11月、太陽電池を搭載した充電不要のワイヤレスヘッドホン「adidas RPT-02 SOL」が日本で発売された。価格(税別)はアディダスの公式サイトで、2万7500円。欧米では8月23日に発売されており、一足遅れて日本に上陸した。
「進化する北欧イノベーションの今」を届ける本連載。今回は、adidasの新製品「RPT-02 SOL」の使用感をレポートしたい。実は、同製品に使用されているのはスウェーデン発ユニコーン「Exeger(エクセジャー)」が開発した次世代の太陽電池「Powerfoyle(パワーフォイル)」だ。
Powerfoyleの何がすごいかは、以前紹介したが、インドア環境でも光充電ができ、どんなデザインにもマッチするカスタマイズ性を持つ。実際、ケーブルで充電せずに使い続けられるのか。試してみた。
RPT-02 SOLは、自然光と人工光を取り込んでバッテリー寿命に変換できるのが、最大の特徴だ。IPX4の耐水性や最大80時間使用できるバッテリーも備える。
製品の51%がプラスチックで構成され、そのうち87%が使用済みの再生PC-ABSと再生ナイロン(電子部品のプラスチックを除く)と、環境に配慮した仕様。重量は256gで、普段ヘッドホンを使わない筆者は「持ち歩くには重い」と感じるが、一般的なヘッドホンと比較すると平均的な重さのようだ。
同製品のヘッドバンド部分に、太陽電池のPowerfoyleが搭載されているのだが、表面にテクスチャが施されており、太陽電池といわれてもわからない。見た目は、年代問わず使えそうなクールなヘッドホンという感じ。女性視点だと、もう少しデザインにやわらかさがほしいところ。ただ、普段づかいでもファッションに合わず浮いてしまうことはなかった。
同製品は最大80時間の再生が可能なので、日々の使用時間が短ければ、かなり長い間、充電せずに済みそうだ。
ケーブルは付属されていないが、USB Type-C(USB-C)ポートが接続可能で一般的な充電もできる。今回は入手してから10日ほど窓際に放置しておいたところ、76%まで充電されていた。そこからしばらく、太陽光発電を利用しながら使ってみた。
筆者の場合、ヘッドホンを使用するのは主に移動中で、1日の使用時間は平均1〜2時間となる。使わないときは光が当たりやすい窓際に置いておいたところ、消費した分がちょうど太陽光で補填されるプラスマイナスゼロの状態になった。
2時間使用して2%消費するが、窓際に置いておく、あるいは野外で装着しながら歩いている間に光を取り込み、翌日までに消費分を獲得できるという具合だ。
光に応じた充電状況を把握するには、ヘッドバンドの内側にあるライト インジケーターが役立つ。リングの数が多いほど充電状況が良く、光が直に当たる日中の窓際はリングが最大に。この写真のように太陽が陰りかけている夕方だと、野外でも充電状況は良くなかった。
充電残量、光充電の消費、獲得量は専用アプリ「adidas Headphones)で確認できる。アプリでは、イコライザーの選択やボタン操作のカスタマイズも可能だ。Powerfoyleを開発したExegerによれば、屋外、屋内どちらも光が強いほど充電効率が良くなるという。室内光でも少々の充電はできるとされているが、筆者の自宅ではデータ上はゼロだった。
結論として、筆者のように短時間の利用を繰り返す程度なら、窓際に長時間置いておけば充電ケーブルで充電せずに使い続けられそうだ。冬でこの状況なので、春夏なら長時間再生しても太陽光だけで補えるかもしれない。
10日間ほどの利用で感じたのは、充電から開放されるのが、いかにストレスフリーであるかということ。日光に当て続ける必要はあるが、ハードルが高いとは感じない。普段はヘッドホンよりイヤホンを好む筆者でも、使い続けたいと思えた。
トレーニングやランニング用に作られている同製品は、安全性を考慮してアクティブノイズキャンセリング機能はない。しかし、音質や聞こえ方への不満は生まれなかった。
同製品は、パーツを取り外して手洗いができる特徴もある。写真のようにインナーのヘッドバンドとイヤークッションが、簡単に取り外せる。清潔感を保ちながら、長く愛用できそうだ。
筆者が個人的にRPT-02 SOLより期待しているのが、スウェーデンのオーディオメーカーUrbanistaから近々発売予定の「Urbanista Phoenix」。これは、Powerfoyleが搭載された世界初の充電不要のワイヤレスイヤホンだ。
今回のRPT-02 SOLの体験を踏まえれば、このイヤホンも充電不要で使い続けられるだろう。Exegerからサンプルが届き次第、Urbanista Phoenixの体験レビューもこの連載で紹介する予定だ。
Exegerは、欧米に加え日本も重要市場と位置づけている。先日、パシフィコ横浜で開催された展示会「EdgeTech+ 2022」のために来日したメンバーにたずねたところ、すでに複数の大手日本企業との共創が始まっているそうだ。
ExegerのCOO、兼Deputy CEO(副社長)のGeorgios Foufas氏は、「当社は、インドア、あるいはインドアとアウトドアの両方で使えるハイブリッドの太陽電池のマーケットリーダーである」と自信を示した。同社の動向を引き続き、追っていきたい。
小林香織
フリーライター/北欧イノベーション研究家
「自由なライフスタイル」に憧れて、2016年にOLからフリーライターへ。【イノベーション、キャリア、海外文化】などの記事を執筆。2020年に拠点を北欧に移し、デンマークに6ヵ月、フィンランド・ヘルシンキに約1年長期滞在。現地スタートアップやカンファレンスを多数取材する。2022年3月より東京拠点に戻しつつ、北欧イノベーションの研究を継続する。
公式HP:https://love-trip-kaori.com
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