スマートフォンが特別なことを成し遂げそうなほどに進化してから、10年近くが経過した。当時、PC業界の常識を覆すというアイデアで、識者やジャーナリストらを熱狂させた流行語があった。
その流行語とは「コンバージェンス(融合)」で、業界を永遠に変える何かを実現すると期待された。
こうした動きで先陣を切ったのはCanonicalと「Ubuntu」だったが、残念ながら失敗に終わった。それは、Canonicalがそれを実現するのに十分な性能のデバイスを製造する一流の携帯電話メーカーを確保できなかったからだ。コンバージェンスのアイデアは、サムスンも「Samsung DeX」ドックソリューションで発表した(これも残念ながら成功しなかった)。Motorolaのスマートフォン「ATRIX」や、Microsoftの「Windows 10 Mobile」向け「Continuum」機能など、他の企業もコンバージェンスを試みた。不幸なことに、コンバージェンスを実現しようとする努力はいずれも、やがて暗礁に乗り上げた。
そもそもコンバージェンスとは、どういうものが想定されていたのか。
簡単に言えば、コンバージェンスを支えるアイデアは、ディスプレイ、キーボード、マウスに接続されたドックに、スマートフォンを接続できるようにするというものだった。スマートフォンがひとたびドックに置かれると、モバイルOSが接続を検知して特別な「デスクトップモード」に切り替わり、デスクトップPCとして使えるようになる。
筆者はこの技術のデモを見たが、見事なものだった。
Canonicalが行ったデモは極めて革新的で、消費者にとって大きな意味を持つものになる可能性があった。もしそれが実現すれば、デバイスが1つあれば済んでしまうのだ。しかも、適切なハードウェアを備えたデスクトップにスマートフォンを接続すれば、そのままコンピューターとして使えるようになる。この「デスクトップモード」のUIは、シンプルで、信頼性が高く、効果的に設計されていた。
もちろん、この構想にはPC業界を脅かすという問題があった。ある日突然、スマートフォンさえあればすべてが済むようになり、誰もPCやラップトップを買わなくなったらーー。
とは言え、現在のインターネットへのアクセスは、55%がモバイルデバイスからのものであり、PC業界はすでに劇的なPC離れを経験しつつあると言えるだろう。もちろん、筆者のような日中のほとんどの時間をPCの前で過ごすタイプのユーザーが、そのような変化に乗ることはない。試しにスマートフォンで(Bluetoothのキーボードとマウスを使って)文章を書いてみたこともあるが、従来のスマートフォンのUIや、小さすぎるフォームファクターは、筆者の仕事には合わなかった。
しかし、一般的なユーザーであれば、簡単にその変化を乗り越えられるかもしれない。
もしGoogleのある構想が実現するといううわさが本当なら、それが現実のことになる可能性がある。そのうわさとは、Androidに関する情報を発信しているAndroid Authorityが報じたもので、今秋に発売されるであろう「Pixel 8」にUSB Type-C(USB-C)の「DisplayPort Alternate Mode」が採用されるかもしれないというものだ。このモードの採用に関する臆測でもっとも重要な点は、キーボード、マウス、外部ディスプレイを組み合わせることで、デスクトップPCの代わりに使えるようになるということだろう。
Mishaal Rahman氏もAndroidのデスクトップモードにつながる可能性がある話を次のようにツイートしている。
「Android 14」では「USBガジェットHAL」の新しいバージョンに対応するようだ。v2.0は、接続されたUSB-CケーブルがDP Alt Modeに対応しているかどうかを返すことができる。ついに、USB-C経由でのビデオ出力が可能なPixelが登場するのだろうか。これは私の希望的観測でしかないが、最近のデスクトップモードの改善ぶりを考えるとーー。
突如としてコンバージェンスが再び話題に上るようになったわけだが、それを実現できる企業があるとすればGoogleしかない。Androidは依然としてスマートフォンのグローバル市場で最大のシェアを持っており、その影響は非常に大きなものになる可能性がある。裕福ではない国々(これらの国々ではAndroidが圧倒的なシェアを持っている)では、スマートフォンがデスクトップPCとしても使えるとなればなおのこと歓迎されるかもしれない。
筆者個人は、コンバージェンスが実現してほしいと思っている。ただし同時に、そのために別の(高価な)ハードウェアを購入する必要がないことを願っている。これが多少なりとも受け入れられるためには、一般的なディスプレイやBluetoothの周辺機器などの既存のハードウェアと連携できる必要がある。もしGoogleが、デスクトップモードを使うための「Pixel Dock」のようなものを発売する方向に向かえば、その試みは失敗するだろう。しかし、同社が正しい方向に向かうなら、ついにコンバージェンスが現実のものになり、あらゆる消費者が恩恵を受けられるようになる。
Googleにはぜひ、これを成し遂げてもらいたい。10年前のコンバージェンスの夢を現実のものにしてほしい。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス