ANAら、eVTOLドローンで血液製剤を輸送する実証実験--東京~茨城間約75kmを自動飛行

 ANAホールディングス(ANAHD)は5月25日、伊藤忠商事、東京都立墨東病院と共同で、血液製剤輸送の社会実装に向けた医学的検証のための実証実験を実施したと発表した。

 伊藤忠商事を主体者、墨東病院を共同研究者、同社を共同運航者として、遠隔地への血液輸送を想定した長距離かつ長時間飛行を、品質管理面と共に検証している。

 
 

 今回の実証では、遠隔地への血液輸送を想定した長距離、長時間飛行を複数回実施したという。一般的なマルチコプター型のドローンでは取扱いが難しいとされてきた温度管理が必要な血液製剤を、同じく達成が難しいとされてきた全自動による高速での長距離安定移動の可能性を、品質管理面と共に検証している。

 伊藤忠商事が2022年3月に資本業務提携、販売代理店契約を締結したWingcopter Gmbh製の最新eVTOL型ドローン「Wingcopter198(W198)」を日本で初めて活用。高さ66cm×幅198cm×奥行き167cm、重量は24.9kg、最大積載量は4.5kgで、標準巡行速度は時速90km、最大飛行距離は110km。平均秒速15m、突風時は20mに耐える機体になるという。

 厳密な温度管理が求められる、血液製剤を格納するドローン用の保冷容器は、医療向け定温輸送容器の製造、販売に実績のあるスギヤマゲンが協力。また、2種類の血液製剤を調達した墨東病院から実証実験茨城県稲敷郡「ドローンフィールドKAWACHI」までの往復(片道約75km)の血液製剤の輸送容器および輸送は、それぞれ東邦ホールディングスとセルートが協力した。

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 日本では、2022年12月の改正航空法でレベル4(有人地帯における目視外飛行)が解禁。ドローンの活用領域が大きく拡大している。また、今回の実証実験の対象となった血液は性質上、緊急性・定時性の両面が求められ、その物流を支えるインフラや人員の確保、血液の安定供給と品質維持が大きな課題となっているという。

 同プロジェクトでは、関係者の医学監修、協力のもと、現場での運用を見据え、実践的な手法、機材を用いた輸送フローを検証していくとしている。

 
 

 なお、Wingcopter Gmbhは、医療品分野を中心に、アフリカでの医療品配送ネットワークの構築や、日本を含む世界各地での実証実験を通じて、ドローン物流の事業化を目指している。安定した高速、長距離飛行が可能なドローンにより、医療品や医療資機材に限らず食料品や日用品等の配送も可能。特に自然災害が多い日本では、離島や山間部、被災地でのBCP対応への貢献が期待できるという。

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