ドコモグループが約10年かけて生み出したローリスク、ハイリターンの新規事業立ち上げ方法とは

 テクノロジーを活用して、ビジネスを加速させているプロジェクトや企業の新規事業にフォーカスを当て、ビジネスに役立つ情報をお届けする音声情報番組「BTW(Business Transformation Wave)RADIO」。スペックホルダー 代表取締役社長である大野泰敬氏をパーソナリティに迎え、CNET Japan編集部の加納恵とともに、最新ビジネステクノロジーで課題解決に取り組む企業、人、サービスを紹介する。

 ここでは、音声番組でお話いただいた一部を記事としてお届けする。今回ゲストとして登場いただいたのは、NTTドコモ 新事業開発部インキュベーション推進担当担当部長の朝生雅人氏。NTTドコモグループ3社の社員のアイデアを事業化する新規事業創出プログラム「docomo STARTUP」の取り組みについて聞いた。

NTTドコモ 新事業開発部インキュベーション推進担当担当部長の朝生雅人氏
NTTドコモ 新事業開発部インキュベーション推進担当担当部長の朝生雅人氏

大野氏:この新事業は、CNET Japanでも一度取材されているんでしょうか。

朝生氏:そうですね。我々が過去に「39works」という取り組みを進めていた時代に、取材をしてもらいました。

大野氏:NTTドコモとして進められているこの新事業の取り組みについて、改めて説明していただいてもいいでしょうか。

朝生氏:7月から「docomo STARTUP」というNTTドコモ、NTTコミュニケーションズ、NTTコムウェアの、3社の新規事業創出プログラムを立ち上げました。私はその企画運営を手掛けています。

大野氏:3社ということは、NTTグループの社員であれば、誰でも応募できるというものなのでしょうか。

朝生氏:はい。ドコモ、コミュニケーションズ、コムウェアの3社はドコモグループと一体になって事業を運営しています。2022年から3社で統合したプログラムとして新規事業の取り組みを進めていましたが、この7月に、より多くの事業が生み出せるよう、プログラム自体をリニューアルしました。

大野氏:リニューアルを図るということは、以前もこの新規事業のプログラムを走らせていたんですよね。以前はどのような取り組みをされていたのでしょうか。

朝生氏:NTTドコモは2014年の7月から「39works」という、リーンスタートアップの手法に沿った事業開発に取り組んでいました。そこでも一定のアウトプットを出していまして、この7月まで、約9年間で1300件超の事業アイデアを作り出してきました。その中で51件は事業化し、お客様に実際にサービスを提供しています。うち3件については、我々の子会社としてアウトプットをしています。

「39works」これまでの取り組み
「39works」これまでの取り組み

加納:かなりボリュームがあり、たくさん事業化されていますね。大きな企画が出たり、成功していく秘訣のようなものがあれば教えていただきたいです。

朝生氏:世の中で、新規事業は1000件のうち3件が成功する「千三つ」と言われている領域で、1300件のうち3件は、千三つを少し下回っているくらいです。これに加えて事業部に移管をした事業を含めると、1300件のうち6件という数字です。千三つをちょっと超えるようなアウトプットを出してきたことになりますね。これが成功していく秘訣を語れるレベルかというと、もう少し社会的なインパクトも含めて、大きくしていきたいという課題感はあります。

 それでも今までアウトプットを出してきたところで言いますと、世の中にスピーディーに事業を出し、パートナーの方と事業検証をしてこれがお客様に受け入れられるかを考え、高速に進めてきたところは当初から信念としてやってきました。そういったところが、今の1300件のうち6件というアウトプットになっているのかなと思います。

大野氏:ぱっと見ると、上手くワークしているのかなという印象を受けます。それにもかかわらず、新規事業創出プログラムであるdocomo STARTUPをやられたことには、どういった背景があったのでしょうか。

朝生氏:数的に言うと6件というアウトプットを出しているものの、事業規模や社会インパクトをもっと大きくしたいという期待感がやはり強かったんです。そういった部分にどのように応えていけるかを、人とお金とモノの観点で分析し始めたことが、docomo STARTUPが生まれたきっかけでした。

 人とお金とモノという観点からどういった形で課題を振り返ってきたのかというと、まず人に関しては、事業オーナーについてです。我々の中でも、本当に会社化できるような、スタートアップと並ぶような会社が作れる人が社内にいるのかといった声があったのですが、非常に優秀な学生がドコモを選んで入社してくれていますし、ドコモの卒業生が起業して会社を大きくしていることもあるので、これに関しては「いる」と私自身は考えています。

 では人の面で何が課題かというと、「知らない」「やれない」「やらない」の3つが障壁になっていました。「知らない」というのは、まさにこのプログラム自体を知らないという、認知不足の問題ですね。続いて「やれない」のは、本業との兼業という形で事業検証を進めていくことで、事業に集中できず、事業化が遅れる、事業化を断念するといったことです。最後に「やらない」というのは、さまざまな制度を含めてこの会社でやるのか、外でやるのかという道が選択肢としてあったときに、外でやるという選択をすることで、結果的に我々の会社としてのアウトプットが出なくなるという課題です。

