家具のサブスクリプションサービスとオフプライスマーケットを展開するソーシャルインテリアは8月4日、シリーズCラウンドを終了し、合計約20億円の資金調達を実施した。家具のサブスクリプションサービス「サブスクライフ」と家具のオフプライスマーケット「サブスクライフ オフプライス」のシェア拡大に加え、新サービスをリリースし、さらに事業を加速させていく考えだ。
8月にリリースするのは、家具業界のDXを促進するための業務管理クラウドサービス。新サービスと、ソーシャルインテリアのこれまでのサービス展開、さらに今後の展望について、CEOの町野健氏に話を聞いた。
ソーシャルインテリアは2018年、日本で初となる家具のサブスクリプションサービス「サブスクライフ」を立ち上げる。きっかけは、町野氏が参加した米国のベンチャーイベントだったという。「イベントでは100社くらいのプレゼンを聞いたと思います。そこで、ソフトウェア以外にハードウェアのサブスクリプションサービスもあるのを知って、面白いなと。当時はまだ、日本でサブスクという言葉が定着する前でした」と、町野氏は当時を振り返る。
「また同じ時期に、自分が引っ越しをするタイミングが重なったんです。そこで目黒通りのインテリアショップなどを見てまわったところ、部屋に置きたい質のいい家具ってすごく高いなと思って。一式そろえるとなると、50~60万円にはなってしまいます」(町野氏)
一方で、家具を販売している店舗側からは、集客や利益を出すことの難しさを聞いた。ここで、米国で参加したベンチャーイベントのサブスクリプションサービスと、家具業界が結びつく。いいものを安く使い始められ、それを捨てずに長く使い続けることは、ライフスタイル的にも望ましいと考えた。家具業界でイノベーションを起こせるのではないかと思いつき、ブランド家具やデザイン家電のサブスクリプションサービス「サブスクライフ」を立ちあげた。
仕入れに合わせてキャッシュが先に出ていくハードウェアのサブスクリプションサービスの特性上、資金繰りに苦労した時期もあったが、サービス開始以降は順調に成長。同時に、日本でも徐々に、月額課金制や定額制を意味する「サブスク」という言葉が浸透し、一般的になってくる。
2022年3月、社名を前身のsubsclife(サブスクライフ)から、現在のソーシャルインテリアに変更した。町野氏は「当社はサブスク自体をやりたいのではなく、サブスクはあくまで手段。よいものを安く使い始められ、捨てずに長く使い続けるという、事業本来の目的を体現した社名にすべきだと考えた」と、社名変更についての背景を語る。
ソーシャルインテリアは家具のサブスクリプションサービス以外に、メーカーアウトレット品や中古家具などを販売する「サブスクライフ オフプライス」も展開している。
「家具をレンタルしていると、それが返却されるタイミングがあるわけですが、いい家具って5年使ってもそんなにだめにならないんです。家具自体はすごくよいものなので、廃棄したくない。だからそれを再販する、オフプライスというサービスも始めました。レンタルしていた中古家具以外に、家具店での滞留在庫品なども扱っています」と、町野氏はよいものを長く使う、循環させるサービスにこだわりを見せる。
コロナ禍を経たあとは、人気の家具や家電に少しだけ変化が見えた。
「コロナ禍以降のオフィス商品で人気があるのは、フォンブース、それからロッカーなどです。ロッカーは、フリーアドレスのオフィスが増えて、個別席に荷物を置かないことが増えたから。個人向け商品では、ブランド物の家具や家電は根強く人気があります。ほか、自宅で仕事をする人が増えたので、個人向け商品でもワークチェアに人気が集まるようになりました」(町野氏)
ソーシャルインテリアのオフィス構築支援では、デスクやワークチェアなどの基本のラインアップに加え、フォンブース、ロッカー、観葉植物、アートまで、オフィスに必要なもののほぼすべてをそろえているという。社内外で20名以上のデザイナーが在籍し、内装デザインや家具のコーディネートもサポートする。「オフィスは1回作って終わりではなく、移転や社員増加に伴うリニューアルなどを経て、変化し続けるもの。その度に毎回家具を探したり、返却したりするのは大変です。我々はそこもサポートをしているので、リピート率もすごく高い」と、町野氏は自社のサービスについて話す。
ソーシャルインテリア自体も、2022年にオフィスを移転した。 WeWork the ARGYLE aoyamaの専用スペースに備え付けの家具を、選りすぐりの家具にアップデートし、観葉植物やアートも追加。環境の再構築によって、社員の満足度や出社率にも変化があったという。
8月には、家具業界に特化した業務管理クラウドサービスをリリースする。家具のサブスクリプションサービスを展開する中で、家具の受発注の複雑さや使いづらさを実感したことが、新サービスをリリースするきっかけになった。
「家具はかさばるので、それほどたくさんの在庫を持つことはできないんです。そうかと思えば、一度に数百とか、大量に売れることもある。加えて、オフィスの移転日などは決まっているので、その日に家具が届かないなんてことは極力なくしたいですよね。在庫の確保がとても重要なんです。しかしこれまでは、在庫をリアルタイムで見ることはできませんでした。メーカーなどに電話をかけて、口頭で在庫を確認していたんです」と町野氏は話す。
新サービスでは、日本中の家具のデータベース化を進め、商品の横断的な検索、在庫確認や発注ができるようにする。これにより、家具の発注に関連するコストを削減できるとしている。すでにベータ版を一部のユーザーが利用しており、好評を得ているという。サイトのデザインにもこだわり、見やすさのほか、張り地を選ぶなど、細かい条件でも検索できるよう工夫を重ねた。
現在の事業における割合は、法人向けの家具のサブスクリプションサービスが8割近くを占める。今後は家具業界に特化した業務管理クラウドサービスがここに加わり、法人向けサブスクリプションサービス、個人向けサブスクリプションサービスとの3本柱となる。
「新サービスのリリースでソーシャルインテリアを経由した取引が増えることによって、家具業界の業務をより効率化できると思っています。それが、メーカー側の売上増や個人の満足度向上につながる。家具業界のプラットフォーマーとして、メーカーにとっても個人のユーザーにとっても、嬉しい世界を実現していきたい」と、町野氏は今後の展望を語った。
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