アジア・太平洋音楽創作者連盟(APMA)は11月8日、東京で開かれた総会において、著作物保護に関する諸問題に対応するための「東京宣言」を採択。アジア・太平洋地域における私的録音録画補償金の早急な制度化とともに、かねてから指摘されてきた海外との映画上映使用料の格差問題について、解消に取り組む意向を示した。
APMAは、著作権協会国際連合(CISAC)の諮問委員会である音楽創作者の国際評議会・CIAMのアジア・太平洋地域担当として2016年11月に設置。アジア・太平洋18の国と地域の賛同を得て、15万人あまりの音楽創作者を代表する組織となっている。会長はAPMA設置にも尽力した作曲家の都倉俊一氏。
2017年5月には、韓国・ソウルで第1回執行委員会を開催。著作権の買い取り問題(BUY OUT)、著作権保護期間の著作者死後70年への延長、現行の著作権保護制度から逃れたビジネスなどを可能としてしまう法制度(セーフ・ハーバー法制)乱用の防止の3点を「ソウル宣言」として採択した。
都倉会長は、今回の東京宣言、そして5月に採択されたソウル宣言を音楽創作者共通の課題として積極的解消に取り組むとともに「(CIAMの)他の地域連盟にも持ち帰っていただき、課題として討議してもらう」とした。
東京宣言で採択された2つの課題のうち、特に注目が集まっているのが「映画上映使用料の内外格差解消」だ。日本で上映される外国映画の音楽使用料は現状、興行規模によらず定額(一般的な劇場用映画で18万円)となっており、これが欧州諸国と比較して著しく低いことに加え、日本映画との音楽使用料においても大きな差額を生んでいるのだという。
たとえば、主題歌も大ヒットした「アナと雪の女王」(2014年)においても、楽曲創作者に支払われた使用料額は18万円。興行収入(約255億円)に占める割合は0.0007%に過ぎず、同作において音楽が果たした役割と照らし合わせて妥当な対価と言えるのか、議論が分かれるところだろう。
こうした状況を打開すべく、日本音楽著作権協会(JASRAC)は映画興行収入の多寡を反映した使用料規定を採用するとともに、支払者を従来の配給会社ではなく上映主体である劇場に変更すべく、関係諸団体と協議を6年ほど前から続けてきたという。当然、その背景には日本国内での著作権管理をJASRACに委託する海外創作者の強い要望があり、今回採択された東京宣言は、そうした海外からの声に対するひとつ回答として捉えることもできるだろう。その上で、今後は興行収入の1~2%を目指すとしている。
一方、現状では協議相手である利用者団体の理解を得られているとはいえず、また消費者の一部費用負担などの影響が懸念されることから、すでに反発の声も挙がっている。この点について、JASRACは「創作者は対価を糧に創作するもの。そのサイクルを止めてしまえば、映画音楽そのものの供給が止まってしまう恐れがあることを理解してほしい」(JASRAC常務理事・大橋健三氏)とあくまで理解を求めていく構えだ。
加えて、諸外国の著作権管理団体や創作者たちから届いているという是正を求める強い声について、「仮に日本の著作権管理制度が信頼できないと判断されてしまえば、海外の著作者が使用料を求めて直接利用者から対価を求める『プラーゲ旋風』の二の舞になりかねない」(浅石道夫理事長)と、音楽利用者にとってもさらに状況が悪化するケースも危惧していると述べた。
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