博報堂と三井物産は7月10日、環境に配慮した商品、サービスの提供を事業とする「Earth hacks株式会社」を設立したと発表した。
設立日は5月16日で、博報堂と三井物産が50%ずつ出資する。博報堂に入社、三井物産への出向歴を持つ関根澄人氏が代表取締役社長 CEOを務める。
二酸化炭素排出量の削減率を独自の基準で表示する「デカボスコア」の運営や、マーケティングの支援、ECサイトの運営と商品の販売、見本市やイベントの開催などを実施していく予定だ。
2021年10月、2030年度までに日本の温室効果ガスを2013年度比で46%削減するなどを表明した「地球温暖化対策計画」が閣議決定され、家庭部門の排出量を66%削減することなどが掲げられている。
また、博報堂が2021年9月に実施した調査によると、日本の生活者に脱炭素の意識が浸透しつつあるという。次の消費を担うZ世代も高い関心を持ち、「自分たちが取り組むべき課題」としての認識が広がる一方で、実践に移せている生活者は未だ限定的で、多くの人が「何をすれば脱炭素に貢献できるか分からない」と感じているとしている。
こういった、生活者に向けた具体的な情報や選択肢の提供が求められている状況を受け、博報堂の新規事業開発組織「ミライの事業室」と三井物産は2021年11月、共創型プラットフォーム「Earth hacks」(アースハックス)を開始。2022年1月から活動を本格化させ、デカボスコアやウェブサイトの運営、学生と企業が取り組むビジネスコンテストプログラム「Earth hacksデカボチャレンジ」の実施などに取り組んできた。
デカボスコアでは、スウェーデンでCO2e相当量計算サービスを手掛けるDoconomyの協力のもと、二酸化炭素相当量に換算した“CO2e”をそれぞれの対象ごとに算出。削減率を比較し、スコアにして運営している。
Earth hacks 代表取締役社長 CEOを務める関根澄人氏は、「さまざまな調査、ヒアリングをした結果、『貢献実感』がないと脱炭素のアクションを始めづらい、といった声があった。また、世界的なソリューションを活用して身近な商品やサービスの二酸化炭素の排出量を提示しても、多いのか少ないのかなどが理解できない」と、独自スコアとなるデカボスコアを運用する理由を説明した。
デカボスコアは、脱炭素という意味の単語“Decarbonization”から命名。「サステナブルやエシカルという言葉は、生活者に『少し無理をしなければ』『自分とは縁遠い』など(の気持ちを)抱かせる言葉となりつつある。“無理なく楽しくできる脱炭素”という思いを込めた」(関根氏)という。
最短2週間で納品可能で、ロゴは1年間有効。すでに70社を超える企業が導入している。例えばトヨタ自動車は、自動車の製造工程で発生する端材を捨てずにIDカードホルダーやペンケースなどに生まれ変わらせるアップサイクルへの取り組みから算出。また、日本航空は、エアバスの省燃費機材「A350型機」を活用した特別フライトの取り組みから算出している。
そのほか、UCCグループのユーシーシーフードサービスシステムズが展開する上島珈琲店とは共同で、タンブラー利用によるCO2e排出量の削減率に合わせてドリンクをお得に購入できるサービスも計画、実施したという。
今後は、より多くのビジネスパートナーと、さらに大きな規模での連携を目指す。一例として味の素は7月10日から、フードロス削減の実践喚起を目的とした専用サイト「TOO GOOD TO WASTE~捨てたもんじゃない!~」内で紹介するフードロス削減レシピに、デカボスコアを記載。大日本印刷は「DNP環境配慮パッケージングーGREEN PACKAGING」へデカボスコアを導入し、パッケージへのスコア表示を促進するという。
加えて、「Yahoo!ショッピング」において、デカボスコア導入製品を購入できるEarth hacksモールを出店。生活者との接点強化を図るとしている。
関根氏は、3月時点で11%だった認知率を2026年3月に60%へ引き上げると目標を掲げる。2030年には1000社、1万商品以上をデカボスコア化しつつ、スコア算出料やロゴの使用料、イベントやECの売り上げなどを積み上げて年間売り上げ30億円を狙いたいと話す。一方で、「“これをやりたい”というものを中心に据えるのではなく、あくまでベースとして、生活者が多くのアクションを起こせるサービス、事業をつくりたい」とした。
また、Earth hacksは同日、モデルなどで活躍するトラウデン直美さんをCDO(チーフ・デカボ・オフィサー)に任命。伝える、表現するというアンバサダー活動にとどまらず、アクションを起こすために必要なモノ、コトや、どの商品に付けるべきかなどのアイデア出しも担当するという。
CDOに任命されたトラウデンさんは、「アワードやポイントなどを企画したり、アンバサダーの方々の意見を取り入れたりしながら、さまざまなことをやってみたい」と抱負を語った。
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