毎年2月には、親子たちのドラマがある。首都圏の中学入試のピークは2月1〜3日。志望校を目指す小6生と保護者は、連日受験会場へと向かう。試験結果によっては、直前出願可能な学校に出願し日程を組み直す。2回、3回と試験を行う学校もあり、志望校合格を目指して同じ学校に複数回挑む受験生も少なくない。納得のいく合格を勝ち取るまで、4日、5日と受験日程は伸びていく——。
教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が本書で描き出したのは、中学受験を選んだ3組の親子たちのリアルだ。実話をもとにしたフィクションであるが、事実は小説よりも奇なりを体現している。第三者の著者の視点で描かれるからこそ、親の気持ちも子の気持ちも嫌というほどよくわかる。入試本番期間の親子の壮絶な心情は、痛々しくも生々しい。
中学受験は親の受験と言われることがあるが、それは親のサポートが必要だというような単純な話ではないようだ。著者の言葉を借りれば、中学受験によってあぶり出されているのは、親としての未熟さである。全員が第一志望に合格できるわけでもなければ、努力が実るともかぎらない。そんななか、親が結果しか見ていなければ、子どもは「合格」以外に報われる道がなくなってしまう。中学受験を悔いなく終わるためには、親が一歩成長し、ありのままの子どもを受け入れる姿勢が必要であるようだ。中学受験のリアルを通して、よりよい親子のありかた、よりよい生き方に目を向けさせてくれる良書である。
今回ご紹介した「勇者たちの中学受験 わが子が本気になったとき、私の目が覚めたとき」の要約記事はこちら。この記事は、ビジネスパーソンのスキルや知識アップに役立つ“今読むべき本”を厳選し、要約してアプリやネットで伝える「flier(フライヤー)」からの転載になります。
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