リアルイベントだからこそバーチャル世界を知ってもらえる--「VketReal」で感じたこと

 2023年7月末、秋葉原の一隅に、「バーチャル」が顔を出した。その名は「バーチャルマーケット2023リアルinアキバ」(VketReal)。これは、「バーチャルマーケット2023 Summer」と同時に行われた、VRイベント「バーチャルマーケット」(Vket)の初のリアルイベントである。

 「バーチャルで行われるイベントをリアルでやるの?」と、イベントへのイメージが湧かない人も多かっただろう。筆者もその一人だった。しかし、結局のところ、イベント開催の2日間とも多くの人でにぎわい、大盛況のイベントとなった。

 そこで、この記事では「VketReal」現地に参加した筆者の視点から、2日間にわたって盛り上がった「リアルにやってきたVket」がどのようなイベントだったのか、お伝えしていくことにしよう。

  1. バーチャルマーケットとは?
  2. バーチャルの熱がリアルにあふれたVketReal
  3. リアルイベントだからこそゼロからバーチャルを知ってもらえる

バーチャルマーケットとは?

 バーチャルマーケットは、HIKKYが主催する世界最大規模のバーチャル展示会である。このイベントでは、バーチャルな空間でアバターやその他の3Dアイテム(アバターやアイテムなど)だけでなく、現実の商品(洋服、PC、飲み物など)も売買できる。2018年に初めて開催されたこのイベントでは、人気メタバースサービス「VRChat」のバーチャル空間に作られた特設会場に、3Dアバター・3Dモデルが展示され、来場者は自由に試着や購入をしたり、ゲームを体験したりする。

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 現在では、約60社の企業やIP、多数のサークルが出展し、その数はギネス記録に認定されるほどである。このVRイベントは、商品の売買だけでなく、乗り物や映画鑑賞、音楽ライブ、ゲームなど、さまざまなエンターテインメントが楽しめる場としても知られている。

 バーチャルマーケットでは、主に出展者と来場者がメタバース上で交流し、作品の展示、鑑賞、売買が行われる。事前に出展申し込みをすれば、どんな人でも自分で制作したアバターや作品を売ったり展示したりできる。また、来場者はその場で作品にタッチして試着し、気に入ったらブース内のQRコードから購入が可能だ。豊富なアバターやアクセサリー、VR空間上の家や部屋など、様々なバーチャルアイテムを販売したり購入することができるため、メタバースで行われる最も人気のイベントとしファンから愛されている。

 バーチャルマーケットはエンタメからアパレルブランドまで、さまざまなジャンルの企業が参加したり、個人制作のブースもたくさん展示されたりするだけでなく、毎回新しいワールドやギミックが用意されているため、飽きることがない。また、バーチャルマーケット内では試着したまま他のブースへ移動できるので、アイテムを組み合わせるなどの楽しみ方も可能だ。これらは、バーチャルならではの買い物方法と言えるだろう。

バーチャルの熱がリアルにあふれたVketReal

 このVketRealは、ベルサール秋葉原をメイン会場としたリアルイベントとして行われたもの。最初、筆者も「リアルで行われるバーチャルのイベントは盛り上がるのだろうか」と半信半疑だったが、イベント当日は一部のエリアが入場規制がかかるほどの盛況ぶりだった。全体的にはVRやメタバースが好きなお客さんが多かったように見えたが、バーチャルマーケットのファンやVRユーザーだけでなく、海外の方やお子様連れの方など、様々な人が会場に足を運んでいた。

 これまでのバーチャルマーケットとは違い、VketRealでは商品の売買が主ではなく、VRやメタバースの知識がない人がバーチャルの世界を体験できるような展示や体験コーナーが多くあり、仮想空間の「バーチャルマーケット」での展示内容を、現実世界でも体験できるブースがたくさん用意されていたので、多くの人が楽しめるイベントだったのではないだろうか。

 今回のバーチャルマーケットは5周年・10回目の記念すべきイベントであり、2日間で総来場者数は4万人を記録。また、イベント内で販売された公式グッズや各ブース・店舗でのリアル商品の販売個数は合計で8000点以上に達したようだ。

 1階フロアは現実とバーチャルが融合したアトラクションや企業の出展が主で、出展企業の多くは「バーチャルマーケット2023 Summer」にも出展していた。各企業ごとのコンテンツに加えて、Vket側のブースをVRヘッドセット(VRヘッドマウントディスプレイ)をかぶって体験できるコーナーもあった。1階フロア全体としては、VRやメタバースに馴染みのない人が楽しい体験を通して初めて触れることができる場所であったと感じた。

 また、バーチャル会場とリアル会場を連携した謎解きゲームもあり、筆者も体験してみたかったが、待ち時間が長く断念することとなった。一方で、地下1階は1階フロアに比べてよりディープでニッチな空間で、クリエイターの展示・即売会やコミュニティの出展コーナー、そしてイベントステージが軒を連ねていた。地下1階はかなり混雑しており、入場規制がかかることもあり、筆者も来たばかりは入ることができず、入場規制が解除されるまで待つこととなった。

 地下1階エリアはある種の「オフ会」の場となっており、メタバースの世界にどっぷり浸かった人が訪れる、オフライン交流の場となっていたように感じる。筆者も創設メンバーである私立VRC学園のブースもあり、これまでメタバースでしか会ったことのない友人たちとリアルで初対面することができたり、バーチャルからリアルに繋がる素敵な出会いの場になった。

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 遠方から来場した方も多く、今まではリアルではなくバーチャルでのみ繋がっていた友人や、バーチャルをきっかけに仲を深めた友人と、VketRealを通じてリアルで結ばれた人も多かったのではないだろうか。

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リアルイベントだからこそゼロからバーチャルを知ってもらえる

 VketRealでは、バーチャルにあまり興味のない人でも楽しめるようなブースや企画がいくつも用意されていたと筆者は感じた。

 VRやメタバースは注目の割には、まだまだ一般的に普及しているとは感じ難い。バーチャルの世界を楽しむには、高いITリテラシーやPC、VRゴーグルなどの機材が必要で、多くの人にとってはハードルが高いということも理由に挙げられるだろう。また、現在VRやメタバースに関わっている人の多くが、豊富なITの知識を持つ人ばかりで、そのなかでしか議論がされないことも課題である。
 しかし、VketRealのようにバーチャルのイベントをリアルに行うことで、どんな人でもバーチャルの世界に少しでも興味を持てるようなきっかけが作られるのではないだろうか。

 今回VketRealに参加した人々が、将来的にVRやメタバースを本格的に始めるかどうかは不明瞭だが、多くの人が仮想空間にしかないコミュニティや文化、イベントの存在を知ることができたことは確かだと感じた。まだVRやメタバースの世界を体験したことがない人は、今までにない世界観をぜひ一度自ら体験してみていただきたい。

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齊藤大将

Steins Inc. 代表取締役 【http://steins.works/

エストニアの国立大学タリン工科大学物理学修士修了。大学院では文学の数値解析の研究。バーチャル教育の研究開発やVR美術館をはじめとするアートを用いた広報に関する事業を行う。

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