ソニー、バーチャルプロダクションからプラ削減まで--収益と成長の2軸で展開するET&S分野

 ソニーグループが投資およびアナリストを対象に開催した「事業説明会2023」において、エンタテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S)分野に取り組みについて、ソニーグループ上席事業役員であり、ソニー 代表取締役社長兼CEOの槙公雄氏が説明した。

ソニーグループ 上席事業役員、ソニー 代表取締役社長兼CEOの槙公雄氏
ソニーグループ 上席事業役員、ソニー 代表取締役社長兼CEOの槙公雄氏

 ET&Sでは、収益軸事業と成長軸事業による2軸の事業構造で展開。「2023年度は、これまで以上に、クリエーターとともに新たなエンターテインメントの創造を目指す。Web3.0などの次世代環境下におけるクリエーターエコノミーの確立を視野に入れ、成長軸の拡大を目指す」としたほか、「事業ポートフォリオを成長軸事業へシフト。2025年度までに、成長軸事業の売上高を年平均成長率20%以上で拡大させ、営業利益では3分の1以上を成長軸事業が占めることになる。ET&S全体では、2024年度に営業利益率10%を目指し、これを2025年度も継続すること計画である」と述べた。

経営環境・課題認識
経営環境・課題認識
成長軸事業領域重点施策
成長軸事業領域重点施策

 成長軸事業領域の重点施策として、グループ内外との連携やアライアンスによる事業モデルを進化させ、成長を加速する方針を示した。

 成長軸事業領域の重点的な取り組みについても説明した。バーチャルプロダクションでは、シネマカメラの「VENICE」やディスプレイの「Crystal LED」と、Epic Gamesのクリエーターとの協業による技術開発を通じて、リアルタイムプリビジュアライゼーションをはじめとする新たな映像制作方法の需要開拓を推進。映画やドラマ、MV、CMなどのコンテンツ制作サービスでの活用や、バーチャルプロダクションで利用可能な3DCG背景を提供する「BACKDROP LIBRARY」を用意していることなどを示した。すでに、国内においてはソニーPCLが、50本以上の作品を手掛けており、7月には、さらに制作パフォーマンスを向上させたスタジオに機能拡張するという。

 槙社長兼CEOは「2023年度以降は、ライブリモート制作をはじめとしたソニー独自のソリューションを融合し、プリプロダクションからポストプロダクションまで一気通貫でのシステムサービスを提供したい。クリエーターと新たな映像制作ソリューションを共創し、コンテンツカテゴリーの裾野を広げていく」とした。

 バーチャルプロダクションでは、2025年度までの年平均売上成長率で35%を目指している。「コンテンツ制作の需要が急速に増加しており、内容も多岐に渡っている。需要の拡大に基づいて事業を成長させていく」と語った。

 ソフトウェアソリューションでは、カメラを独自サービスやシステムに組み込みたいという顧客向けに、ハードウェアの機能を開放するためのSDKを拡張。ドローンを使用した撮影など、多様な使い方が始まっていることに対応していくという。また、デジタルサイネージやサウンドAR、Web3.0コンテンツの制作、医療用での活用に向けた機能の開放を進めていくほか、アプリケーションに応じて最適化したクリエイティブソリューションをクラウドプラットフォーム上に展開するという。

 ソフトウェアソリューションの2025年度までの年平均売上成長率は45%という高い成長を目指す。「SDKによって、カメラの機能を開放することで、クリエーターの映像制作だけでなく、ドローンを使った点検や検査などにもニーズが広がっている。高性能、高解像、高感度、高速性といったソニーのキャプチャリングデバイスの特徴が評価されている。また、マルチカテゴリーへの展開により、ディスプレイの強みを生かした新たなサイネージソリューションや、医療分野での活用促進も成長につなげたい」とした。

