ソニーG、通期見通しを上方修正--エンタメ3事業増益で、事業ポートフォリオの変化着実に

 ソニーグループは、2023年度上期(2023年4~9月)の連結業績を発表した。

 売上高および金融ビジネス収入は、前年同期比19.3%増の5兆7922億円、営業利益は同29.7%減の5160億円、調整後OIBDAは同14.9%減の8220億円、調整後EBITDAは同15.4%減の8325億円、税引前利益が同25.9%減の5336億円、当期純利益が同23.1%減の4176億円となった。

  1. PS5、年間2500万台という高い目標は据え置く
  2. SIEの暫定CEO就任に向け、十時氏がコメント
  3. デジタルカメラは中国市場を中心に堅調
2023年度1H連結業績
2023年度1H連結業績

 また、2023年度通期業績見通しを上方修正し、売上高および金融ビジネス収入は、8月公表値に比べて2000億円増加し、前年比13.0%増の12兆4000億円。調整後OIBDAは150億円増加とし、同1.8%減の1兆7850億円。調整後EBITDAは350億円増加の同0.7%減の1兆7850億円、税引前利益が200億円増加の同9.0%減の1兆1600億円、当期純利益は200億円増加の同12.5%減の8800億円とした。なお、営業利益は据え置き、同10.2%減の1兆1700億円としている。

2023年度連結業績見通し
2023年度連結業績見通し

 ソニーグループ 代表執行役社長 COO兼CFOの十時裕樹氏は、「中期経営計画のKPIである3年間累計調整後EBITDAは、目標である4兆3000億円に対して、19%増の5兆1000億円になることを見込んでいる。年平均成長率は9%となっている。成長領域であるゲーム&ネットワークサービス、音楽、映画によるエンターテイメント3事業の営業利益が、第2四半期にいずれも増益となり、全体の61%を占めるなど、成長型の事業ポートフォリオへと、変化が着実に進んでいる」と総括。

ソニーグループ 代表執行役社長 COO兼CFOの十時裕樹氏
ソニーグループ 代表執行役社長 COO兼CFOの十時裕樹氏

 「世界的な景気減速や地政学リスクと、それを受けたグローバル経済の分断など、事業環境には継続して注意を払う必要がある。下期には、事業環境への対応と、次期中期経営計画およびそれ以降に向けた基盤の確立に注力する考えだ。とくに、『PlayStation5(PS5)』の普及とそれに伴うユーザーベースの拡大、イメージング&センシング・ソリューション分野での製品歩留まりの向上、オペレーションの効率化などの収益性改善施策を、最重要課題として取り組み、悪材料を2024年度に積み残すことがないように、中期経営計画の総仕上げを進めていく」と述べた。

PS5、年間2500万台という高い目標は据え置く

 セグメント別の上期業績と通期見通しは次の通りとなった。ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野の売上高は前年同期比30%増の1兆7260億円、営業利益は3%増の981億円、調整後OIBDAは18%増の1589億円となった。また、通期見通しは、売上高は1900億円の上方修正を行い、前年比20%増の4兆3600億円、営業利益は据え置き、8%増の2700億円、調整後OIBDAは100億円の上方修正とし、14%増の3850億円とした。

ゲーム&ネットワークサービス分野(G&NS分野)
ゲーム&ネットワークサービス分野(G&NS分野)

 ソニーグループ 執行役員 経営企画管理の松岡直美氏は、「第2四半期は、PS5本体の販売増と、サードパーティソフトウェアの増収などによって大幅な増収となった。だが、PS5本体の損益悪化があった。PlayStation全体の2023年9月の月間アクティブユーザー数は、前年同期比で500万増加の1億700万アカウントとなっており、ユーザーエンゲージメントが高いPS5ユーザーが4割強まで高まっている」とした。

ソニーグループ 執行役員 経営企画管理の松岡直美氏
ソニーグループ 執行役員 経営企画管理の松岡直美氏

 PS5本体の販売台数は、上期には前年同期比44%増となる820万台を出荷したものの、年間計画の2500万台を達成するには、下期に1680万台という大きな販売台数が必要になる。この点について、松岡執行役員は、「第2四半期だけでは490万台となり、ほぼ期待通りの実績である。年間2500万台という高い目標は据え置く。簡単に達成できる目標ではないが、達成に向けては、小型・軽量化とストレージ容量拡大を実現した新型PS5や、PS5と組み合わせてリモートプレイが楽しめる『PlayStation Portal』を市場投入しており、年末商戦期における販売モメンタムを高めていくことができる」と述べた。

PS5販売台数
PS5販売台数
PS5と組み合わせてリモートプレイが楽しめる「PlayStation Portal」
PS5と組み合わせてリモートプレイが楽しめる「PlayStation Portal」

