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TikTokのデマで授業中止や学校閉鎖も--見抜くコツは「だいふく」

 米国の民間調査機関「NewsGuard(ニュースガード)」によると、TikTok上で話題性の高い27の特定の検索ワードを入れて上位20位に表示されたコンテンツの内容を精査したところ、合計540本のうち19.4%に当たる105本に虚偽または誤解をまねく表現が含まれていた。TikTokにおけるデマ・フェイクニュース問題と、デマを見抜くコツについて解説したい。

TikTok投稿の2割に虚偽情報?

 調査では、アナリスト6人から構成される調査チームがTikTok国際版に新規アカウントを作成。ウクライナ侵攻や新型コロナウイルス、気候変動、妊娠中絶などについて検索したところ、40分以内に虚偽または誤解を招くコンテンツが表示されたという。

 たとえばmRNAワクチンについて検索すると、上位10位のうち5つに「子どもの臓器に永久的な損傷を与える」などの虚偽情報を含むコンテンツが表示されたのだ。

 TikTokのレコメンドも問題視されている。たとえば「新型コロナウイルスワクチン」について検索すると、「新型コロナウイルスワクチン 暴露」「新型コロナウイルスワクチンによる損傷」などのキーワード検索を勧めてきたという。

 一方、Googleで同じ検索をすると、ワクチンクリニックやさまざまなワクチン、ブースターショットに関するより正確な情報に関する検索を提案してきた。

 米ピュー・リサーチ・センターが2022年に実施した調査によると、米国に住む10代のうち67%がTikTokを利用している。若者の間で絶対的な人気を誇るTikTokだけに、デマの拡散の懸念は大きくなっている。

TikTokデマで授業中止、学校閉鎖も

 ご紹介したのは英語での検索結果の話だが、日本でも似たような結果となっているようだ。

 たとえば「#新型コロナウイルスワクチン」と検索すると、検索結果の上部には「新型コロナウイルス関連症のワクチンに関する情報」として、信頼できる情報へのリンクが表示される。しかし、表示される投稿はそうではない。「打ったら熱出た」「腫れた」などのワクチン接種報告動画に並んで、「新型コロナウイルスワクチンの真実」などの怪しげなものも表示される状態だ。

 加えて、「コロナワクチンの真実 最新」「日本 コロナワクチン 打たないで 内科医」などのデマにつながるものが検索キーワードとして表示される。

 新型コロナウイルス関連では、2020年にも「中国政府が人口爆発を抑制する目的でウイルスを作成した」という主張や、「ビル・ゲイツが治療薬を開発した」などのさまざまな根拠のない動画がTikTokにあふれた。

 2021年には、デマにより米国内で騒動も起きている。TikTok上に「銃撃や爆弾の脅威があるようなので、12月17日は学校を休むべきだ」という投稿が拡散。動画では、自分でもこの内容の動画を作成、広めるように促していたのだ。

 その結果、この日には米国の複数の学校が授業を中止したり、学校を閉鎖したりするはめになった。学校が授業中止などとしたことで、さらに動画が作られ、拡散していたというわけだ。

 動画にあった暴力行為は認められておらず、デマと考えられる。このように、TikTok上のデマによって、実生活が大きく影響を受けたこともある状態だ。

デマを見抜くコツは「だいふく」

 TikTokでは、フォローしていなくてもAIでユーザーの好みに合いそうな投稿が表示されるが、話題になっている投稿も表示されることが多い。それ故、話題になっていればデマが広まる可能性も高くなってしまう。

 TikTok側は「医療上の誤情報を含む有害な誤情報は削除する」とし、2022年第1四半期には違反した1億200万以上の動画を削除している。ガイドラインでも、「有害な誤情報」を禁止している。しかし、実際はデマやフェイクニュースがはびこっている状態だ。

 「SNSでは色々な情報を見かける。自分は全部信じるわけじゃないけど、信じている子もいる」とある高校生は言う。「でも自分もフォロワーが多いインフルエンサーとか、芸能人とかが言っているからと信じてしまったことがある。後で本当はデマということがわかってニュースになっていた」

 デマを見抜く方法は、「誰が」「いつ」言った情報かを確認し、「複数」のソースをたどることが大切だ。「だいふく」というキーワードを覚えておくといいだろう。

 「誰が」は、一次ソースに戻り、最初の発信者の信頼性を確認するということ。「いつ」は、その情報はいつの情報か、最新のものかを確認するということ。「複数」は、信頼できる複数のソースがあるかを確認するということだ。

 TikTokを含めたSNSでは、様々な情報が飛び交っているが、誤ったものを信じてしまうとトラブルにつながったり、周囲に迷惑をかけたりすることも多い。なかには健康被害につながることもある。気になる情報は必ず信頼性を確認し、確認できないものは少なくとも広めないことが大切だ。

高橋暁子

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。

公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/

Twitter:@akiakatsuki

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