2022年12月、スウェーデンのオーディオブランド「urbanista(アーバニスタ)」から、充電ケースにソーラー充電パネルを採用した完全ワイヤレスのハイブリッドアクティブノイズキャンセリングイヤホン「urbanista PHOENIX(アーバニスタ フェニックス)」が発売された。希望小売価格(税込)は2万7500円。同社によると、オーバーヘッド型を除いた完全ワイヤレスイヤホンとして世界初になるという。
「進化する北欧イノベーションの今」を届ける本連載。今回は、urbanistaの新製品「urbanista PHOENIX」の体験レビューをお届けする。同製品に使用されている太陽電池は、スウェーデン発ユニコーン企業となるExeger(エクセジャー)が開発した次世代の太陽電池「Powerfoyle」(パワーフォイル)」だ。
Powerfoyleの特徴は、こちらで紹介しているが、アウトドアのみならずインドア環境でも充電でき、あらゆるデザインにマッチするカスタマイズ性を強みとする。そんな太陽電池を使ったイヤホンは、どんな使用感なのか。
筆者が入手したのは、レビュー用のサンプル。Midnight Black(ミッドナイトブラック)とDesert Rose(デザートローズ)の2色展開のうち、Exegerからブラックを受け取った。
ブラックは、どんなファッションにも合わせやすいクールな印象。一方、やわらかい色合いのデザートローズも性別問わずに使えそうだ。
本体は、ムダを省いたシンプルな北欧らしいデザイン。イヤホンの背面にはurbanistaの文字が刻まれている。軽いつけ心地で重さは気にならない。
本体のほかに、専用充電ケーブル(USB-C to USB-A)、イヤーチップ(S/M/L)、ネックストラップが付属されている。外出する際に首からかけておくと、野外の太陽光で充電できる。
ケースは手のひらサイズで、一般的なワイヤレスイヤホンケースと比べると少々大きめ。フタの下部分に、Exegerが開発した次世代の太陽電池となるPowerfoyleが搭載されているためだ。大きいが、それほど重さは感じない。
再生時間は約9時間で、充電ケースの併用時は約34時間となる。2週間ほど光充電のみで本製品を使用してみた。
シンプルな見た目とは裏腹に、機能は充実している。装着すると音が流れ、取り外すと音が止まる「耳検出機能」に、複数のスマートフォンやBluetooth機器と接続して、シームレスな機器変更ができる「マルチポイント機能」もある。例えば、PCとスマートフォンに同時接続し、PCで音を聞いている場合、スマートフォンに着信があると音声が自動で切り替わる。
urbanistaのアプリをダウンロードすると、アプリ内で音質の調整や機能の設定ができる。イコライザープリセットは6種類あり、シーンに合わせてマッチする音質を選べる。
ハイブリッドアクティブノイズキャンセリング機能、外音取り込み機能、マイクノイズキャンセリングもあり、ノイズキャンセリングを使用すると程よく音が遮断される印象だった。
本体を長押し(耳の中に押し込む)して使用するタッチコントロール機能は、音量の上げ下げやサウンドモード切り替え、音声アシスタントの使用も可能。長押しではなくパッと操作できるボタンのほうが使い勝手が良さそうだと思ったが、誤操作しづらいメリットはあるかもしれない。
基本的に音声しか聞かない筆者にとって、音質は十分にクリアで満足できた。販売店のレビューを読む限りでは、「低音に迫力がある」と音質の評価は高かった。音楽好きに喜ばれる音質なのかもしれない。
もっとも気になるのは、太陽電池の充電効率だろう。筆者は本連載で、同じ太陽電池を使ったアディダスのワイヤレスヘッドホン「adidas RPT-02 SOL」もレビューしたのだが、こちらは一度も充電しないまま、現在も使い続けられている。
よく晴れる日が多い、1日1時間ほどの使用時間といった条件によるものかもしれないが、ソーラー充電の機能性は決して低くないはずだ。
今回のurbanista PHOENIXは、受け取ってから10日ほど窓際に放置しておいたところ、充電ケースの充電量が100%になっていた。
冬場、概ね晴れ、西向きの窓際という条件で充電した場合、3時間8分で64mA、1時間18分で26mAの充電量だった。日差しがもっとも強くなる12時前後はパワフルに充電するが、夕方になると充電効率が著しく落ちる。
商品説明には「太陽光や室内光で充電する」とあるが、室内での充電はよほど明るくない限り難しいと考えたほうがいい。筆者の自宅では、ほぼ充電されなかった。
1日1〜2時間の使用なら、日中窓際に放置していれば充電ケーブルでの充電は必要なかった。4〜5時間まとめて使用すると、数日充電してもフルには戻らなかったので、使用時間や頻度によってはソーラー充電だけでは厳しいかもしれない。
結論としては、adidas RPT-02 SOL同様、充電の手間が抑えられ、ストレスフリーな使用感だった。
音質をはじめとしたイヤホンの機能やデザインも申し分なく、電気代と充電の手間を削減できると考えれば、2万7500円という価格は決して高くないと思う。個人的には、長く愛用したくなる製品だった。
唯一気になったのは充電ケースのサイズ感。洋服にポケットが少ない、あっても小さい、また荷物が多いなどの場合、持ち歩くものは極力小さくて軽いほうがありがたい。自動電源オフの機能があるので、充電ケースは自宅の窓際に置いておき、本体のみを持ち歩いてもいいかもしれない。
adidas RPT-02 SOLやurbanista PHOENIXの体験を踏まえれば、充電不要の世界は実現しているといえるだろう。これを世界中の人が使ったら、どれほどの環境インパクトが生まれるだろうか。ソーラー充電への期待は高まるばかりだ。
小林香織
フリーライター/北欧イノベーション研究家
「自由なライフスタイル」に憧れて、2016年にOLからフリーライターへ。【イノベーション、キャリア、海外文化】などの記事を執筆。2020年に拠点を北欧に移し、デンマークに6ヵ月、フィンランド・ヘルシンキに約1年長期滞在。現地スタートアップやカンファレンスを多数取材する。2022年3月より東京拠点に戻しつつ、北欧イノベーションの研究を継続する。
公式HP:https://love-trip-kaori.com
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