 その一方で、「極端にインストールベースのみを拡大するのではなく、年末商戦期における拡販施策の成果をきめ細かく確認しながら、PS5の普及拡大と収益性のバランスを取った事業運営を行う。提示しているガイダンスを下回るような覚悟でプロモーション、ディスカウント販売をするつもりはない」(十時社長 COO兼CFO)とも語った。

 また、総ゲームプレイ時間は前年同期比4%増と安定して伸長。10月20日に発売したPS5専用タイトル「Marvel's Spider-Man 2」の世界販売本数が約10日間で500万本を突破するヒットになったことも報告した。PlayStation Plusでは、プレミアムやエクストラのサービス比率をさらに高める方針も示している。

PlayStation全体の2023年9月の月間アクティブユーザー数と総ゲームプレイ時間
PlayStation全体の2023年9月の月間アクティブユーザー数と総ゲームプレイ時間

 ライブサービスゲームの開発計画については、2025年度までに、12タイトルの市場投入を明らかにしていたが、2025年度までに6タイトルをリリースする計画とし、残りの6タイトルのリリース時期は精査している段階にあるとした。

 十時社長 COO兼CFOは、「現在レビューをしており、いくつかのタイトルはゲーマーの期待に応えていないと判断した。できるだけ長く愛されて、プレイしてもらうためには高品質なタイトルとして市場投入しなくてはならないと考えている。中長期的にライブサービスゲームを拡大する方向性に変更はないが、いまは質に重点を置くべきだと考えている」と語った。

SIEの暫定CEO就任に向け、十時氏がコメント

 なお、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)では、同社社長兼CEOのジム・ライアン氏が2024年3月に退任することが発表され、十時社長 COO兼CFOが、2023年10月から兼務でSIEの会長に就任。さらに、2024年4月1日付でSIEの暫定CEOに就任することになる。

 十時は社長 COO兼CFOは、「暫定CEOに就くのは最低でも1年である。暫定CEOではない後任をアサインし、スムーズに移行することが私の最大のミッションになる。SIEは戦略的な重要なビジネスである。ステイクホルダーの期待に応えられるようなCEOを早く選びたい」と語った。

 音楽分野の売上高は前年同期比15%増の7669億円、営業利益は11%増の1544億円、調整後OIBDAは11%増の1800億円となった。2023年度通期見通しは、売上高で700億円の上方修正を行い、前年比13%増の1兆5600億円、営業利益は150億円増とし、前年比12%増の2950億円、調整後OIBDAは150億円増加し、前年比11%増の3500億円とした。

音楽分野
音楽分野

 松岡執行役員は、「第2四半期はストリーミング売上げの増加や為替の影響で大幅な増収となった」とし、ストリーミング売上げは、音楽制作が前年同期比9%増、音楽出版は同10%増(いずれもドルベース)と、安定した成長を遂げたという。Doja Catによる「Paint the Town Red」がBillboard Global 200において4週連続で1位を記録。Bad Bunnyのアルバム「Nadie Sahe」がチャート初登場で1位を獲得。Spotifyのグローバルランキング上位100曲に、同アルバムの21曲がランクインする大ヒットになったという。

Doja Catによる「Paint the Town Red」がBillboard Global 200において4週連続で1位を記録
Doja Catによる「Paint the Town Red」がBillboard Global 200において4週連続で1位を記録

 「ソニーミュージックグループは、中長期的に市場を上回る成長を実現するため、成長領域での競争力強化に注力している。The OrchardやAWALを通じて、楽曲ラインアップの強化やアーティストへのサービス拡充を行うなど、ソニーミュージックグループ全体でのエコシステム構築を進めている」と説明した。

 ラテンアメリカでは、2022年度実績で前年比26%増の13億ドルの規模に成長。音楽制作においてナンバーワンのポジションにあることも強調。さらに、中国、インド、東南アジアを成長市場とし、アーティストの発掘、育成のほか、カタログ買収、アーティストサービスの拡充も積極的に進めているという。

ラテンアメリカ
ラテンアメリカ

 映画分野の売上高は前年同期比6%増の7200億円、営業利益は42%減の454億円。調整後OIBDAは30%減の710億円となった。2023年度の通期見通しは、売上高は100億円の下方修正を行い、前年比7%増の1兆4600億円、営業利益は50億円減少の同4%減の1150億円、調整後OIBDAは据え置き、同2%減の1650億円とした。

