世界最大のメタバースは、おそらく「Roblox」だろう。筆者の子どもたちも毎日のように遊んでいるこのプラットフォームは、体験が進化し続ける果てしない遊び場であり、広大な市場を備えている。そして、生成系人工知能(AI)が出現する場にもなろうとしている。Robloxは先頃、新しいAIツールを2つ発表したが、今のところ、どちらもクリエーター向けの「Roblox Studio」にしか登場していない。1つは、対話型AIを使って誰でもその場でコードを生成できるコーディングツール、もう1つは条件をテキストとして記述するだけで素材をデザインできるツールだ。
Robloxのこの新しいツールが実際に動くデモを見る機会があった。できることは、「Midjourney」や「Dall•E 2」「ChatGPT」などの生成系AIがすでに実現していることとほぼ同じであり、MicrosoftとGoogleも同様のツールを他の場所で展開している。だが、Robloxの場合は、そのようなツールを特定の用途に絞っている点が異なる。2つのツールは、今のところ互いに独立しており、トレーニングも別々に行われている。
対話型AIであり、急速に進化するアートツールであるという以上に筆者を強くとらえたのは、AIがコーディングの「副操縦士」になろうとしている点だ。筆者はコーディングに詳しくないし、ゲーム制作ツールというと、たとえソニー「PlayStation」の「Dreams Universe」であろうと、腰が引けてしまう。こうした新たなAIの波は、コーディングの助手のような存在になる可能性がかなり高い。というより、こう言うのははばかられるのだが、完璧なコーディングツールになる見込みがある。自分がどのような結果を想定して入力すると、どのようなエラーや結果が出てくるのか、それを見てみたいと強く思わせるくらいだ。だが、何よりも強く感じるのは、複雑な創作をたちまち可能にする手段になりそうだということである。
かつてAdobeの拡張現実(AR)部門でバイスプレジデントを務め、現在はRoblox Studioの責任者であるStefano Corazza氏によると、Robloxの新しいAI機能は、対象が「コーディングに慣れているユーザーであり、目指しているのはその生産性の向上である」という。だが、独創性がある全くの初心者向けに、もう1つの取り組みも進んでいる。
「コーディングを全く知らない人に向けた取り組みも並行して進めているところだ。ただし、コーディングに関して全くの初心者を対象にするとなると、ChatGPTのようにもう少し便利なインターフェースが必要になるかもしれない。コードの動作を説明したうえでコードを書いてくれるし、デバッグも助けてくれるからだ。したがって、大量のコードを書くのではなく、学習することを目標としたアプローチを検討しなければならないだろう」、とCorazza氏は話している。
このようなツールが、Robloxの通常のアプリにいつ登場するのか、筆者は注目している。ChatGPTをRobloxに結び付けている開発者もすでに現れているが、Robloxが目指しているのは、最終的にRoblox Studio以外でも、こうした創造的なツールを提供することだ。
「生成系AIは、全般的に、ゲーム開発の分野に取り入れやすいと思う。この分野の人は、例えば『絶対的真実みたいなことを知りたいんだけど』というように、くだけた感じで質問したりする。どちらかというと、反復的なプロセスになる」(Corazza氏)
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