18~24歳の若者のうち、「TikTok」をニュースソースとして利用している人の割合は20%で、2022年から5ポイント増加したことが、Reuters Institute for the Study of Journalismの報告書「Digital News Report 2023」で明らかになった。
活字メディアの人気はこの数十年、下がり続けている。電子機器があればソーシャルメディア経由で、たいていは無料でニュースにアクセスできるようになったからだ。しかし、テレビや活字メディアの市場が縮小する状況でも、デジタルメディアがその空隙を埋めているわけではないことを、Digital News Reportの調査結果は示している。
TikTokや「Instagram」「Snapchat」の場合、ユーザーはジャーナリストよりも、有名人やインフルエンサー、ソーシャルメディア上のスターが伝えるニュースに関心を持つ傾向が強いという。全般的に見ると、ニュースそのものへの関心が失われる傾向が強まっている。その理由として挙げられるのは、メディアやソーシャルメディアのアルゴリズムへの不信感、それして悲惨なニュースを報じる記事を目にするのを避けたいという心情だ。
TikTokユーザーの間では、ニュースを知るのに大手報道機関やプロのジャーナリストに注目する人(33%)よりも、一般の人々に注目する人(44%)の方が多い。一般市民が出来事や事件に関する情報を集めて人々に伝えることは、市民ジャーナリズムとも呼ばれる。
市民ジャーナリズムの人気が高まっている背景には、ロシアとウクライナの間で進行中の戦争に参加している兵士が、戦場で撮影した動画や日々の様子を投稿し、TikTokにアップロードし始めたことがある。TikTokにおける市民ジャーナリズムによって、「ある出来事や事件を直接経験している人は正確な情報を伝えている」「大手メディアのジャーナリストが報道しない詳細な内容も伝えているはずだ」という感覚が広まっている。
しかし複数の専門家は、TikTok、「YouTube」、Instagramといった動画プラットフォームの市民ジャーナリズムでは、正しい情報と真実ではない情報が容易に混ざり合ってしまうため、事実とフィクションの区別がつきにくくなると警告している。
NewsGuardの調査によれば、世界の重大ニュースを取り上げた動画の20%近くに誤った情報が含まれていたという。取り上げられているトピックも、新型コロナウイルス感染症のワクチンから銃による凶悪事件、ロシアとウクライナの戦争、米国の選挙など多岐にわたっていた。
「Photoshop」、人工知能(AI)を使ったディープフェイク、それに非常にもっともらしいことを言うオピニオンリーダーなどは、いずれもショート動画プラットフォームでデマ情報の拡散に一役買う恐れがある。
TikTokで見た写真や動画をすべてファクトチェックし、逆画像検索にかけて情報の正確性を確認するのは手間的にも時間的にも現実的ではない。
では、TikTokにはびこる誤情報にだまされないためにはどうすればいいのだろうか。3つの方法を紹介する。
誤情報に踊らされないために専門家が勧めるのは、自分自身の偏見を自覚することだ。気になるコンテンツを見かけたら、それが特定の集団に対する自分の偏見を強化するものとなっていないか確認しよう。コンテンツが引き起こす感情的な反応は、客観的な思考を妨げる恐れがある。
情報を投稿したアカウントの素性を確認することも重要だ。そのアカウントは最近作られたものか。フォロワーは数人しかいないか。物議を醸すような話題ばかり投稿していないか。こうした問いへの答えが1つでもイエスなら、そのアカウントが発信している情報は疑ってかかる必要がある。
ネットには、あえて他人を怒らせるような言動をする人たちがいる。この種の人々は、読み手を不快にさせたり、いらだたせたりするようなコンテンツを意図的に投稿する。「どんな宣伝も良い宣伝」というわけだ。大勢の人を怒らせるような内容だろうと、そのおかげで話題になれば再生回数が増え、投稿者には収益が流れ込む。
ショッキングな情報、少なくとも読み手を動揺させるような情報しか投稿していないアカウントは、注目を集めるためにあえて炎上を狙っているのかもしれない。そのようなアカウントはブロックし、その手のコンテンツがフィードに表示されないようにしよう。
ネットでニュースサイトを見る機会は減っているもしれないが、不確かなニュースに出会った時は、信頼できるニュースサイトで確認することが有効な対策になる場合がある。他のニュースサイトでも報じられているかを調べて、ある事件や出来事が本当に起きたことなのかを確認しよう。
どのニュースサイトが信頼できるかを判断するのは自分自身だ。主要なニュースサイトのほとんどは何らかのバイアスを持っているが、重要なのは、無意識の偏見を避けることだ。無意識の偏見のないニュースは、扇情的な言葉を使ったり、根拠のない主張を展開したり、個人的な見解を述べたりしない。論理的な破綻とも無縁だ。
無意識の偏見が入り込んだニュースを回避するためには、視点の異なる複数のニュースサイトに目を通し、自分なりの結論を持つようにする必要がある。AllSidesのようなサイトは、その助けになるだろう。同サイトは、ボランティアの編集者が人気の高いオンラインメディアの政治的な立ち位置を5段階で評価している。
評価結果に対するオンライン投票も行われている。また、評価結果は各社の報道内容をもとに頻繁に変更されている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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