 スポーツでは、リアルとバーチャルをつなぐ、ソニーならではの新たなスポーツエンタテインメントの実現を目指すとした。

 審判判定支援サービスなどを提供する「Hawk-Eye」は、世界主要サッカーリーグのVAR(ビデオアシスタントレフェリー)において、70%のシェアを獲得。今後もセミオートオフサイド機能の提案など、支援内容を拡充していくという。「Hawk-Eyeは、25以上の競技、90を超える国と地域で使用されている。今後もさらなるパートナー拡大に取り組む」とした。

 また、買収したBeyond Sportsのビジュアライゼーションテクノロジーを活用し、リアルのゲームをバーチャルコンテンツにリアルタイムで再現する技術を進化させ、新たなユーザー体験の創造と、取得データの商用化を進めるという。さらに、スポーツチームやリーグとの協業、ソニーグループ内の連携によるファンエンゲージメントサービスの確立にも取り組むという。

 「試合展開と連動したゲームを楽しむPoCも開始し、スポーツ観戦の新たな楽しみ方を検証しているほか、ライブネット空間でのコミュニティ創出に向けて、マンチェスター・シティ・フットボール・クラブとはバーチャルファンエンゲージメントのPoCを進めている」と語った。

 判定支援や取得データの商用化事業などで、2025年度までの年平均売上成長率は25%を目指しているが、「さらに、ファンエンゲージメント事業などの具体化により、さらなる成長を目指した事業運営を行っていく」としている。

BD開発で培ったコアテクノロジーをライフサイエンスに活用

 ライフサイエンスでは、生命科学領域にイノベーションを起こすことで、持続可能な社会の実現に貢献することを目指す。

 ブルーレイディスクの開発などで培ったコアテクノロジーを活用して、専任オペレータが不要なフローサイトメーターを開発。細胞研究の裾野を拡大することに貢献しているという。「昨今では、食品やエネルギー分野などにおいて、社会課題解決に向けた研究でも幅広く使用されている。また、細胞研究の応用分野においても、世界最高レベルの解析能力を持つ装置の提供に加えて、膨大なデータ解析を容易にするクラウドソリューションを提供することで、研究者を煩雑な作業から解放し、がんや免疫の複雑なメカニズムの解明に貢献できる」と述べた。

 さらに、創薬の貢献に向けて、細胞治療向け機器の販売を強化。ソニー独自の高分子材料を用いたADC(抗体薬物複合体)の研究に関しては、アステラス製薬と協業を発表。「2030年には市場規模が3兆円を超えるADC市場にも貢献したい」と語った。

 2025年度までの年平均売上成長率は25%を目指すとともに、2030年度に向けてさらなる成長を見込んでいるという。

 ネットワークサービスは、安心と多様なコンテンツの感動体験を支える重要なインフラサービス事業と位置づけている。

 提供開始から10周年を迎えた固定光通信サービスのNUROは、オンラインコンテンツの増加や、多様な働き方のニーズに対応し、順調に会員数を拡大。2023年4月時点で、回線利用者は140万件に達したという。「継続的な品質向上と、エリア展開、法人領域への取り組みを加速することで、さらなる会員獲得を目指す」と述べた。

 さらに、10G化の推進や、通信付帯サービスの拡充に取り組む。NUROスマートライフのサービス付帯率は、2022年度の18%から、2025年度には40%以上を目指す考えも示した。2025年度までのNURO累計会員数は、年平均売上成長率で25%を目指すという。

 また、成長事業のさらなる強化と、新規事業の創出に向けた方針も打ち出し、「映像センシングや映像技術、オーディオ・言語、通信技術、ヒューマンインタラクション、ディスプレイシステム、ライフサイエンスといった中長期の成長を推進する技術分野を強化する」と述べた。

 2023年4月に、組織改革を実施したことにも言及。「設計や商品企画を横断的な組織に変更した。事業ポートフォリオにあわせたリソースシフトが柔軟に行いやすい体制が整った。成長させたい事業に人材をシフトし、成長を加速させる。また、エンターテインメントの未来を創造するテクノロジーに関わる高いスキルを持ったエンジニアが、ソニーグループのR&Dセンターから、ソニーに合流した。技術成果をクリエイティブソリューションに展開し、早期の事業化を目指す。グループ内外との共創を深めることで、さらなる成長と飛躍につなげたい」と語った。

