新型「MacBook Pro」のエントリーモデルとなるM3搭載の14インチモデルは、なかなか悩ましい存在だ。レビューに使用した構成では、価格は1999ドル(日本では30万4800円)。結構な値段だが、実質的にHDR対応ディスプレイを搭載し、重くした「MacBook Air」(13インチ)のように思える。悪くはないが、もっと安いMacBook Airを買うか、上位モデルの「M3 Pro」搭載MacBook Proを買った方が満足度は高いだろう。M3 Pro搭載モデルなら最小構成でもメモリーを18GB積んでおり、価格は1999ドル(日本では32万8800円)だ。
レビュー機の構成では、HDRコンテンツの再生以外にこれといってできることがない。別の言い方をすると、M3搭載「iMac」がプロ向けではないように、この最小構成のMacBook Proにも「Pro」らしい点がない。これは性能より価格を重視した構成であり、実際にこれを使うことがない購買担当者だけが気に入るものだろう。
デザインは2021年モデルとほとんど変わらない。大きな違いはポートの数だ。ポートの数はチップによって異なる。M3搭載モデルの場合はUSB-C/Thunderboltポートが2つ、HDMIポートは1つしかない。つまり、内蔵ディスプレイを除くと、高解像度の外部ディスプレイは1台しかつなげない。
USB-Cポートが2つしかないことは、ドッキングステーションがある場所でしか使わないなら大きな欠点にはならないだろう。しかし空港やカフェなど、電源が限られている場所で作業する必要がある場合は、充電オプション(ポートとMagSafe電源コネクター)が片側に集約されていることが問題になるかもしれない。筆者の場合、アナログヘッドホンジャックをMacBook Proの左側にあるデバイスと接続する必要があったが、電源は右側のコンセントからとらなければならず、邪魔だがデバイスをデスクの真ん中に置かなければならなかった。
もっとも、定期的に充電していればバッテリー切れを心配する必要はない。今回のレビューでは、バッテリー駆動時間は約18時間という頼もしい結果が得られた。前モデルと比べるとバッテリー駆動時間は伸びており、使用環境にもよるが、M3搭載モデルでは公称15〜22時間となっている。今回のレビューでは、公称値の中間の18時間だった。上位のM3 Pro搭載モデルの場合は、搭載しているバッテリーは同じでも電力消費量が多いため、バッテリー駆動時間は旧モデルと同じ12〜18時間にとどまる。しかし、これでも十分に長い。
ディスプレイは基本的にMacBook Pro 16インチモデルと同じで、日常的な用途はもちろん、コンテンツ制作やゲームにも耐える明度と精度を備えている。ゲームについては、AppleのグラフィックスAPI「Metal」やM3に最適化されたタイトルであれば、問題なくプレイできる。例えば「Lies of P」は快適に遊べた。最適化されているゲームは、「MetalFX Upscaling」技術を使って映像を自動的に高解像度化しており、ディスプレイ自体が小さいこともあって、高フレームレートで美麗なグラフィックを簡単に実現できる。このようにAppleはゲーム環境の改善に努めているが、他の主要なプラットフォームからMacに移植されたゲームはまだ多くない。
今回のレビューでは、いくつかの面では、メモリーがパフォーマンスのネックになっていると感じた。MacBook ProはメインメモリーをCPUとGPUで共有するユニファイドメモリーアーキテクチャー(UMA)を採用しているため、メモリーが少なすぎると全体のパフォーマンスが落ちやすい。新モデルはグラフィックスの最適化が強化され、GPUリソースを過不足なく割り当てられるようになったが、ユニファイドメモリーが最小の8GBだった場合、CPUとGPUの両方に負荷がかかる作業では、メモリーが足りなくなる恐れがある。同じプロセッサーを搭載しているにもかかわらず、16GBのメモリーを積んだMacBook Pro 14と、48GBのメモリーを積んだiMacとでは、意外なほどパフォーマンスに差が出る理由の1つは、ここにあるのかもしれない。
この点を除けば、エントリーレベルのM3搭載モデルであっても、Intelチップ搭載のMacBook Proと比べると性能が向上している。数世代分のmacOSバージョンの差に加えて、搭載されているIntelチップがすでに古いこと、エンタープライズセキュリティとそのアプリが重いことなどから、Intelチップ搭載モデルは動きが鈍く、バッテリーの消費も早い。すでにAppleのMシリーズチップを搭載したシステムを導入しているなら、レビュー機の構成ではパフォーマンス向上を実感しにくいだろう。パフォーマンスを上げたいなら、購買担当者はもっと予算を積む必要がある。
テストに使ったマシンの構成は以下の通り。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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