映画分野
映画分野

 「第2四半期は、テレビ番組制作における納入作品数の増加や為替影響により、大幅な増収となった」という。

 通期見通しの下方修正は、ハリウッドにおけるストライキの影響により、映画製作における一部作品の劇場公開日の延期や、宣伝活動の制約などの影響、テレビ番組作品の納入の後ろ倒しなどの影響を考慮したという。

 9月27日に全米映画テレビ製作者協会(AMPTP)との合意を経て、全米脚本家組合(WGA)によるストライキが終結。11月8日には映画俳優組合との合意に至り、長期間に及んだストライキは正式に終息する見込みとなっている。

 「ストライキ終結後も、製作や劇場公開が集中するなど、事業活動の正常化には時間を要する。2024年度業績にも悪影響があると見込んでいる。それらの影響を軽減できるようにコストコントロールを徹底していく」と述べた。
Crunchyrollは順調に事業が成長。2023年10月には、アマゾンと、Amazon Prime Videoでのグローバル配信契約を結び、Crunchyrollが提供する1300タイトルが視聴できるようになったという。現在、米国、カナダ、スウェーデン、英国でサービスを提供。今後、提供地域を拡大するという。

デジタルカメラは中国市場を中心に堅調

 エンタテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S)分野の売上高は前年同期比4%減の1兆1853億円、営業利益は11%減の1167億円、調整後OIBDAは6%減の1684億円となった。2023年度通期見通しは売上高が100億円の上方修正とし、前年比1%減の2兆4400億円、営業利益は据え置き、前年並の1800億円。調整後OIBDAも据え置き、前年並の2800億円とした。

エンタテインメント・テクノロジー&サービス分野(ET&S分野)
エンタテインメント・テクノロジー&サービス分野(ET&S分野)

 ソニーグループ 執行役員 財務IR担当の早川禎彦氏は、「上海ロックダウンからの回復による需要増があった前年度の影響で、第2四半期は売上高が9%減となっている。テレビの市場環境は厳しく、需要の低迷や価格競争激化に対して、先行して販売計画を保守的に見直し、販売リスクや在庫リスクを抑制するとともに、コスト削減施策を前倒しで進める。デジタルカメラは中国市場を中心に堅調であり、ミラーレス一眼カメラの新製品や交換レンズの商品群により、年末商戦期での売上げおよび利益の最大化、シェア拡大を目指す。ヘッドホンも堅調に推移している。また、すべての主要製品で在庫を絞り込んでおり、適切な水準になっている」と説明した。

ソニーグループ 執行役員 財務IR担当の早川禎彦氏
ソニーグループ 執行役員 財務IR担当の早川禎彦氏

 イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)の売上高は前年同期比10%増の6991億円、営業利益は38%減の591億円。調整後OIBDAは6%減の1772億円となった。2023年度通期見通しは、売上高は300億円の上方修正とし、前年比13%増の1兆5900億円、営業利益は150億円増加し、8%減の1950億円。調整後OIBDAは150億円の上方修正をし、8%増の4400億円とした。減価償却費の増加が大幅な営業利益の減益につながっている一方で、通期見通しの上方修正は為替の影響などを反映したものだという。

イメージング&センシング・ソリューション分野(I&SS分野)
イメージング&センシング・ソリューション分野(I&SS分野)

 早川執行役員は、「スマホ向け市場は、中国や新興国での需要減退に底打ち感が出ているが、北米市場では大幅な前年割れの状況が継続している。市場の回復は2024年度以降になるだろう。また、歩留まりの改善は進んでいるが、営業利益に対しては15%程度の押し下げとなっている。2024年度での影響は3分の1程度と大幅に減少するが、大きな生産数量を見込んでいる主力製品が対象となるため、影響額は7割程度が残ると見ている」とした。

 その一方で、「スマホメーカー各社のハンエンドを中心とした新製品への大判センサーの搭載が進むことで、モバイルセンサー市場の金額規模の拡大は想定通りに進んでいる。だが、回復は緩やかであると想定している。車載向けセンサーは、サプライチェーンの正常化、電動化の進展により、高い市場成長が継続しているが、中国市場での競争激化の影響、ADAS化の進展の遅れの影響が出ており、見通しを下方修正した。社会インフラ向けイメージセンサーも中国市場の景気回復の遅れを背景に、見通しをもう一段引き下げた」と述べた。

 金融分野の金融ビジネス収入は前年同期比99%増の7853億円、営業利益は68%減の702億円、調整後OIBDAは60%減の841億円となった。2023年度通期見通しは、金融ビジネス収入が1100億円下方修正し、前年比36%増の1兆2100億円、営業利益は250億円減少の同51%減の1550億円、調整後OIBDAは250億円減少の同44%減の1800億円とした。

金融分野
金融分野
ソニー2023年度 第2四半期決算説明会資料(PDF)

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