顔映像から浮腫の度合いを推定--NEC、世界初の技術を開発

 日本電気(NEC)は2月10日、筑波大学と疾患や体調の変化などにより皮膚組織に水分がたまる症状である浮腫(むくみ)の度合いを、AIを活用して顔映像から推定する技術を開発したと発表した。AIを活用し、顔映像から浮腫を推定する技術は世界初になるという。

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 浮腫は、腎疾患や心疾患、肝疾患などさまざまな原因で生じるが、患者数は透析34万人、心不全120万人と推定されている。浮腫の状態を日常的に確認する技術は、原因となる疾患の状態の変化を把握し、慢性期の悪化防止や早期発見につながるため、実現が期待されていた。

 従来、透析患者は浮腫の簡易計測手段として体重計を用いている。同社によると、今回開発した、透析患者の顔映像から浮腫の度合いを推定する技術については、従来の体重測定による計測を代替できる精度であることを確認しているという。

 具体的には、複数の患者の顔映像を用いて、顔に表出するさまざまな浮腫の情報を抽出するAIモデルを事前に学習し、推定モデルを構築している。

 その際、浮腫と相関のある体重を教師データとして用いることで、浮腫の有無や度合いを高精度に事前学習する方式を開発。事前学習したAIモデルをベースとすることで、利用する患者のデータが少量でも、その患者の浮腫に合わせたAIモデルを転移学習し、推定精度を高めることができると説明する。

 実際に、39名の透析患者データを用いて行った技術検証では、正解率85%で浮腫の有無を判別し、体重変化の平均絶対誤差0.5kgで浮腫の度合いの推定が可能であることを確認した。

 なお、透析前後において浮腫の有無の変化が生じることと、その際の体重変化が余分な体液の変化とみなせることに着目。客観性のある教師データとして用いているという。

 同社によると、平均絶対誤差は人が外観から判断が難しい浮腫の変化が判別できる水準であり、疾患の悪化の早期発見につながるとしている。

 加えて、スマートフォンやタブレット端末のカメラで撮影した顔映像で推定ができるため、外出先や車いすの利用者でも負荷なく利用できるという特徴がある。場所や環境の制限を受けずにデータ取得できるため、食事や排泄による浮腫度合いの経時変化の分析なども可能だという。

 両者は今後も連携し、同技術の向上のため更なるデータ集積を図るとともに、医療介護・ヘルスケア分野での具体的な応用に関しても探索していくとしている。2024年度の実用化を目指す。

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