貧しい地域の再開発が進むと、地価や家賃が高騰し、そこに住む貧困層の住民が追い出されることがある。ジェントリフィケーションと呼ばれるこの現象は、2012年にロンドンオリンピックの舞台となった地域でも起こっていた。若いホームレス向けのホステルに住んでいたシングルマザーたちは、突然退去を迫られ、生まれ育った街を捨てて家賃の安い地域へと引っ越すことを勧められる。だが、ロンドンの公営住宅には600戸の空き家があった。この理不尽に憤った女性たちは、公営住宅を占拠し勝手に住み始める——。
これは2014年に実際に起きた、占拠事件のあらましである。本書はその事件をモデルにした小説だ。
日本でも、商業施設建設のために宮下公園からホームレスが一掃された際、批判の声があがった。一方で、きれいになることは良いことではないかという声もあった。路上生活者を目立つ場所から排除してしまえば、多くの人の暮らしは良くなるように見えるかもしれない。だが、それは単に困難な状況にいる人を視界の外に追いやっているにすぎない。「見えないところへ行ってくれ」と、助けを求めることすら許さない姿勢は、社会的に弱い立場に立たされた人にも守られるべき尊厳があることを忘れてしまっているのだ。
草の根から「リスペクト」の大切さを訴える本書は、ジェントリフィケーションという現象の渦中にいる、生身の人間たちへのリスペクトを要求する。読み終われば、遠い地にいる人から自分自身まで、あらゆる人へのリスペクトを起動するきっかけとなるだろう。
今回ご紹介した「リスペクト――R・E・S・P・E・C・T」の要約記事はこちら。この記事は、ビジネスパーソンのスキルや知識アップに役立つ“今読むべき本”を厳選し、要約してアプリやネットで伝える「flier(フライヤー)」からの転載になります。
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