 一方、収益軸事業領域の重点施策として、オペレーション強化と事業モデルの進化に取り組む考えを示した。

 オペレーション強化では、DX化と自動化を進め、外部環境変化への耐性向上を推進する。生産面では、テレビ事業で進めてきた自動化において、さらに投資効率を追求した運営を行うほか、ノウハウの横展開も行う。具体的には、少量多品種のレンズカテゴリーでは、同一ラインでの複数モデルの自動生産を行い、その対象モデルを2022年度の5機種から、2023年度には10機種へ拡大することで、品質や効率を高めた安定生産、収益向上につなげる。

 「収益軸領域では、テレビを中心に、いずれも規模を追わない計画としている。とくにテレビ事業は、市場環境が変動するビジネスであり、厳しい環境を前提とし、事業リスクを捉え、固定費の管理を行いながら、収益性を重視した事業コントロールを行う」としたほか、「ディスプレイの技術はなくなることはない。あらゆる紙の情報がディスプレイに置き換えられていくことになる。メディカル分野やサイネージ分野、3D映像分野などのB2B領域に展開する。技術進化を止めることなく、新たなニーズや新たな表現方法を生み出すことを支援したい」と語った。

 また、販売面では、AI活用による販売予測の自動化に向けて、ソニーコンピュータサイエンス研究所や東京工業大学と共同研究を推進しており、欧州ではAI活用の対象機種を2022年度の1割程度から、2023年度は3割程度に拡大。その後も対象機種を広げていくという。

 事業モデルの進化では、サウンドやイメージングの独自技術を生かしたキャプチャリングデバイスの強みに、通信やクラウドなどのテクノロジーを生かしたクリエイティブソリューションを加えることで、クリエーターと新たな体験価値を創造するとともに、リカーリングによる事業モデルにポートフォリオをシフトさせ、ボラティリティの低減を図ると述べた。

コロナ禍前になかった製品が動画クリエーターの裾野を拡大

 一方、サステナビリティについては、「環境」、「アクセシビリティ」、「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン」の3点から取り組み、環境では、2023年度中に開発する小型製品において、プラスチック包装材を全廃。事業所やオフィスのすべてを再生可能エネルギーで稼働させる。「今後は、地球環境に、より積極的に貢献できる事業モデルの検討も開始する考えだ」という。

 アクセシビリティでは、2025年度までに、ほぼすべての商品化プロセスに、インクルーシブデザインを取り入れ、企画構想段階から当事者ニーズを商品開発に活かす。ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンでは、人材の多様化を促進。ジェンダーギャップの解消に取り組むとした。

 なお、「ジェネレーティブAIは、クリエーターのワークフローや、人々の働き方にも影響する。事業機会拡大の可能性がある」と述べた。

 2022年度の取り組みについても振り返った。槙社長兼CEOは、「『Cinema Line』や『VLOGCAM』といったコロナ禍前にはなかったカテゴリーが、キャプチャリングの領域を広げ、動画クリエーターの裾野を拡大している。サウンド領域ではプロ向け製品の展開に加えて、ヘッドホンがファッションの一部として取り込まれ、Z世代を中心に大きな反響を得た。スポーツではHawk-Eyeが国際的イベントを通じて判定支援に留まることなく、フィジカルとバーチャルの懸け橋となる新たな映像体験により、世界に感動を届けている。また、バーチャルプロダクションも新たな映像表現をクリエーターと共創している」と述べた。


 さらに、「テクノロジーの力を活用したサステナビリティへの取り組みも進めており、パッケージにはソニー独自技術の再生材を使用し、プラスチックの削減を加速。視覚に障がいがあるロービジョン者の創作意欲に寄り添う網膜投影カメラキットを発売した」と報告。「2022年度は、サウンドやイメージキャプチャリング領域を中心に、クリエーターとともに多くの感動を創出してきた。ソニーは音響分野を起源に、映像分野を加え、多くのクリエーターとともに、様々なエンタテインメントを創造しつづける」と述べた。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画広告

企画広告一覧

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]