東日本電信電(NTT東日本)は7月26日、プランティオとタニタの3社で、都市部における「食」と「農」と「健康」の課題解決を目的とした新たなアーバンファーミング事業に向けた食農事業について、協業を開始すると発表した。
近年、国内の農業分野において、食糧自給率が40%を下回るなど食の安定供給に対するリスクが深刻な課題となっており、国全体での食料生産基盤の強化が求められているという。
特に都市部の農業においては、耕作地の狭小・分散化、個人農家の収益性の改善、生産緑地の維持、都市部の食料自給率の改善など、多くの課題がある。
こうした中、世界で急速に広がるアーバンファーミング(都市型農)の文化を国内で醸成する動きが注目されているという。
アーバンファーミングは、消費地の近くで生産できることから、地産地消・旬産旬消で新鮮な野菜を環境負荷の低いプロセスで供給可能。また、地域コミュニティの創出、景観形成や生物多様性の維持、避難場所や環境緩衝地としての防災機能などが期待されている。
今回3社は、プランターを使うことでビルの屋上や舗装地などさまざまな形態の遊休地に開設できる、都市型スマート農園の構築と検証を推進。
さらに、同社が有するICTを活用した営農支援の実績とノウハウ、通信環境の構築で培ったエンジニアリング力に加え、プランティオの持つIoTを活用した野菜栽培の仕組みとシェアリング型の農園運用のノウハウ、タニタの健康づくりや食のノウハウを融合。
同農園を活用し、新規就農に繋がる機会の創出、食農への関心人口増加や地域経済の活性化に繋がる新たな体験や仕組みを創造する新たなアーバンファーミング事業の実現を目指す。
同協業の第1弾として、タニタ本社敷地内に本事業のテストフィールド「タニタふれあい農園」を開設。8月1日から2024年3月31日の予定で実証実験を開始する。
具体的には、プランティオが独自開発したIoTセンサー「grow CONNECT」ほか5つのセンサーを活用。
前後一週間の天候データと対比して予測するAI技術である「Crowd Farming System」と、専用のアプリ「grow GO」を通じて、水やりや間引きのタイミングなどの栽培アドバイスを行うことで、誰でも手軽に野菜を栽培できる環境を構築する。
テストフィールドでは、同アプリの評価と開発へのフィードバックを実施する予定。
また、grow GOは農園の利用者同士がコミュニケーションを取れる機能も備えており、リアルとオンラインの両面でコミュニティイベントの開催を想定。
収穫した野菜は、タニタ食堂やタニタカフェのレシピを基に調理して参加者に提供したり、バーベキューパーティーを開催したりするなど、コミュニティを活性化させるさまざまなアクティビティの展開を予定する。
同社では、地域住民を対象に、タニタふれあい農園におけるコミュニティやアクティビティへの参加を募り、参加者の行動態様や事業性を検証するという。
さらに、タニタふれあい農園で利用者が行うアクティビティ(水やりや土寄せ、追肥、間引きなどの農作業)は、それと意識することなく体を動かすエクササイズになると考察。
農作物をつくる喜びや、コミュニティの仲間とつながる楽しさをフックに、自然と健康づくりを促す「健康コンテンツ」となることから、健康増進のアプローチ手法として、可能性も検証するという。
加えて、タニタふれあい農園において栽培した野菜の近隣飲食店での消費、アプリを通じた栽培活動による特典の付与、周辺地域の施設への誘客など、地域経済圏の活性化を図る仕組みづくりも検討。
利用者や導入企業のみに負担が集中することのない、持続可能な農園運営と都市部営農に貢献するモデルを目指していくとしている。
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