JASRAC、世界のデジタル配信サービスのコンテンツや楽曲情報を共有・交換する「GDSDX」

 日本音楽著作権協会(JASRAC)は6月9日、グローバル展開する動画、音楽の配信サービスのコンテンツ情報と、著作権管理団体が管理する楽曲情報を共有、交換するプラットフォーム「GDSDX」を5月31日にリリースしたと発表した。


 GDSDXは、デジタル音楽配信事業者(DSP)から著作権管理団体に報告される情報のうち、各DSPが配信するコンテンツ(楽曲や動画)ごとに作成しているユニークコードと、「ISRC」(International Standard Recording Code:国際標準レコーディングコード)をキーとして、各著作権管理団体の管理楽曲の情報を関連付けたデータベースとなる。


 各DSPからそれぞれの国や地域の著作権管理団体には、DSPごとに世界共通で使用している配信楽曲IDを報告するため、各地でタイトルが現地表記に変換されるなどしても、GDSDXを通じて的確に楽曲を特定できる。

 さらに、著作権協会国際連合(CISAC)内で共有している「ISWC」(International Standard Musical Work Code:国際標準音楽作品コード)や作品届(権利者から著作権管理団体に届けられる資料)のデータとも関連付けられるため、各団体で行う分配までの作業効率を高められるとしている。

 今回のリリースにおいては、グローバル展開する配信サービスのうち、YouTubeを対象に、同協会が管理する楽曲情報43万件と他のプロジェクト参加4団体の楽曲を合わせた計140万件の楽曲情報を収録。今後は、Apple、Spotify、TikTokなど、YouTube以外の配信サービスにも拡大する予定だ。


 JASRACは、演奏、放送、配信、複製等多くの分野で音楽の利用者から利用楽曲の報告を受け、これをもとに管理楽曲を特定。委託者から届け出られた権利関係(分配割合など)に基づいて各権利者に使用料を分配しているという。

 近年、配信分野の使用料収入が拡大。2022年度の年間報告数は合計32.4億件で、配信分野が全体の93.5%(30.3億件)を占めている。また、総徴収額(1290.1億円)に占める配信利用分の割合は、2022年度実績で34.6%(446.6億円)となり、グローバル展開する音楽サブスクリプションや動画配信サービスにおける著作権使用料を確実に得ることが、音楽関係者(クリエイター・権利者など)の重要な課題、関心事になっているという。

 また、DSPは、それぞれの国や地域ごとに音楽著作権管理団体らと契約を結び、著作権使用料を支払っている。例えば、JASRACが管理している楽曲が海外で利用された場合、各地の管理団体がDSPから使用料の支払いを受け、使用料をJASRACへ送金。その後、JASRACが国内のクリエイター・権利者へと使用料を分配している。外国からJASRACへの使用料送金額は、2022年度実績で18.9億円で、コロナ前の2019年度比で約3倍になるとしている。

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 一方、音楽サブスクリプションや動画配信サービスでは、膨大な楽曲を利用するため、使用料分配に際して行う楽曲の特定が課題となっている。

 配信分野では、報告されたISRCやタイトル、作家名、アーティスト名などの楽曲情報をもとに、システム上で楽曲を特定。特定できない場合は、専門スタッフによる特定を実施するが、JASRACにおける楽曲特定率は、音楽サブスクリプションにおいて95.3%(2022年度)になっているという。

 日本では、音楽サブスクリプションなど、大規模配信事業者を中心としてCDC(著作権情報集中処理機構)を活用して、効率的に報告データを作成。一度楽曲を特定できた場合は報告データに楽曲の識別子(作品コード)を付与して配信事業者へフィードバックし、配信事業者が以降の作品コードを含めて報告データを作成することで、正確性も確保されるようになる。

 しかし、新たに配信される楽曲数が多いことなどから、特定できていない分(4.7%)は、約95億のリクエスト回数(PDや非管理楽曲を含む)に相当するという。このような配信利用における楽曲特定は、世界はもとより日本においても課題となっている。

 楽曲特定に関する課題のうち、特に自国の楽曲が海外で利用される場合、現地にはISRCに関連付けられる楽曲情報がないことが多く、タイトルが現地表記に変換されることもあり、特定が困難になるとしている。

 そこで、こうした課題を解決を図るため、CISACアジア太平洋委員会に所属するフィリピンの「FILSCAP」、韓国の「KOMCA」、台湾の「MÜST」、インドネシアの「WAMI」と連携し、「GDSDXプロジェクト」を立ち上げたとしている。

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