「後進国だったことに愕然」--岸田総理が日本のデジタル化へ決意、マイナ会見で表明(発言全文)

 内閣総理大臣を務める岸田文雄氏は8月4日に会見を開き、「マイナ保険証」をめぐる混乱への対応、そして日本のデジタル化への決意を表明した。

内閣総理大臣を務める岸田文雄氏(首相官邸YouTubeより)
内閣総理大臣を務める岸田文雄氏(首相官邸YouTubeより)

 まず、マイナ保険証については、2024年秋を予定する紙の健康保険証廃止、およびマイナ保険証へ一体化する方針を維持すると明かした。

 一方で、マイナ保険証を保有していない人全員に資格確認証を発行し、その有効期間やカードの形状は現行の保険証を踏まえると表明した。

 なお、2024年秋という紙の保険証の廃止時期については「国民の不安払拭が最前提」としたうえで、「さらなる期間が必要と判断される場合には必要な判断をする」とも述べ、延期に含みを持たせた。

岸田総理、日本のデジタル化へ決意(発言全文)

 岸田総理はマイナ保険証への対応と合わせて、日本のデジタル化への決意を表明した。

──以下岸田総理の発言(要約含む)

 「2020年に私は党の政調会長としてコロナとの戦いの最前線に居た。その際に我が国のデジタル化の遅れを痛感した。

 国民への給付金や各種の支援金の給付遅れ、感染者情報をFAXで集計することによる保健所業務の逼迫、接触確認アプリやワクチン接種システムにおける混乱、欧米諸国や台湾、シンガポール、インドなどで円滑に進む行政サービスが我が国では実現できないという事実に直面し、我が国がデジタル後進国だったことに愕然とした。

 このデジタル敗戦を二度と繰り返してはならない。主要先進国に大きく遅れを取っている我が国行政のデジタル化の遅れを取り戻したい。この強い思いから、デジタル田園都市国家構想、マイナカードの早期普及を進めてきた。デジタル田園都市国家構想については5G、光ファイバー、海底ケーブルなどデジタルインフラの全国展開を前倒しし、交付金も創出。農林水産業、観光、国土強靭化、医療、教育などの分野のデジタル実装を支援し、横展開を強力に進めていく。

●なぜマイナカードが必要なのか

 並行してマイナンバーカードの早期普及についても縦割りを廃して担当大臣が一致協力して取り組んできた。国民の皆さんのご協力によって普及率は70%を超えた。

 なぜマイナカードの早期普及が必要なのか。それは、多様な公的サービスをデジタル処理するための公的基盤を欠いていたことが、コロナ時のデジタル敗戦の根本的な原因だったと政府全体で認識したからだ。

 少し詳しく説明すると、私達の普段の暮らしでは、免許証やパスポートが身元確認の役目を担っている。では、顔が見えず、なりすましも簡単なオンラインの世界で、身元確認や本人確認をするにはどうすればいいか。その役目を担うのが電子証明書を内蔵しているマイナンバーカードだ。それゆえに、マイナンバーカードはデジタル社会のパスポートと呼ばれている。

 総理大臣の職責を担って以来、世界に伍するデジタル先進国の実現、そして個人や中小企業のさまざまな事業に配慮したきめ細やかな公共サービスを全国津々浦々で行える公的基盤を早く整えたいという、強い思いを持って政策を進めてきた。

 実際に一部の自治体では先進的な取り組みが始まっている。先週視察をした福岡市では、マイナンバー制度を活用しノンストップ行政の実現を掲げ、9割以上の手続きのオンライン申請が可能になっている。同時に高齢者の方々のきめ細かい相談体制も充実させ、誰一人取り残されない行政サービスに取り組んでいる。群馬県でもマイナカードとSuicaの連携により実現した地域交通の割引サービスを視察した。また、介護施設でもセンサー技術を活用した見守りや蓄積データの活用よって良質な介護が実現している現場を拝見した。

