小米技術(Xiaomi)の日本法人となる小米技術日本(シャオミ・ジャパン)は9月27日、新取締役社長に大沼彰氏が就任したことを発表した。
同時に、スマートフォン「Xiaomi 13T」シリーズや「Redmi 12 5G」、タブレット「Redmi Pad SE」、スマートバンド「Xiaomi Smart Band 8」のほか、チューナーレステレビ「Xiaomi TV A Pro」とロボット掃除機「Xiaomi ロボット掃除機 S10」を日本で発売することを発表した。
日本市場への本気度がうかがえた今回の発表会だが、今後シャオミは日本でどのような展開を考えているのか。シャオミ・ジャパン 代表取締役を務める大沼彰氏、プロダクトプランニング本部 本部長を務める安達晃彦氏に、話を聞いた。
――これまでのXiaomiについて、中国での歩みを教えていただけますか。
大沼氏:Xiaomiはとても若い会社です。2010年4月に創業し、2011年8月に北京市で、初代スマートフォンを発売しました。「mi」のロゴ通り、モバイルとインターネット、つまりスマートフォンを中心にしながら、現在はスマートフォン、IoT製品、家電という3つを主軸としています。
Xiaomiは、クールな会社になりたいという思いがあります。「イノベーション・フォー・エブリワン」という標語を掲げ、改革をして新たな製品を常に打ち出すことを目標にしています。実際に私が入社して、イノベーションによってお客様の便利さを追求できていると感じています。
ただ、誰もがいいと認める革新的なモノは世の中にたくさんありますが、高額なのでエブリワンというわけにはいきません。Xiaomiは、適正な価格でエブリワン(皆さん)にイノベーションをお届けできる世界を創りたいと考えています。
安達氏:スマホに関しては、当初「Mi」シリーズで展開していたんですが、Xiaomi 11Tの発売からハイエンド機を「Xiaomi」シリーズと呼ぶようになりました。2023年10月27日に発表した「Xiaomi 14」シリーズ(日本発売は未定)は、ちょうど会社の設立年度と同じ「14」がついています。
――中国では、家電メーカーとしても知られていますね。
大沼氏:中国では加湿器やテレビ、冷蔵庫などの家電分野でも認知が高い企業です。また、次のイノベーションの研究開発にも投資を行っており、2024年前半にEV(電気自動車)の量産を開始する計画です。
安達氏:Xiaomiの家電やIoT機器は、ほとんどがWi-FiやBluetoothなど何らかのネットワークにつながる機能を持っており、所有しているデバイスが「Mi Home」アプリ経由で相互に連携します。中国では、複数の機器を持っているとより便利になる、という体験が浸透している状況です。
――日本での歩みもお聞かせください。
大沼氏:日本での登記は2020年1月31日です。最初は2020年9月にKDDIから「Mi 10 Lite 5G」を、続いて2021年2月にソフトバンクから「Redmi Note 9T」を発売しました。2021年11月には、120Wの急速充電を初搭載した「Xiaomi 11T Pro」を発売しています。
2022年5月には「Redmi Note 11 Pro 5G」、12月にはソフトバンクから、初めて「神ジューデン」を名乗った「Xiaomi 12T Pro」を発売しました。2023年9月27日の発表は、ご存じの通りです。
Xiaomiが日本に来て3年が経ち、さまざまな経験をしてきました。9月の発表会をなぜ行ったかというと、グローバル企業であるXiaomiが日本ではどんな取り組みをしていくのか、製品のポリシーとストーリーをしっかりお伝えできていないと考えたことが発端です。製品ごとの発表はしていましたが、考え方などについては発信できていませんでした。今後もポリシーやストーリーをお伝えしていく取り組みを継続しなければならないと考えています。
安達氏:9月の発表会には、実はシナリオがありました。最初に売れているスマートバンドの新作を発表、そして5Gスマホのエントリーモデルを発表しました。5G拡大のタイミングで、われわれが日本に参入したという背景もあります。続いてタブレットと、従来の文脈でのコスパの良いデバイスを発表しました。
そして、次の一歩として、かなりの方が予想外だったと思われるテレビとロボット掃除機を発表しました。最後に、前日にグローバルで発表したばかりの「Xiaomi 13」シリーズをいち早く日本でも発表しました。安いだけではなくて最新のハイエンドモデルを日本のお客様にお届けするという、低価格から高額の商品まで幅広く紹介できたので、われわれのスローガンをお伝えするのにちょうどいいタイミングだったと思います。
大沼氏:商品カテゴリーとしては、グローバルで販売している商品、MNOさんやMVNOさんの考え方の戦略に従ってカスタマイズした製品、ソフトバンクやKDDIのARPU(契約当たり月間平均収入:アープ)増加につながる製品の3つです。すると、おのずと流通の選択が変わってきます。
――日本市場での戦略はありますか。
