モトローラの「razr+」からスマホメーカー各社が学ぶべきこと - (page 2)

David Lumb (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2023年07月27日 07時30分

 これは、クラムシェル型の折りたたみ式に限った話ではない。スマートフォンメーカー各社は以前から、メインディスプレイ以外での操作機能を追加するようになっている。本体の側面をウォーターフォール型の曲面にして、そこで通知の着信を知らせるのもその一例だ。「Nothing Phone (1)」でも、背面のLEDライトを使用してアプリやメッセージの通知を点灯して知らせる「Glyph Interface」(グリフ・インターフェイス)を採用しており、発売されたばかりの「Nothing Phone (2)」ではさらに細かく設定できるようにしてその機能を強化している。従来型スマートフォンの背面に追加したディスプレイで、クラムシェル型折りたたみ式からどのような機能を踏襲できるかは容易に想像できる。ASUSの「ROG Phone」スペシャルエディションでもそれは同じだ。

Razr+
提供:Lisa Eadicicco/CNET

新しく得たもの、失われたもの

 2019年の初代折りたたみ式Razrモデルは、2004年に初登場してMotorolaの象徴ともなった折りたたみ式携帯電話とよく似ていた。ばね式ヒンジを採用していたため、フリップフォンというその名にふさわしく、パカッと閉じられる折りたたみの操作感が、魅力的な選択肢になっていたのだ。

 ところが、それがプレッシャーになって、ディスプレイは完全に開いた状態か閉じた状態しか選択できず、途中まで開いた状態にするのが難しかった。Motorolaは、懐かしさがファンに受けると踏んでいたが、そこに登場したサムスンのGalaxy Z Flipは、ディスプレイをあらゆる角度で開くことができた。残念ながら、柔軟性が懐かしい思い出を上回った。新しいrazr+では、途中(90度)まで開いた状態にしておける機能がひっそりと導入されている。

 だが、Razrシリーズの進化で一目瞭然なのは、そのデザインだ。2019年のRazrでは、エッジがホタテ貝のように湾曲した本体上半分が下半分よりも短くなっており、閉じると、下部に厚みのある下半分にうまく収まるように作られていた。2004年に発売された初代折りたたみケータイである「RAZR」のデザインを思わせるしゃれた外観だった。だが、分厚い「アゴ」の部分は、スピーカーを補強するエコーチェンバーとしての機能も兼ねることになっていたのだが(筆者には全く気付けないレベルだった)、形状より機能が優先されていた時代でも不格好に見えた。

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2019、2020年のRazrは2004年初代モデルの曲線やカットアウトを踏襲していた
提供:Patrick Holland/CNET

 それ以来、Razrシリーズは徐々に、角が丸く、本体の上半分と下半分が均等になるデザインに移ってきている。子ども向けSF本シリーズ「Animorphs」の表紙のように面白かったスマートフォンの外観が、その斬新さを失い、現在の市場に出回っている他のクラムシェル型折りたたみ式に近づいているのだ。Motorolaのrazr+と、うわさされているサムスンの「Galaxy Z Flip5」とを区別しようとしても、コウモリの翼のようなMotorolaの「M」ロゴを背面に見つけない限り、判別は難しいかもしれない。

 2019年に発表された折りたたみ式Razrが、かつての折りたたみケータイの伝統を思わせるデザインだった理由は、容易に理解できる。古いものでも、新しいものとして蘇ることができると消費者に知ってもらいたかったのだ。だが、それから4年が経ち、クラムシェル型はどれも同じようなデザインになってきた。

 つまり、ここからは遺憾ながら次のような教訓が得られる。早い段階で市場に参入した企業は、魅力的で斬新なデザインコンセプトを導入できる。しかし、ちょうど初代の「iPhone」が物理キーボードの付いた携帯電話の死を告げたように、かつて差別化されていたデザインも慣例によって最終的には平坦化されていき、面白みのない似たり寄ったりのデザインになるということだ。背面カメラの配置のバリエーションを別にすると、最近ではほとんどどのスマートフォンも見かけは変わらなくなっている。

 一方、時機をうかがっていたメーカーにとっては、賢明な教訓もある。先駆者によって、折りたたみ式スマートフォンが小規模ながら堅実に成長する製品として定着してきた今、新規参入企業が名乗りをあげるときには、似たような折りたたみ式の黒い長方形(あるいは長方形を組み合わせた形状)をまねるしかないということだ。

 ただし、懐疑的な態度で、クラムシェル型折りたたみ式に納得できるまで待っていた層には朗報がある。Motorolaは、これまでで最も期待できる機能を搭載して強化した、最先端のモデルを発表した。つまり、カバーディスプレイの大型化だ。ユーザーが望んでいるものを提供すれば満足度は高いということに、賢明なブランド各社は気付けるだろう。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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