グーグル「Pixel 8/8 Pro」--大幅に進化したカメラ機能の全貌に迫る

Stephen Shankland (CNET News) 翻訳校正: 編集部2023年10月13日 07時30分

 Googleは「Pixel 8」と「Pixel 8 Pro」を切り札に、スマートフォンのカメラ競争に勝利したいと考えているようだ。先ごろ発表されたPixel 8シリーズは、いくつもの点で前モデルを大幅に上回っているが、その1つが「動画ブースト」だ。この機能は、ユーザーが撮影した動画を大量のサーバーがひしめくGoogleのデータセンターに送り、人工知能(AI)処理を施すことで、画質を劇的に向上させる。

Pixel 8 Proのカメラバー
Pixel 8 Proのカメラバー
提供:Stephen Shankland/CNET

 Pixel 8 Proで動画を撮影すると、最初は1080pのプレビュー版が表示される。同時に、動画はGoogleのデータセンターにアップロードされ、Googleの巨大なAIモデルによって処理される。動画のサイズによってはアップロードと処理に数時間がかかる場合もあるが、処理後は影の表現が改善され、厄介なノイズが削除され、手ぶれも軽減されているという。動画ブーストが利用できるようになるのは2023年冬頃となる。また、2018年にスマートフォンでの写真撮影を新たな高みに引き上げたGoogleの「夜景モード」が、動画でも利用できるようになる。

 「ビデオ夜景モードは画期的な新機能だ」とPixelのカメラ周りを担当しているリードプロダクトマネージャーのIsaac Reynolds氏は言う。「最近発売された機種を含めても、低照度環境において、スマートフォンで動画を撮影するツールとして、これに勝るものはない」(同氏)。この言葉がAppleの「iPhone 15」シリーズを意識していることは間違いない。動画ブーストは、日中に撮影された動画の画質も改善できる。細部が鮮明になり、ズームや焦点の移動も滑らかになる。

 米CNETは米国時間10月4日に発表されたPixel 8(699ドル、日本では11万2900円)とPixel 8 Pro(999ドル、日本では15万9900円)について、Reynolds氏に独占インタビューし、ビデオ夜景モードを可能にした「デュアル露出」と呼ばれる新しいハードウェア機能に加えて、解像度の向上、レンズの改善、高度な編集が可能な新アプリ、全員が笑顔の集合写真を作成できる新機能、動画内の不要な雑音を低減する「音声消しゴムマジック」等、カメラ周りのさまざまな改善点について話を聞いた。

 「今年は特に動画機能に力を入れた」と、Reynolds氏は語る。特に動画ブーストの実現は、「ここ数年で最も刺激的な仕事」だったという。

 今回の記事では、Pixel 8シリーズの写真・動画機能の全貌に迫る。

  1. 新機能「動画ブースト」の仕組み
  2. カメラの解像度がさらに向上
  3. カメラハードウェアの改善
  4. カメラアプリに「プロ設定」が登場

新機能「動画ブースト」の仕組み

 動画ブーストの実現は、さまざまな点で多くの開発を要した。

 まずはデュアルコンバージョンゲインと呼ばれるイメージセンサー技術がメインカメラに搭載され、画像のノイズやダイナミックレンジ(暗い部分と明るい部分の両方のディテールを捉える能力)が改善された。Googleはこのアプローチを「デュアル露出」としている。既存のハイダイナミックレンジ(HDR)技術と異なり、複数の写真を合成するわけではない。

iPhone 15 Proで撮影した映像(左)とPixel 8 Proの動画ブーストで撮影した映像
iPhone 15 Proで撮影した映像(左)とPixel 8 Proの動画ブーストで撮影した映像
提供:Google; Screenshot by Stephen Shankland/CNET

 デュアルコンバージョンゲイン技術は、暗い部分と明るい部分の両方から、ディテールをピクセルごとに同時にキャプチャーし、両方の良い点を合成する。その結果、「高コントラスト環境でも、低照度環境でも、Pixel 7やPixel 7 Proと比べて、画質が劇的に向上した」とReynolds氏は言う。「ダイナミックレンジをあきらめる必要はない。Pixel 8シリーズでは露出不足となる領域、つまり暗い部分のノイズが減る」

 この技術はPixel 8と8 Proの両方に搭載されるが、動画ブーストはPixel 8 Proだけの機能だ。

 次は、Googleが開発しているPixel用プロセッサーに第3世代の「Tensor G3」が登場した。Tensor G3は2022年に登場した「Tensor G2」よりもAIや画像処理に使える内蔵回路が多い。Tensor G3の搭載により、Pixel 8シリーズでは2種類の動画が制作される。1本は、撮影後すぐに確認・共有できる1080pのプレビュー版だ。

 もう1つは動画ブースト版であり、撮影したデータをGoogleのサーバーにアップロードし、後処理を加える。Tensor G3はこの動画の前処理を担っており、フレームごとに各シーンに関するメタデータ(最大400)を埋め込む。

 動画ブーストの最後のステップは、Googleのデータセンターで行われる。ここでは、新たに開発されたアルゴリズムを使って、サーバーによるノイズ除去、手ぶれ補正、低照度画像の鮮明化が行われる。処理が終わると、スマートフォン上にあるプレビューと置き換えられる。4K解像度で撮影した場合は4K版も含まれる。

 Reynolds氏によれば、動画をデータセンター経由で処理する価値は大いにあるという。

 「素晴らしい成果が得られるからだ」と同氏は言う。人間は思い出に浸るのが好きだ。数カ月後、数年後はもちろん、数時間後でも写真や動画を見返して、過去に思いを馳せる。「数時間待つことにデメリットはまったくないだろう」(同氏)

