自民党の「AIの進化と実装に関するプロジェクトチーム」で事務局長を務める衆議院議員の塩崎彰久氏は6月8日、デジタルガレージ主催の「THE NEW CONTEXT CONFERENCE TOKYO 2023 Summer」に登壇。自民党がまとめたAI政策提言の概要、および「G7広島サミット」の首脳声明に盛り込まれた「広島AIプロセス」について説明した。
塩崎議員は冒頭、ChatGPT開発元のOpenAIでCEO(最高経営責任者)を務めるサム・アルトマン氏が3月に来日した際の裏話を披露した。
「岸田総理と会う前にサムと話をしたら『ChatGPTをローンチしてから初めて米国の外に出た』と嬉しそうだった。サムは日本が大好きで、東京駅の下にあるベジタリアンラーメンが大好きだと言っていた」(塩崎議員)
塩崎議員によると、アルトマン氏は「日本は人口あたりで最もChatGPTを使っている国」だと教えてくれたという。さらに、諸外国の政府はOpenAIに冷たいが、「日本政府はきちんと話を聞いてくれる」とも語ったという。
「官民総力を挙げて、日の丸AIを作りませんか? 予算を潤沢につけましょう。そうじゃないと海外に勝てません」──。自民党のプロジェクトチームが日本のAI政策に関する提言をまとめる際、一番寄せられたのが上記の意見だった。
こうした声に対して、自民党のプロジェクトチームは次のような結論に至ったという。
「もう戦艦大和は作らない」──。
その理由について塩崎議員は次のように述べた。
「この先、AIのテクノロジーがどう進化するかわからない。そんな不確実性の多いところに、国民の税金と国の将来を賭けるだけの責任を我々は取れない」(塩崎議員)
不確実性の具体例としては、検索が「G社」の一極集中、スマートフォンOSが「A社」と「G社」の二極集中となった一方、ライドシェアが「U社」や「D社」などの多極集中となっている点を挙げた。そして、次のように述べた。
「まずは先行している海外の基盤モデルAIを土台とし、パートナーシップを組む形で、国内で基盤モデルを用いた様々な応用研究や開発をさせるべきである。これをやっていれば、国産のLLMや生成系AIの開発の余地が出てくるかもしれない」(塩崎議員)
つまり、国産AIの開発にこだわるのではなく、まずは海外のAIプラットフォームの利活用を優先させることで、将来的に国産AIが誕生する素地を作ろうという内容だ。
自民党はこのようにして、政策提言を「AIホワイトペーパー」としてまとめ、3月30日に公開した。岸田文雄総理にAI政策を提言した際には「今がチャンス」とも進言したという。
「欧州ではイタリアがChatGPTを禁止し、米国ではイーロン・マスクがAIの研究を止めろと言っている。5月に開催されるG7で日本がAIの主導権を取っていくのはどうか。新しい社会でAIをどう使うか、このルール作りを冷静な環境で議論できるよう、日本から発信したらどうか」(塩崎議員)
こうした自民党内での議論や政策提言が、「G7広島サミット2023」の首脳声明に盛り込まれた「広島AIプロセス」に繋がったという。同プロセスでは、AIの民主的かつ責任ある利活用のルール作りをG7各国が共同で実施することを盛り込んでいる。
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