睡眠の質を下げる「夜中のスマホ習慣」を絶て--記者の方法

David Lumb (CNET News) 翻訳校正: 編集部2023年08月18日 07時30分

 数週間前、朝から頭がぼんやりして仕方ない日があった。原因を考えているうちに思い出したのは、前の晩にスマートフォンを寝床に持ち込み、夜中までネットを見ていたことだ。そこで、今後は別の部屋にスマートフォンを置いて寝ることにした。誘惑を回避するためだが、今度は家族からの重要なメールや電話を見逃してしまうのではないかと不安になった。

寝顔の絵文字が表示されたスマートフォン
提供:David Lumb/CNET

 寝室にスマートフォンを置くことにはメリットとデメリットがあり、個人の状況にも左右される。例えば、深夜でも呼び出しに対応する必要がある介護者や救急隊員は、睡眠中もスマートフォンを手元に置いておく必要があるだろう。夜中に家族から車で迎えに来てほしいと頼まれる可能性がある人も同じだ。多くの人にとって、スマートフォンは目覚まし時計にもなる万能ガジェットだ。ならば、なぜ寝室から締め出す必要があるのだろうか。

 これまでの研究から、夜中にスマートフォンを使う習慣がついてしまうと、日中の作業能力や心の健康に悪影響が生じる可能性があることが分かっている。こうした研究のほとんどは学生の行動を追跡したものだが、翌日に待っているのが小テストであれ、「Excel」シートの入力であれ、夜遅くまでブルーライトにさらされながら「TikTok」の動画やSNSの投稿を見続けていれば、翌朝にしわ寄せがいくのは当然だ。

 2018年、18万人を超えるオーストラリアの学生を調査した結果に基づき、深夜のスマートフォン使用が睡眠に与える影響をまとめた論文が「Sleep」誌に掲載された。著者は南オーストラリア大学の心理学教授Kurt Lushington氏だ。教授はその後も対象を成人に変えてスマートフォンと睡眠の関係を追い続けている。研究はまだ終わっていないが、「寝る前にデジタル機器を使用することは、睡眠の質と翌日のパフォーマンスの悪化に関連しており、これは他の研究結果とも一致している」と教授は言う。

 成人の場合、就寝前のスマートフォンだけでなく、深夜まで仕事や遊びでデジタル機器を使い続けることも同じような結果をもたらす可能性がある。「普通は寝ている時間帯にデジタル機器を使うことは、働き過ぎの状況が続いていることにほかならない。これはデバイスを寝床に持ち込むよりも、パフォーマンスの低下を招く可能性がある」とLushington教授は言う。しかし教授も認めているように、大人が寝室にスマートフォンを持ち込む理由は他にもある。入眠導入剤として、ポッドキャストや音楽を聞くことはその1つだ。

 最近、Lushington教授がオーストラリアで実施した寄宿生に関する調査では、寄宿舎の規則によって寝床にデバイスを持ち込むことを厳しく禁じられている寄宿生は、他の生徒よりも眠りの質が高いという示唆的な知見が得られた。

 夜間のデバイス使用を禁じるルールが役に立つ場合もあるだろう。しかし、今やスマートフォンは外界とつながるライフラインだ。このような「デジタル版へその緒」を断ち切ることは、たとえ寝ている時間帯だろうと難しい。では、筆者はいかにして夜にスマホを見る習慣をやめられたのか。その方法を紹介しよう。

暗い中で横になりスマートフォンを見る人
睡眠は眠りを助けることも妨げることもある
提供:Cavan Images/Getty Images

必要なのは(スマートフォンとの)少しの距離

 スマートフォンを所有している人はだいたい同じだと思うが、筆者も寝る時は手の届く場所にスマートフォンを置いていた。しかし、夜中に目が覚めてスマートフォンで時刻を確認すると、画面に表示されている通知も目に入ってしまい、すぐ眠りに戻るはずが突然10~15分のスマホスクロールの時間になることがよくあった。

 かといって、別の部屋にスマートフォンを置いてから眠ることを習慣化するのは難しかった。筆者にとって、スマートフォンは生活必需品であると同時に、ある意味では、身体の一部だ。家を出る時はポケットを触ってスマートフォンが入っているかを確認するように、寝室にスマートフォンがないと不安になった。