大沼氏:やはり、ブランド認知が低いという面はあります。ただ単にオープンマーケットに出しても広がりません。事業者のお力を借りつつ、エントリーモデルから、ミッドレンジ、ハイレンジそれぞれ戦略を持って進めていきます。時間はかかると思いますが、良い商品であればしっかり日本の皆さんに届けられます。日本では9割近くが事業者のマーケットなので、一緒に取り組まなければ成功しないと考えています。
安達氏:今のスマホの買い替えサイクルは4年ぐらいですが、同じところで買い替える人が多いです。以前行ったショップなどに行き、並んでいる商品から選んでいく。そのタッチポイントにわれわれが存在しないと、選択肢にすら入らなくなってしまいます。買いに行ったところに商品があり、お買い求めいただけるようにブランド認知を広げていきたいです。スマートバンドは人気が高いので、そういった周辺デバイスで良い体験をして、次はスマートフォンをXiaomiにしようか、という循環も作っていけたらいいなと思います。
――Xiaomiの製品を認知させるための独自の取り組みはありますか。
安達氏:一般ユーザー参加型のイベント「Xiaomiモノづくり研究所」を開催し、お客様の声を活用して増幅させるというアプローチを行っています。2022年から実施して、現時点(2023年10月)で計8回、のべ1200人の方に参加していただきました。
Xiaomiのスマホのファンをわれわれは「ミーファン」と呼んでいます。Xiaomiは漢字で「小米」と書きますが、中国語で「米」を「ミー」というんですね。「米粉」と書いて「ミーファン」です。このように、愛称を込めてお客様との接点をすごく大事にしています。
中国では創業者であるレイ・ジュン(雷軍)もユーザーと関わってファンミーティングに参加しています。日本でもぜひやっていきたいと、2022年7月から私が中心に実施しています。オンライン、オフラインを交えつつ、お客様にフィードバックをいただいたり、裏話をお話したりといった内容で、コミュニティが広がる構成を心がけています。
大沼氏:やはりお客様の顔を見るということが主体ですね。ミーファンを広げていきたいと思っています。
安達氏:実は9月の発表会にも、20人弱ぐらいのミーファンに来ていただきました。後ろの方に座っていただいたのですが、滅多にない体験ということで、非常に満足してくださいました。
――ミーファンはインフルエンサーとは違うのでしょうか。
安達氏:自分のブログを持っていたり、SNSのフォロワーが多かったりと、インフルエンサーと呼べる方もいらっしゃいます。でも、単純にガジェット好きの方も多くいらっしゃいます。一緒に楽しんでほしいので、参加者に偏りがないように意識しています。地方の方も参加できるように、オンラインでの開催も行っています。人数は多くて30人ぐらいで、われわれとファンが情報交換したり、ファン同士が仲良くなったりできる規模です。今後はガジェット好き以外の方も含めて参加していただきたいです。
――お二人がXiaomiという企業に感じる魅力を教えてください。
大沼氏:デバイスとデバイスをトータルでつなげるやり方や考え方は今まで経験したことがないため、新しいビジネスができると考えました。新しいことにチャレンジして、面白いことができそうだと思っています。
安達氏:スマホが成熟してきているなかで、例えば1年ぐらいでは大きく変わることがなくなりました。でも、中国系の企業はまだアグレッシブで、ハイエンドフラッグシップでも毎年イノベーションがあります。新しいカメラ機能や充電機能などにどんどんチャレンジしていく姿が、商品開発に携わっている人間としてすごく面白いです。
そしてもうひとつは、色々なモノを手掛けていることでの可能性です。『スマホの次は』とよく言われますが、Xiaomiはそこにも関わってくる可能性がある会社であることがすごく魅力的です。
――入社後のイメージは変わりませんか。
安達氏:商品に関してはあまりギャップはありませんが、想像していたよりもずっとアグレッシブでした。仕事面では、国としてのバックグラウンドが違うので、今までの自分の感覚とは違うものがありますね。
大沼氏:私はむしろ、そのギャップはパナソニックからサムスンに転職したときに感じました。日本と他国の企業では、スピード感がまったく異なります。特に決定スピードが速いのですが、むやみに決めているわけではなく、しっかりとしたバックボーンを持って判断しています。これは日本企業が勝てない理由のひとつだと思います。このスピード感に慣れていたので、Xiaomiに来たときはギャップを感じませんでしたね。
――シャオミ・ジャパンがゴールとしていることは何ですか。
大沼氏:ゴールというのはないですね。今のイノベーションを続けていきます。Xiaomiのスマートフォンやテレビなどが、今販売されているメーカーとそん色ない、またはそれ以上だと日本の皆さんにわかってもらえたらと思います。
安達氏:ゴールではないですが、最近Xiaomiっていいよ、Xiaomi来てるよね、という空気はできるだけ早く作っていきたいです。スマートフォンを買おうと思っている時に想起されるブランドになれるよう、取り組んでいきます。
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