CES 2023では、数多くのロボット、テレビ、電気自動車のほか、毛髪に色付けできるプリンターなどがお披露目された。一方で、再充電可能なバッテリーを搭載する「iPhone」などのデバイスに向けた次世代ワイヤレス充電規格「Qi2」もCESに合わせて発表されていた。「iPhone 14」「Samsung Galaxy S22」「Google Pixel 7」といったスマートフォンに採用されている現行のワイヤレス充電規格「Qi」の後継となるものだ。
Qi2では、磁石によって端末が充電パッド上の最適な位置に置かれ、効率的に充電できる。どこかで聞いたような話だが、それは2020年発売の「iPhone 12」で導入されたAppleの充電技術「MagSafe」とほぼ同じ仕組みだからだろう。事実、Appleは350を超える企業が加盟するワイヤレスパワーコンソーシアム(WPC)に参加しており、Qi2を構成する「Magnetic Power Profile」の開発に協力している。
Magnetic Power ProfileはMagSafeと全く同じものではないが、Qi2が利用できるデバイスの幅を、拡張現実(AR)/仮想現実(VR)ヘッドセットなどにも広げる可能性がある。また、充電速度も速くなる。現在、Qiによるワイヤレス充電は最大15Wで、これはiPhoneが採用しているMagSafeの最大出力と同じだ。
WPCのエグゼクティブディレクターPaul Struhsaker氏はプレスリリースで次のように述べている。「Qi2は、最適な位置合わせによって、端末もしくは充電器が正しく置かれていないときに発生するエネルギーロスを減らし、エネルギー効率を向上させる。また、毎日つないだり外したりすることでプラグが壊れたりコードを損傷したりするが、そのために有線の充電器を買い替えると埋め立てゴミが増える。Qi2でそれを減らせることも重要な点だ」
さらにQi2では、アクセサリーの可能性も広がる。今iPhone用として生産されているMagSafeや磁石を使ったアクセサリーの数を考えてみるといい。ケース、三脚型充電スタンド、財布などあらゆるものが揃っている。Qi2対応の「Android」スマートフォンでも同様のアクセサリーが揃う可能性がある。
さまざまな形状やサイズのAndroidスマートフォンがあることを考えると、Qi2とMagnetic Power Profileのおかげで、異なるスマートフォン間で、あるいは異なるデバイス間でも共通して使えるアクセサリーが登場するかもしれない。Qi2は、USB-Cコネクターのように汎用性が高い。しかも、全て同じに見えるが実際には異なるUSB-Cケーブルが起こす混乱とは無縁だ。Thunderbolt 3対応のUSB-CケーブルとUSB 4対応のUSB-Cケーブルの違いを見分けるのは困難だ。
Qi2のMagnetic Power ProfileはMagSafeと同じではない。MagSafeも磁石を使ってはいるが配置が異なる。そのためMagSafe対応の充電器をQi2対応のスマートフォンで使うことはできない。AndroidスマートフォンでMagSafeが使えるようにする磁石ケースを作っているメーカーもあることはお知らせしておくべきだろう。
欧州連合(EU)の新しい規則によって、iPhoneもLightningからUSB-Cに移行することが求められる中、Qi2はここ数年うわさされてきたポートレスなiPhoneの登場を促すものになるかもしれない。またQi2は独自規格ではないため、無線充電についてAppleがEUから指摘を受けることもなさそうだ。
総じてQi2には多くの期待が持てる。AppleがMagSafeをQi2のMagnetic Power Profileで置き換えるかは不明だ。しかしQi2は、競合する企業であっても、人々の役に立つ規格について合意できるということを示している。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス