高品質の映像が得られる。

Log動画とは

　Log（「対数」を意味する「logarithmic」の略）は、一部のプロ仕様のビデオカメラに搭載されているカラープロファイルで、現在は「iPhone 15 Pro」と「iPhone 15 Pro Max」でも利用できる。Log映像は、明るい部分と暗い部分の画像情報を保持するため、ポストプロダクションで色とコントラストをより柔軟に編集することが可能だ。

Log動画はなぜ灰色で白っぽく見える？

　カメラから直接出力されたLogファイルは平坦に見え、コントラストと彩度も低い。Logファイルは、撮影後に「Adobe Premiere」や「DaVinci Resolve」などのプログラムで編集することを想定している。編集の際には、カラリストが、望む見た目に合わせてコントラストと色調を調整する。このプロセスは、カラーグレーディングと呼ばれる。

左がLog撮影の映像。右は同じ映像に「DaVinci Resolve」でカラーグレーディングを施したもの
提供：Andrew Lanxon/CNET

　カラーグレーディングされる前の低コントラストの映像は、カラリストが映像の質を自分の思い通りに調整するための最適な出発点になる。Log映像は、使用する前に、必ず編集とカラーグレーディングを施す必要がある。

Log動画を編集するには

　Appleは「iPhone」でLog映像専用のカラー編集ツールをまだ提供していないが、「写真」アプリの「編集」オプションにある露出ツールの一部を使用することで、ある程度の編集はできる。だが、最高の結果を得たいのなら、Logファイルを「iPad」や「Mac」「Windows」PCに転送して、専用の動画制作アプリで編集すべきだろう。

　筆者のお気に入りは、Blackmagic Designが出している「DaVinci Resolve」だ。これは、プロの作品やハリウッド映画で使用されている業界標準ソフトウェアである。カラー編集の柔軟性が優れていることで知られており、筆者は、iPhone 15 Pro MaxやBlackmagicの「Pocket Cinema Camera」で映像を撮影した後、DaVinci Resolveを使って、どんな見た目に仕上げられるかいろいろと試せるのを、大いに気に入った。

デスクトップ版DaVinci Resolveの画面にはやや圧倒されるかもしれない
提供：Andrew Lanxon/CNET

　DaVinci ResolveはMacとPCで利用できるが、秀逸なiPad版アプリもある。素晴らしいことに、このソフトウェアはすべてのプラットフォームで無料で利用でき、一部の高度な機能を利用したい場合にのみ、有料の「Studio」バージョンが必要になる。だが、自分の映像にひと味加えたいというだけの人にとっては、無料版の機能で十分だろう。

ProRes Log動画を撮影できるiPhoneは？

　AppleはProResコーデックで撮影する機能を「iPhone 13 Pro」で導入したが、Log動画を撮影できるのは、現時点ではiPhone 15 Proと15 Pro Maxだけだ。

ProResとLog撮影を有効にする方法

　iPhone 15 Pro/Pro Maxで、「設定」に移動し、下にスクロールして「カメラ」をタップする。その後、「フォーマット」をタップすると、サブメニュー内に「ビデオ撮影」のセクションが表示される。「Apple ProRes」をオンに切り替えると、その下に「ProResエンコーディング」のオプションが表示される。これをタップすると、「HDR」「SDR」「Log」を切り替えることができる。

提供：Andrew Lanxon/CNET

　カメラアプリで直接ProResのオンとオフを切り替えることはできるが、LogからHDR、またはHDRからLogに切り替えたい場合は、設定アプリに戻る必要がある、ということに注意してほしい。iPhone 15 Pro/Pro Maxでは、4K映像を30fpsで撮影できるが、60fpsで撮影したい場合は、USB Type-C（USB-C）経由で外付けSSDドライブを接続し、そこに直接記録する必要がある。

ProRes Log撮影には、iPhoneのカメラアプリが必要？

　Appleはこの機能をサードパーティーのアプリに開放しているので、他のアプリでも撮影できる。筆者のおすすめは「Blackmagic Camera」アプリだ。このアプリでは、同社のプロ用カメラと同じくらい細かく設定を制御できる。スマートフォンで見栄えのする動画を撮影できる優れたツールであり、DaVinci Resolveと同じように、無料で使用できる。

iPhoneでプロレベルの動画を撮りたいなら、Blackmagic Cameraアプリがおすすめだ
提供：Andrew Lanxon/CNET

ProRes Logで動画を撮影すべき？

　Logプロファイルを適用したProResの映像は、非常に特殊だ。ポストプロダクションで時間がさらにかかるうえ、ファイルサイズは通常の動画ファイルの何倍も大きくなる。家族の集まりやビーチにいる友達の映像を撮影して、「Instagram」や「YouTube」にアップロードしたいというだけなら、ProResやLogを使う必要はない。

　だが、iPhone 15 Proをプロの動画制作ツールとして使いたいと考えており、映像にカラーグレーディングと編集を施す時間とリソースがある場合は、ぜひProRes Logを試してみてほしい。柔軟な編集を施せる映像を撮影できるので、専用のシネマカメラに匹敵する画質の動画をiPhoneで制作できるようになる。つまり、プロフェッショナルなスタイルの動画を制作したいと考えているコンテンツクリエイターにとって、iPhone 15 Proのカメラは非常に強力なツールだと言える。