フィラメントがChatGPTなどデジタルツールをフル活用して商工中金の新規事業開発を支援 - (page 2)

新規事業アイデアの鍵となる課題発見をChatGPTがサポート

 そうした自然発生的なデジタルの浸透もあるが、およそ1年に渡るビジコンにとどまらず、その後の人材育成において最も大きな役割を担っているのが、商工中金が4月に開校した「人づくりカレッジ(ヒト☆カレ)」という企業内大学、人材育成支援のプログラムだ。この「ヒト☆カレ」内でフィラメントが提供するサービス「ビジネス創出講座」は、座学や課題提出、ワークショップ、メンタリングなどを通じて新規事業創出人材を生み出していくための連続講座となっている。

 同講座は、ビジネス基礎理解のための講座、マインドづくりのためのワークショップ、リサーチやインタビューに関する講座、アイデア創出のワークショップなどなど、多数のステップから構成されるプログラムとなっている。そのなかで動画視聴による座学で知識を身に付け、次に実際の調査・検証活動を行う課題に取り組み、そこで提出されたものに対してメンターがフィードバックする、というサイクルを何度も繰り返していく。

フィラメント提供の「ビジネス創出講座」の内容
フィラメント提供の「ビジネス創出講座」の内容
座学、課題提出、メンターからのフィードバックのサイクルを繰り返す
座学、課題提出、メンターからのフィードバックのサイクルを繰り返す

 参加者が提出する課題については、Microsoftのツール「SharePoint」を介してメンターとオンラインでやりとりする。また、課題提出前後でもSlack上でメンターに気軽に質問したりアドバイスをもらったりできる仕組みも整えている。ここである程度デジタルツールに関する素養も磨かれることになるわけだ。

課題提出にはMicrosoft SharePointを利用
課題提出にはMicrosoft SharePointを利用
このなかでメンターからのフィードバックが得られる
このなかでメンターからのフィードバックが得られる

 さらに、それに続く「アイデア創出のワークショップ」では、AIチャットツールである「ChatGPT」を活用する新しい取り組みも行った。フィラメントがChatGPTをエンジンに用いて開発した「B3(Business Building Booster)」を利用するもので、先述の講座受講と課題提出、メンターのフィードバックというサイクルを回して得た学習の成果をB3に入力すると、AIがそれに応じた回答を返し、アイデアをさらに深められるという。

 B3の特徴は、AIチャットへの入力文となる「プロンプト」がテンプレートとしていくつか用意されており、そこから目的に合ったものを選んでデータ入力するだけで、AIによる適切な回答が出力される仕組みになっていること。たとえば今回の商工中金の事例では、「自社の強み」と「参入したい業界・市場」を入力すると「その業界全体の課題」が5つ出力され、次にその課題の中から「取り組みたい課題」を入力すると今度は「顧客が特定できている具体的な課題」が再び5つ出力される。最後はその5つの中から「アタックしたい(解決すべき)課題」を選び、それを個々人で検討していく、というものになる。

ChatGPTをエンジンにしたフィラメント独自のツールで課題発見を支援
ChatGPTをエンジンにしたフィラメント独自のツールで課題発見を支援

 新規事業アイデアを検討していくにあたって最も重要な鍵であり、しかし個人で発想することが難しいのが「課題の発見」でもある。それをChatGPTの力を借りることで効率良く見極められるのは、間違いなく生産性アップに結びつく。顧客情報を入力することが社内ルール上できないため、商工中金では通常業務での活用が進んでいないAIチャットだが、顧客情報を扱わない「ヒト☆カレ」のカリキュラムになら取り入れやすい。将来的な本業でのAI活用に向けた訓練としても役立ちそうだ。

「一緒に汗をかいてくれる」フィラメントの伴走型支援

 自らメンターとしても関わったフィラメントの角氏は、商工中金について、ビジコン参加者の「フットワークの軽さ」に驚いたという。Slackで早朝や夜中でもコミュニケーションしていることだけでなく、アイデア検証などのために「他社のインタビューにどんどん行く」ところも特徴的だったとのこと。「本業で多くのお客さんと接しているため、気軽にインタビューにいけるネットワークをすでにもっている」ことが、通常はそのネットワークを探すところから始めなければならない他企業との大きな違いになっていると見る。

 一方、垣沼氏はパートナーのフィラメントについて、数多くある新規事業コンサル会社のなかでも同社が「マルチタレントの人材を抱えている」こと、さらには「一緒に筋トレしてくれるような伴走型のスタイル」で支援してくれることが心強いと明かす。

 全国の中小企業を支援しているだけに、商工中金は物流、製造などさまざまな業種の企業とつながりがある。新規事業アイデアが顧客の業種に関係してくるケースもあり、メンタリングする側もあらゆる業種への理解が欠かせないことになる。その点、フィラメントには多様なバックグラウンドをもつメンターがそろっており、適切なアドバイスが得られるという。

 また、単なるアドバイスにとどまらず、同時にアイデア出しもするなど「ジムのトレーナーがベンチプレスを一緒に上げてくれるように、一緒に汗をかいてくれる」ことが大きな推進力にもなっているとのこと。ビジコンの1回目と2回目は若手社員や中堅社員が中心だったところ、3回目は管理職を含め幅広い役職の参加が目立つようになったとも話す垣沼氏。ビジコンを通じて、商工中金の風土が「新しいことにチャレンジしたいと言ったときに、後押ししてくれる文化になってきた」ことも実感しつつあるようだ。

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