「iPhone」の最新シリーズとなる「iPhone 15」のProモデルは、2017年にiPhone10周年を記念して登場した「iPhone X」以来、最も「攻めた」アップグレードだと言えるかもしれない。筆者は米国時間9月12日にApple本社で開催された新製品発表イベントの後、スティーブ・ジョブズ・シアターで「iPhone 15 Pro」と「iPhone 15 Pro Max」の実機を初めて見たが、第一印象は非常に良かった。特に感動したのは軽さ、ややコンパクトになった筐体、そして新たな素材として登場した艶消しチタニウムの質感だ。
会場で米ZDNETのKerry Wan記者とiPhone 15シリーズの全4モデルをすべて試した時、とりわけ印象的だったのはスタンダードモデルの出来の良さだ。
しかしProモデル、特にiPhone 15 Pro Maxにも大きな改良点があるため、旧モデルからの買替えを検討する理由はいくつもある。その中から、普段の生活に影響を与える可能性が特に高いと思われる改良点を紹介したい。
最新のProモデルとなるiPhone 15 ProとiPhone 15 Pro Maxは、見た目も手触りも過去のProモデルとは違う。ピカピカのステンレス製の筐体に代わって、新たに登場したチタニウム製の筐体はマットな仕上がりで、質感が際立つ。
しかし、素材の違い以上にはっきりと感じられるのは、Proモデルを持った時に感じる軽さだ。iPhone 15 Pro Maxの重さは221gで、2022年に登場した「iPhone 14 Pro Max」の240gより8%も軽い。Appleによれば、iPhone 15 ProとiPhone 15 Pro Maxは「Proモデル史上、最も軽い」という。
チタニウム製筐体は、すでに「Apple Watch Ultra」に採用されている。Appleには、素材の面からイノベーションを支援する金属工学の精鋭部隊がいることを考えれば、チタニウム製iPhoneにもかなり期待ができる。
近年はiPhoneの重量化が進んでいたため、片手で操作しやすいiPhoneの登場は大歓迎だ。すべりにくく、カバーをつけなくても扱いやすいという、うれしいおまけもある。
数年前からサムスンや華為技術(ファーウェイ)のスマートフォンに望遠レンズが搭載されるようになったことを受けて、iPhoneにも本格的な望遠レンズが搭載されるのではないかと長い間うわさされてきたが、それがついに実現した。iPhone 15 Pro Max限定ではあるが、5倍ズームの望遠レンズが搭載されたのだ。これはミラーレスカメラやデジタル一眼レフカメラで言うと、焦点距離120mmに相当する。この種のレンズは、通常は長さが8〜10インチ(20〜25cm)もあり、ガラス製の重いものが多い。これを、Appleは工学上のマジックを駆使して硬貨程度の大きさに縮小した。
望遠撮影は、iPhoneのカメラがまだ制覇していない、数少ない領域の1つだ。iPhoneは事実上、ほぼすべての全自動カメラを市場の隅に追いやり、特に広角撮影など一部のシチュエーションでは、プロ用の高級カメラにさえ取って代わった。しかし、iPhoneがミラーレス一眼カメラやデジタル一眼レフカメラにまだ追いついていない最後の領域の1つが望遠ズーム撮影だった。
誤解のないように言うと、iPhone 15 Pro Maxの5倍ズームは、Googleの「Pixel 7 Pro」のズームとは肩を並べるが、サムスンやファーウェイが開拓した光学10倍ズームの域には達していない。筆者は仕事用にサムスンのスマートフォンを使っており、望遠レンズを初搭載した「Galaxy S20 Ultra」以来、同社の望遠レンズを使い続けている。サムスンのズームレンズを使って5倍から10倍で撮影した望遠写真は細部まで鮮明で、ここ数年のiPhoneで撮影したどの写真も大きく上回る。
iPhone 15 Pro Maxの望遠レンズは、サムスンほど長いズームには対応していない。しかし、画質の面ではどの程度の差があるのか、非常に興味がある。
これまで着信・消音モードの切替えに使われていたスイッチが「アクションボタン」として生まれ変わった。これは2022年のApple Watch Ultraで初めて導入された機能だ。Apple Watch Ultraの場合、鮮やかなオレンジ色のボタンに7つの機能から1つを選んで割り当てられるが、iPhone版では、この機能がさらに進化した。
アクションボタンには、初期設定では引き続き「消音」が割り当てられており、iPhoneをサイレントモードに切り替えられる。しかし「設定」から、新たに追加された「アクション」ボタンのセクションにアクセスすると、割り当てる機能を「集中モード」「カメラ」「フラッシュライト」「ボイスメモ」「拡大鏡」「ショートカット」「アクセシビリティ」に簡単に変更できる。ショートカットを選べば、iPhone上のどのアプリでもアクションボタンを押すだけで一発起動できるようになるため、可能性はほぼ無限大だ。
