パナソニックがインドで就職を支援--受講料から食事まで無償の「アンカースキルスクール」とは

 パナソニック重点事業の1つである海外電材の中でも、重点3カ国に位置付けられるインド。主要拠点の1つとなるハリドワール工場の近くでは、「アンカースキルスクール」を開校し、電材パーツの成形や組み立てやスマートフォンの修理など教え、起業や就職を支援している。

「アンカースキルスクール」
「アンカースキルスクール」

 校名にもなっている「アンカー」は、パナソニックが2007年に買収した、インドの配線器具会社「ANCHOR Electrical」から名付けたもの。設立から60年を迎えるという老舗企業の名前をつけることで、地元での浸透を図る。

 アンカースキルスクールで学べるのは16〜35歳までの若年層。入学試験はないが、2段階のカウンセリングと適正を測るためのスクリーニング試験が実施され、年間500人が受講する。「射出成形と圧縮成形」「スイッチとMCBの組み立て」「スマートフォン修理」「家電修理」の4つのコースを用意し、受講期間は、成形、組み立てが2カ月、スマートフォン、家電修理が3カ月だ。

教室には修理に使う工具などのほか、家電なども並べられていた。家電を修理して使うのが一般的というインドで修理の技術を学べる点は大きいという
教室には修理に使う工具などのほか、家電なども並べられていた。家電を修理して使うのが一般的というインドで修理の技術を学べる点は大きいという

 インドは14歳まで義務教育を受けられるが、その先の進学を希望しても、家庭の事情や金銭的な問題で進学できなかったり、進学しても中退してしまったりと、進学、就職の流れが途切れてしまうことがあるという。アンカースキルスクールは、学ぶ場を提供することで、その先の就職を支援するというもの。卒業後はパナソニック関連の工場に就職するほか、起業や別の家電メーカーの職に就くなど、幅広い選択肢を用意する。

 授業内容は実践的で、使用する教材はすべて独自のもの。パナソニックの工場で使っている機材をそのままスクールに持ち込むなど、即戦力を育てる。パナソニックの社員もアドバイザー的に授業に参加することもあるというが、基本的に講師はすべて工学系の専門学校などで教職に就くプロが担う。

受講風景。ハリドワールの工場を再現している
受講風景。ハリドワールの工場を再現している
使用している機材もすべて工場と同じもの
使用している機材もすべて工場と同じもの
受講生に配られる教材はすべて独自の内容になっている
受講生に配られる教材はすべて独自の内容になっている

 卒業生は、機械オペレーターや組立工などのほか、サービスセンターのオペレーターなどに就いているとのこと。スマートフォンや家電の修理店を立ち上げて起業する人も多く、ハリドワール周辺の平均月収が約8500ルピーと言われるなか、月3万ルピーを稼ぐケースもあるという。

 パナソニック エレクトリックワークスインドでは、CSR活動の一環として、アンカースキルスクールを運営しており、受講生には、受講料、教材費、交通費から受講中の食事まで無料で提供する。受講生を集めるため、地元の新聞社とともにチラシを配布したり、学校を回るなどの広報活動もしているというが、最近ではスマートフォンの修理コースで定員を上回るなど人気コースも出てきており、定員に達した場合は次回のコースに回ってもらうなどしているという。

アンカースキルスクールの卒業生が取材に応じてくれた
アンカースキルスクールの卒業生が取材に応じてくれた
受講生に提供される教材などを入れたバッグ
受講生に提供される教材などを入れたバッグ

 インドで展開しているのはハリドワールのみで、今後も他地域に展開する予定はないとのこと。ただ、卒業生が就職した企業からは「今後もアンカースキルスクールの卒業生を雇用したい」というメールが来るなど好評で、卒業生からも「技術職に就ける機会が得られた」などの声が寄せられていることも受け、アンカースキルスクールのカリキュラムを別の形で展開することは検討しているとのことだ。

取材協力:パナソニック エレクトリックワークス社

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