 2つめのお金は、チームのリソースという捉え方をしていただければと思います。このチームのリソース自体が、社内のお金だけに依存する形になってしまうと、限られたリソースの中でしかアウトプットを出せなくなってしまいます。ここに社内外の資本や人材の活用を組み込んでいくことによって、もっと成果を構築できる可能性があると思っています。

 最後のモノについては、会社のアセットと捉えていただければと思います。39worksという仕組みは、高速に事業検証を進めていくための1つの手法です。ドコモのサービスではなく社外のサービスとして事業検証を進めていくことで、高速化を図っていくケースが多かったんです。こういった手法についてはメリットがある一方で、社内サービスと距離を置いているので、結果的に社内のアセットの活用ハードルが高くなってしまうという、デメリットもあるスキームでした。人とお金とモノが社会インパクトを大きくする上で課題になっているのではないかと考え、ここを何とか解決していくべく、docomo STARTUPを立ち上げたんです。

過去の振り返りとdocomo STARTUPでの打ち手
過去の振り返りとdocomo STARTUPでの打ち手

大野氏:2014年からやられてきて、さまざまな課題があったんですね。大企業の中での新規事業となると、人数が多い中でその取り組みを知らせること、認知させていくことも非常に重要なポイントになってくると思います。この社内認知に関しては、どのように解決されていったのでしょうか。

朝生氏:やはり、大企業ならではの認知の広げ方があると思っています。1つは、幹部からのメッセージがとても大切です。会社としてこういった取り組みをしていくとしっかりメッセージを出すことによって、社員がメッセージを受け止め、よしやろうという気持ちになってもらえます。幹部のメッセージを伝えることは、事務局の営みとしてやっていました。もう1つは下からの取り組みで、しっかりと現場で、こういった営みがあることを広げていくのが大切だと思っています。そのために、我々もdocomo STARTUPや39worksで取り組んできたコミュニティを通じて発信をしていきまして、現場から各組織に、横に広げていきました。両方の取り組みを重視しながらやってきたと思っています。

大野氏:私としては、人の部分がすごく気になるポイントです。幹部から、そして現場からの取り組みで認知を広げていくという活動をされてきて、問題を解決してきたんですね。2つめの、既存の部署の仕事などがあって「やれない」、業務に取り組みたくてもできないという課題は、どのように改善されてきたのでしょうか。

朝生氏:「やれない」という課題は、今回の制度の肝の部分でもありました。実際、事業オーナー自身が会社を設立して事業に携われるようにすることを、制度に盛り込んでいたんです。そういった形で、今までは兼業で事業検証を進めていたところから、自ら社長として事業のみに取り組んでいくという仕組みを作ることで、アウトプットを出せる形にしていきました。

大野氏:大企業ですと、それを会社でやるのだったら辞めます、という選択をする方も一定数いるのではないでしょうか。私もそれで会社を辞めて、自分で独立しています。会社を辞めて退職してしまう人を社内に引き留め、事業を会社の中でやってもらうために、どのような形を取られていたのでしょうか。

朝生氏:正直、引き留めておくことが全体にとっていいことか悪いことかというと、いろいろなケースがあると思います。しかし少なくとも、事業を成し遂げたい、作り上げたいと考えている人の選択肢に上がらないのは、我々の会社にとって損失です。そのため我々としては、自らの会社の中で起業することもきちんとイーブンに評価できるような形を作った上で、その人が本当はどちらでやりたいかを判断してもらえればいいと思っています。

 その上で肝になってくることとして、やはり報酬面は大きいはずです。実際、事業を立ち上げて企業が大きくなったときに、それが収益においてリターンが得られるようなバランスを考えています。起業して自分の会社として企業をスピンアウトして、その会社が成功した場合には、ファイナンシャルリターンも含めて得られるような仕組みを今回作りました。自分が外に直接出て起業して成功したパターンと、得られる報酬が近しくなるような形を取っています。

 下記の内容を中心に、音声情報番組「BTW(Business Transformation Wave)RADIO」で、お話の続きを配信しています。ぜひ音声にてお聞きください。

事業化を実現するために用意した3つの道

お客様から選び続けてもらう会社になるために新しいものを生み出し続ける

新規事業立ち上げをローリスク、ハイリターンで実現するための仕組み






大野泰敬氏


スペックホルダー 代表取締役社長
朝日インタラクティブ 戦略アドバイザー


事業家兼投資家。ソフトバンクで新規事業などを担当した後、CCCで新規事業に従事。2008年にソフトバンクに復帰し、当時日本初上陸のiPhoneのマーケティングを担当。独立後は、企業の事業戦略、戦術策定、M&A、資金調達などを手がけ、大手企業14社をサポート。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会ITアドバイザー、農林水産省農林水産研究所客員研究員のほか、省庁、自治体などの外部コンサルタントとしても活躍する。著書は「ひとり会社で6億稼ぐ仕事術」「予算獲得率100%の企画のプロが教える必ず通る資料作成」など。



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