 このように、生まれだしているデジタル化の流れや先駆的な取り組みを、速やかに全国展開し、人口減少や担い手不足が深刻化する中、医療、介護、子育て支援、行政サービス、地域交通などといった地域の社会課題をデジタルで解決していく。

●マイナ保険証について

 次にマイナカードと健康保険証について。現行の保険証を2024年秋に廃止するの乱暴はではないか。廃止ありきではなく国民の理解が必要だ。という指摘を国民や国会の審議でもいただいている。現場の医療関係者との意見交換でも、安心してすべての国民に受診しただける環境を維持するとともに、デジタル化を進めることが重要との指摘を受けた。

 私自身、マイナカードをめぐる事案発生以来、現行の保険証の廃止は、国民の不安払拭のための措置が大前提であると申し上げたこともあり、こうした国民の声や現場の声を重く受け止め、不安払拭を最優先とした対応を取っていく。

 必要な時に必要な医療にアクセスできる医療保険制度は国民生活の安心そのものであり、その信頼を揺るがすことはできない。まずは国民の不安払拭と国民1人1人にデジタル化することによる利便性を理解していただくことが重要。

 そのため、現行の健康保険証を廃止する際にも、すべての国民が円滑に医療を受けられるように、マイナ保険証を保有していない方全員に資格確認証を発行し、その有効期間やカードの形状も現行の保険証を踏まえたものとするなど、きめ細かい対応を徹底する。これにより、マイナ保険証を保有していない方も、これまで通り保健医療を受けることができる。

 政府としては、マイナ保険証への移行に際して、マイナ保険証のスマホ搭載や電子処方箋の普及、新たなマイナンバーカードへの移行を着実に進め、マイナ保険証のデジタル環境を整備していく。

 同時に受診履歴にもとづく質の高い医療、重複投薬の防止、転職等の際のシームレスな保険証の移行など、マイナ保険証によるメリットを国民に実感していただける実効的な仕組みを作る。こうしたデジタル化の取り組みにより、国民に選ばれるマイナ保険証にしていくことに全力で取り組む。

 デジタル大臣には関係大臣と連携して、来週8日に総点検の中間報告と再発防止とあわせて、こうした内容を盛り込んだ対策をまとめるよう指示をした。

●世界最先端のスマート行政府を実現する

 マイナンバーカード関連事案の総点検と再発防止、そして信頼回復のための対応を行いつつ、この先の日本が目指すもの、それは世界最先端のスマート行政府の実現だ。

 そのためにデジタル基盤と政府の仕組み、双方の改革に取り組んでいく。デジタル基盤では、個人、法人、不動産、のオンライン認証の仕組みや、プライバシーをしっかりと守れるデータ流通基盤の整備、約1700の自治体が共有できる標準業務プログラム群の整備を進める必要がある。

 予算の効果の見える化に向けて、国の予算事業それぞれにIDを振る取り組みも重要だ。一方で政府の仕組みについては、アナログを前提とする昭和の時代に確立し、これまで機能してきた我が国の制度や行政組織、国地方の役割分担などをデジタルの時代に合わせて見直す必要がある。

 デジタルの力を使い、公務員の人数を増やさずに多様化するニーズにきめ細かく対応できるようにする。こうした『小さくて大きな政府』にするための令和版行財政改革に取り組む。

 その際に何よりも大切なのは、利用者基点での業務や制度の設計だ。行政サービスの利用者としての国民に直接向き合っている自治体、介護、教育、産業等の現場で奮闘する人々が、国民の生の声を聞き、政策を磨き、デジタルを活用してきめ細かくサービスをお届けできる、そうした利用者基点の視点を中央官庁に徹底したいと考え、私自ら地方の意見を伺いに行っている。マイナンバーカードの信頼回復に目処をつけ、この秋から令和版デジタル行財政改革を始動する準備を進める」(岸田文雄氏)

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