筆者の場合、アクションボタンにはカメラを割り当て、物理的なシャッターボタンのように使うことで、写真をすばやく撮影できるようにしたいと考えている。iPhoneでは、ロックがかかっている状態だとカメラアプリの起動に数秒かかるが、筆者が使っているサムスンのスマートフォンは、電源ボタンをダブルクリックするだけでカメラが起動するため、シャッターチャンスを逃さない。2007年以来、筆者がiPhoneで撮影した写真は8万枚を超え、年平均では約5000枚を数える。アクションボタンからカメラを瞬時に開けるようになれば、撮影枚数はさらに増え、撮影ミスは少なくなるはずだ。
2023年モデルのiPhoneについて、全モデル共通で最も広く予想されていた変更点は、Apple独自の充電規格「Lightning」から、より一般的なUSB-Cへの移行だ。これは欧州連合(EU)が消費者の出費を抑え、電子機器廃棄物を減らすために義務付けたものだが、多くの競合企業はiPhoneよりも早い充電とデータ転送速度を実現するために、何年も前からUSB-Cを自社のスマートフォンに採用していた。
iPhone 15 ProとiPhone 15 Pro MaxのUSB-CコネクターはUSB 3.0に対応しているため、新たに次のようなことが可能になった。
問題は、こうした新機能のほとんど(iPhoneのUSB-Cポートを経由したAirPodsやApple Watchの充電を除く)がUSB 3ケーブルを必要としているにもかかわらず、iPhone 15 ProとiPhone 15 Pro Maxに同梱されている純正ケーブルはUSB 2にしか対応していないことだ。つまり、こうした機能を利用するためにはサードパーティー製のUSB3.0ケーブルを別途購入する必要がある。
もちろん、LighteningからUSB-Cへの変更がもたらす最も明白な利点は、「MacBook」や「iPad」、さらには他社製のカメラやヘッドホン、「Nintendo Switch」で使っている充電ケーブルをiPhoneでも使えるようになることだ。しかし、これは今使っているLightningケーブルやアクセサリー類がiPhoneで使えなくなることも意味する。ただし、他のApple製アクセサリーや古いiPhone、iPad、AirPodsなどの充電には、今後もUSB 2ケーブルが必要だ。
iPhone 15 ProとiPhone 15 Pro Maxに搭載されているチップは、新登場の「A17 Pro」だ。目覚ましい性能向上を実現するこの新チップは、業界初の3nmプロセスで製造されている。つまり簡単に言えば、iPhone 15のProモデルは、現在手に入る中で最も速く、最も効率的で、最も先進的なチップの1つを搭載しているということになる。
新チップの速度とパワーのおかげで、iPhone 15 ProとiPhone 15 Pro Maxは新採用されたUSB-Cケーブルを介して、大量のデータを素早く転送できるようになった。また、据置きゲーム機やデスクトップPC向けに開発されているゲームをiPhoneで動かすことも可能になる。それだけではない。最先端のビデオゲームがリアルなゲーム世界を実現するために使用している「レイトレーシング」にも対応した。これまで最新の「Xbox」や「PlayStation」、ゲーミングPCでなければ実現できなかった高度なゲーミンググラフィック機能をiPhone 15 Pro Maxが扱えるようになったという事実が、このチップの威力を物語っている。この強力なチップが今後、さらに多くのアプリで活用されるようになることを期待したい。
A17 Proの採用に関しては、残念だった点が1つある。それは、このチップの威力がパフォーマンスの向上に全振りされ、バッテリー駆動時間の延長には活用されていないことだ。iPhone 14 Proでは、多くのユーザーがバッテリー切れの問題を経験した。iPhone 14 Pro Maxの大きなバッテリーでさえ、人の多い都市部で頻繁に使ったり、電波環境の悪いへき地で酷使したりすると1日持たない。
1年後の2024年に登場するとみられる「iPhone 16」のProモデルでは、バッテリー駆動時間が伸びることを期待したい。
iPhone 15 Pro/Pro Maxこの記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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