2023年5月30日、スマートフォンメーカーであるFCNTが東京地裁に民事再生法の適用を申請した。
FCNTはもともとは「らくらくスマートフォン」や「arrowsシリーズ」を手がけてきた富士通の携帯電話事業を担う組織が分社化されたものだ。
同社からのリリースによれば、スマートフォンの製造や販売については速やかに事業が止まり、端末の修理やアフターサービス事業も一旦停止すると発表された。
ただ、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクはFCNTの端末の販売を続け、サポートも継続していくとアナウンスしている。おそらく、どのキャリアもFCNTから調達済みの在庫を処分したいのだろう。
FCNTでは、2023年2月にNTTドコモ向けとして「arrows N F-51C」を発売。「エシカル」を売りにしており、「長く使えるスマートフォン」として、Androidのバージョンアップはarrowsシリーズで最も多い3回、セキュリティアップデートも最長4年を予定しているとした。しかし、今後、どこまでアップデートに対応してくれるか、かなり不透明となってしまった。
先日は京セラが個人向けスマートフォンから撤退すると発表があったばかりだ。FCNTの民事再生法の適用申請により、日本メーカーはシャープとソニーのみとなった。ただ、シャープに関しては、親会社が台湾・フォックスコンであることから、純粋な日本メーカーと言えるかはかなり微妙だ。
京セラとFCNTが苦境に立たされた理由はいくつもある。
まず、昨今の円安基調により、製造コストが高騰していた。ちょっと前までは半導体不足という問題も抱えていた。
そして、総務省の意向により2019年10月から電気通信事業法が改正となり、端末と通信回線のセット割引が規制され、2万円が上限となった。このため、ソフトバンクやKDDIは、2万円で調達できる中国のOPPOやXiaomiのスマートフォンを積極的に導入。FCNTを含む各社は、2〜3万円のスマートフォンを作らざるを得なくなった。
割引規制によりハイエンドが売れなくなるなか、利幅の薄いエントリーからミドルクラスのスマートフォンで台数を稼ぐ必要があったのだ。
京セラもFCNTも、ソニー「Xperia」やシャープ「AQUOS」といった自社で強いハイエンドのブランドは持つことができなかったのが痛い。FCNTは「arrows」があり、技術で尖っていた時期もあったが、いまではすっかりエントリーモデルのブランドとなってしまった。京セラには「TORQUE」があるが、耐久性に優れてアウトドアニーズを捉えることに成功したが、丈夫すぎて買い換えてもらいにくいという状況にあった。
両社はキャリアから発注する「企画端末」として、シニアやキッズ向けのデバイスを数多く手がけていた。シニアはなかなか機種変更しない。キッズは大きくなればiPhoneに乗り換えてしまう。結果、同じメーカーを使い続けてくれるファンを作ることができなかったのも敗因だ。
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