カメラの解像度がさらに向上

 動画ではなく写真を撮影する場合、デュアルコンバージョンゲイン技術は使われない(少なくとも、現時点では)。しかしGoogleは、このテクノロジーの可能性に期待しているという。

 他にも大きな改善点はある。サムスンやAppleと同様にGoogleも、過去数年にわたってスマートフォンカメラの解像度の限界となってきた1200万画素の壁を超えようとしている。

 2023年のPixel 8 Proは、画素数でAppleに差を付けようとしている。メインカメラでは脅威の5000万画素の写真を撮影できるだけでなく、超広角カメラでは(2023年に出た「OnePlus 11」のように)4800万画素、5倍ズームの望遠カメラでは4800万画素の写真を撮影できる(Pixel 8の場合、超広角写真は1200万画素のみで望遠カメラは非搭載)。

Pixel 8(Bayカラー)とPixel 8 Pro(Roseカラー)
Pixel 8(Bayカラー)とPixel 8 Pro(Roseカラー)
提供:Stephen Shankland/CNET

 他社の最上位スマートフォンと同様に、Googleもピクセルビニングと呼ばれる技術を使って、最大解像度で撮影するか、(特に低照度下での撮影に有利な)低解像度で撮影するかをユーザーが選択できるようにしてきた。しかしPixel 8シリーズでは、低照度環境でも最大解像度で撮影できる。これに対して、iPhoneは周囲が暗くなるとピクセルビニングが作動し、自動的に低解像度での撮影に切り替わる。

 「非常に暗い場所でも、(1200万画素で撮影するよりは)5000万画素で撮影した方が、多少ノイズは生じるものの、細部を鮮明に捉えた写真が撮影できる」とReynolds氏は言う。

 夜景モードを使えばノイズの低減も可能だ。夜景モードは5000万画素の解像度でも動作する。

カメラハードウェアの改善

 Pixel 8とPixel 8 Proはどちらもデュアルコンバージョンゲイン技術に対応した新しい高性能なメインカメラを搭載しており、Pixel 7シリーズよりも21%多くの光を取り込めるようになった。

 どちらの機種も新しいセルフィーカメラを搭載しているが、オートフォーカス機能を利用できるのはPixel 8 Proのみだ。Googleによれば、Tensor G3では画像処理が改善されているため、どちらのモデルでも色が改善され、ノイズが減少しているという。

 2022年モデルに続き、5倍の望遠カメラはProモデルのみに搭載された。使用しているセンサーはPixel 7 Proと同じだが、最新モデルのPixel 8 Proは絞り値f2.8のワイドレンズを採用しているため、56%多くの光を取り込める。これは「iPhone 15 Pro Max」の5倍の望遠カメラと同じ絞り値だ。

 「低照度撮影に力を入れている」とReynolds氏は言う。副次的なメリットもある。Pixel 7 Proのf3.5レンズより素早くフォーカスをロックできるため、5倍望遠カメラへの切り替えが速くなった。

Pixel 8 Proのカメラバー
Pixel 8 Proのカメラバー
提供:Stephen Shankland/CNET

 超広角カメラはProのみ改善された。大きくなったセンサーとレンズのおかげで、105%多くの光を取り込めるようになった。これは低照度環境での撮影や、4800万画素の撮影では重要なポイントだ。

 オートフォーカス機能はProモデルの超広角カメラにも備わっており、2022年モデルの3cmから、今回は2cmまで近づいて撮影できるようになった。これはマクロ撮影での背景ぼかしが大幅に向上することを意味するとReynolds氏は言う。

カメラアプリに「プロ設定」が登場

 Googleが誇る「コンピュテーショナルRAW」技術は、複数の写真を合成してJPEG画像を作成する技術と、RAW写真が持つ編集の柔軟性を組み合わせたものだ。シングルフレームのRAW写真よりもダイナミックレンジが広く、撮影した写真を後から「Adobe Lightroom」などのソフトウェアを使って編集する人にとっては便利な技術だ。

 Pixel 8 Proのカメラアプリには、撮影しながら写真を微調整できる新機能が搭載された。新搭載のプロ設定では、シャッタースピード、露出の長さ、ホワイトバランス、ISO感度、フォーカスを設定できる。

 ほとんどの人はRAW撮影をしないし、手動でカメラの設定をいじることもないだろう。しかし、プロ設定に意味がないわけではない。「特定の条件を備えた写真がどうしても必要な場合に、希望通りの写真を撮影できる」とReynolds氏は言う。

 Googleのカメラアプリに関してはもう1つ、大きな変化があった。同アプリは長年、写真、動画、パノラマ、夜景、スローモーションといったモードをボタンで選択するようになっていたが、Pixel 8シリーズでは動画と写真のマスタースイッチが用意され、それぞれに独自のボタンが用意された。

 カメラアプリの新機能としては、RAW写真に使用されるDNGファイルが改善された。これまでよりも多くのメタデータを写真に埋め込めるようになったため、Pixelで撮影した写真をAdobe Lightroomのようなソフトウェアに読み込んだ際に、Pixelで微調整されたJPEGの色やトーンをより高い精度で再現できるようになった。RAW写真全般について、色味や微妙なトーンを改善する調整が加えられたとGoogleは言う。

 Pixel 8とPixel 8 Proは、「Ultra HDR」を採用した初のスマートフォンだ。Ultra HDRはAndroidの写真フォーマットで、JPEG写真に情報を追加することにより、対応するソフトウェアでハイダイナミックレンジの画像を表示できる。Ultra HDRにより、例えば天体写真の星はより明るく描写され、5000万画素の解像度でより細部まで描写できるようになる。

Pixel 8
Pixel 8 Pro

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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