シャープが生き残るために選んだ道--2023年度は全力で黒字化に取り組む - (page 2)

スマートオフィス事業「テーマはビジネストランスフォーメーション」

 また、エナジー事業については、新規事業として「カーボンニュートラルに向けた新規技術による新たなニーズの開拓」をあげ、成長事業では「スペースソーラーで宇宙から車載市場までを開拓」、「家庭のカーボンニュートラルに向けたEV連携およびS-ZEHでの事業拡大」の3点を掲げた。また、既存事業では「太陽光のクリーンな電力をAIにより効率的に活用」、「ASEAN地域への再生可能エネルギーの普及、拡大」に取り組むとした。

 スマートオフィス事業については、シャープ 執行役員 スマートビジネスソリューション事業本部長の河村哲治氏が説明。「テーマはビジネストランスフォーメーションであり、ここには自らの事業変革と、顧客の事業変革の2つの意味がある」とした。

 既存事業として、複合機やPCの取り組みをあげ、「顧客接点や販路が最大の資産であり、76カ国135拠点、1900社以上のパートナーを通じて、50万件以上の顧客に製品やソリューションを提供している」とする。また、新規事業では、これらの顧客基盤を活用しながら、ITソリューションサービス事業、映像ソリューション事業、ロボティクス事業に取り組む方針を示した。

 ITソリューションサービス事業では、複合機やPC、ディスプレイをネットワークに接続して、これらを一括で管理。サイバーセキュリティ対策やセキュリティ保護の提案も行うという。「ワークプレイス全体に向けて、ワンストップでサービスを提供していくことになる。欧米を中心に、ITサービスプロバイダーの買収によって販路を拡大しているほか、オールインワン型サブスクリプションモデルによる提案も加速したい」と語った。

 映像ソリューション事業では、液晶ディスプレイやプロジェクターに加えて、超省エネサイネージと位置づける「ePoster」や、サイネージ広告の視聴分析ソリューション、コンテンツ配信サービスなどの付加価値ビジネスを推進する。

 ロボティクス事業では、省人化や省力化を支援することで人材不足の課題を解決することを目指す。工場の自動化装置や倉庫の自動搬送装置などを展開。今後は工場、外食店舗、物流を主要ターゲットに事業を推進する。具体的には、EVの製造分野に向けた特注設備の展開や、店舗における配膳ロボットの提案のほか、物流倉庫では500台までの自動搬送機を最適配置するシステムの提案を進めるという。

 3つめのユニバーサルネットワーク事業は、シャープ Universal Network事業担当の中野吉朗氏が説明。「AQUOSブランドのテレビおよびスマホを核とした事業体であり、映像技術と通信技術を備えている。ローカル5Gやプレ6G、衛星通信技術といった次世代通信技術にも取り組んでいる。既存資産と次世代通信技術を融合し、どこでも、いつでも、つながる環境を実現する」と述べた。さらに、「ここに、スマートライフ&エナジー事業やスマートオフィス事業が持つ商材を組み合わせて、One SHARPによる人、空間、社会をつなぐソリューションを創出する役割も担う」とした。

 また、ディスプレイに関しては、5.7型から120型までの幅広いラインアップを持つ強みを生かして、オートモーティブやXR(VR/AR)、IoTのほか、インタラクティブな新世代インターフェースを提供するDirect to Usersに取り組む姿勢も明らかにした。

nanoLEDを2025年度から量産

 デバイス事業グループのディスプレイデバイス事業に関しては、シャープ Display Device事業担当兼Panel-Semicon研究所長の桶谷大亥氏が説明。「ディスプレイデバイス事業は、将来を見据えたカテゴリーシフトに取り組んでいる」と前置きし、「低収益事業を縮小し、車載やVRを中心とした高成長および高収益事業へのカテゴリーシフトに加えて、次世代自発光ディスプレイであるnanoLED や、反射型液晶や電子ペーパーによって実現するePoster、LC-LHによる次世代太陽電池といった新規ビジネスの拡大にも取り組む」と述べた。

 既存事業の強化では、車載分野において、運転席から助手席までをカバーするスーパーロングディスプレイなどにより、EVや自動運転化への対応を強化。成長が期待されるメタバース分野では超高精細ディスプレイの開発を加速する。また、新規事業の創出では、nanoLEDを2025年度から量産する計画を示しながら、「既存のLCD設備や工場を活用でき、低コスト化が可能になる強みがある」としたほか、ePosterを2024年度から量産化し、超低消費電力ディスプレイと次世代太陽電池との組み合わせによりメリットや、電源線や一次電池が不要である特徴を生かした提案を進めるという。

 桶谷氏は、「今後は、リソース配分を見直し、低成長事業のリソースを、新規事業にシフトする」とも述べた。

ディスプレイデバイス事業の方向性
ディスプレイデバイス事業の方向性

 続いて、デバイスビジネスコミッティーの取り組みとして、シャープ 常務兼シャープディスプレイテクノロジー社長の王建二氏が登壇した。

 「シャープは、ディスプレイやカメラ、レンズ、センサー、ディスプレイといった光学エンジンで優れたテクノロジーを持ち、長年の実績があり、電気製品や自動車、医療などの分野で活用されている。光学エンジンソリューションは、次世代においても新たな価値を提供することを目指す。それぞれのデバイスを融合することで、グリーンイノベーションや先進運転支援システム、自動運転、スマートキャビン、メタバースなどの分野で活用されることになる。光学デバイスのリーダーとしての地位を維持し、安心、安全、健康社会に貢献する」とした。

 さらに、世界各地の営業拠点に、グローバル開発センターを設置。「顧客の近くに設計開発体制を整備することで、顧客と密接に連携し、開発のスピードをあげ、光学エンジンソリューションを迅速に提供することができる」としたほか、新たなデバイスの創出と事業改革に向けて、Panel-Semicon研究所を新設したことに触れ、「ディスプレイや半導体で使われる新たなテクノロジーを開発し、新たな事業テーマを立ち上げる役割を担うことになる」と述べた。

創業111周年を記念した「SHARP TECH- DAY」を開催

 最後に、イノベーショングループの方向性について、シャープ 常務 研究開発本部長の種谷元隆氏が説明した。「シャープは世界に誇れるトップ技術を多数保有している。最近では、生成AIによるチャットが注目を集めているが、シャープは会話ができる家電の実現に向けて、10年前から技術を培い、日本語における独自の会話のあり方をノウハウとして蓄積している」と述べ、「イノベーショングループを通じて、AIやロボティクス、XR、6G、食・水・空気、カーボンニュートラル、宇宙といった変化に対して、独自の技術を組み合わせ、新たなイノベーションを起こすことを目指している」と語った。

イノベーショングループの目指す方向性
イノベーショングループの目指す方向性

 5Gの保有知財では日本ではトップ2であり、この実績を6Gにも継続することや、Wi-Fiで接続する100万台の家電が国内で使用されていることなどに触れながら、「これらを生かして新たな生活の実現や、心地よい毎日を支えることに貢献をしたい。近くにあるパーソナルAI、グローバルに動いているAIを組み合わせることで、最大の価値を生み出し、人と地球にやさしい企業を目指す」と語り、「シャープは、ゲームチェンジになるような商品、ソリューションを数多く開発している。シャープの新たなオリジナル商品やサービスに期待してほしい」と述べた。

 シャープでは11月11日に、東京・有明の東京ビックサイトにおいて、創業111周年を記念した「SHARP TECH- DAY」を開催する予定であり、そこで数々の技術、商品、サービスを公開する予定だという。

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