 心を落ち着かせるために、ベッドでスマートフォンを見ながら眠りにつくという怠惰な習慣を、別の習慣で置き換えることにした。つまり、入眠したい時間の1時間前になったらリラックスの準備をはじめ、画面を閉じて身体を拭き、歯みがきをして、眠りに落ちるまでは本を読むことを毎晩のルーティンにしたのだ。睡眠の質を上げたいなら、実証済みの方法はいくつもあるが、要点は決まったスケジュールを守ること、ニュースや会話、通知といった脳を刺激する情報を遠ざけることだ。寝室以外の場所にスマートフォンを置いたら、朝起きるまで動かさない。

 正直に言うと、筆者の方法には2つ、小さな抜け道がある。まず、寝室にスマートフォンはないが、「Apple Watch」を着けたまま寝ている。最大の目的は、設定した時間に起こしてもらうためだ。枕元には(高校時代から使っている)別の目覚まし時計もある。しかし、授業に遅れそうになって冷や汗をかいた記憶を呼び覚ます、けたたましいビープ音でたたき起こされるよりも、スマートウォッチの振動のほうがずっと穏やかに目覚められる。

 Apple Watchを「睡眠」集中モードにしておけば通知も届かない。筆者の場合、家族の緊急事態に対応できるように、家族からのメッセージは通知するように設定している。睡眠も記録しているので、そのためにもApple Watchははずせない。

 画面禁止ル−ルのもうひとつの抜け道は、枕元に置いた電子書籍リーダーだ。筆者は「Kindle Paperwhite」を使っており、画面はダークモードに設定している。E Inkのディスプレイは睡眠を妨げるブルーライトを発しない。目を刺激しないように、画面の色調も温かみのある色に調節している。こうすることで、消灯後も頭がさえない程度に読書を楽しめる。最大のメリットは、夜中に目が覚めてしまって電子書籍リーダーを開いた場合も、通知がなく、画面もまぶしくないため、すぐに眠りに戻れることだ。

たまにならスマートフォンを寝室に置いてもOK

 とはいえ、スマートフォンを近くに置いて寝る必要が生じることもある。2022年に「iOS」ベータ版のバグでアラームが鳴らず、午前7時の飛行機に乗り遅れたことがあった(テック系記者にとっては大失態で、「悲しみの5段階」を爆速で駆け抜けた)。現在は、出張の前夜は予定通りの時間に起きられるように、何重にもアラームを設定したスマートフォンを枕元に置いて寝ている。

 同様に、友人からの連絡を待っている時や、眠る直前まで友人と話し込んだりする時も、わざわざベッドから出てスマートフォンを別の部屋に置きに行ったりはしない。それでも数週間にわたってスマートフォンを別の部屋に置いてから寝るようにしているうちに、少なくとも就寝前のルーティンの開始後は、手の届く場所にスマートフォンがなくても気にならなくなり、やがて別の部屋に置く必要もなくなった。

 しかし、夜以外の時間帯は依然としてスマートフォンが手放せない。ふと気付くと、ロックを解除してSNSのタイムラインをスクロールしたり、インターネットを眺めたりしている。誰かから連絡が来れば即座に反応を返すので、いつでも連絡がとれる相手だと思われている。結局のところ、就寝時は画面を見ないというルールを徹底することで筆者が治そうとしているのは、スマートフォンから無限に湧き出るコンテンツへの依存の症状であって、原因ではない。

 心の健康のためには、スマートフォンの使用時間そのものを減らす必要があるのだろう。しかし、これは至難の業だ。2018年に「Sleep」誌に掲載された論文が指摘したように、メッセージやソーシャルメディアアプリを通じて友人や見知らぬ人と交流することには、社会的つながりを強化するというプラスの側面もある。新型コロナウイルスの拡大を食い止めるためにロックダウン措置が講じられ、デジタルプラットフォーム以外に人と交流する場がなくなった時期はもう終わった。しかし筆者にとっては今も、スマートフォンは全国(そして全世界)にいる知り合いとつながるための扉だ。実際、こうしてつながりを維持することが、筆者の場合は過去数年間の困難な時期を乗り切る助けとなった。

 しかし、自分自身にも繰り返し言い聞かせているように、ソーシャルメディアの投稿や友人からのメッセージを一時的に遮断することはできる。朝になってもメッセージは消えないし、十分な休息を取れば、もっとコミュニケーションを楽しめるようになっているはずだ。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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