地方DXを成功させるエレメントは「6+1のNO」--計画や実行フェーズでポイントになる考え方

根岸やすゆき (ランサーズ)2023年01月12日 10時00分

 前回、「全国行脚で実感した、地方が求める真のDX--「効率よりも売上」の本音に向き合う」と題して、地域が求める真のDXについて寄稿させていただいた。さまざまな地域に足を運び、中小企業の経営者、自治体の方々と対話するだけでなく、実際に行動に移してきた。まだごく一部の企業や地域だけではあるものの、実行したプロジェクトはすべて成功している。もちろん筆者だけで実現したわけではない。自治体の方、地域企業の経営者、一緒にプロジェクトを推進したフリーランスたちの力の賜物である。

 一方で、上手くいかなかった地域や企業もある。正しくお伝えするならば、上手くいかなかった以前に、実行に発展さえしていない。成功も失敗もできていない。その差は何か。地域、業種、課題、企業など、毎回違いはあるものの、成功するプロジェクトには共通の要素がある。今回はそのエレメントをまとめてみた。

 なお、予めお伝えしておきたいのは、一般的なマーケティング論や新規事業の立ち上げスキルといった内容ではなく、成功しているケースとそうでないケースの差分に関するTIPSである、ということを踏まえて説明していく。

※出典元:筆者作成
※出典元:筆者作成

 結論から先に説明すると、上記の図のとおりになる。改革の計画を立てるフェーズと、それを実行するフェーズに分かれて、それぞれ3つずつ要素がある。このうちどれかひとつでも当てはまると、成功確率がぐんと下がる。というよりも、話が進まないので、成功も失敗もできないケースが多い。逆に、すべてクリアすればどんな状況でも打破できるだろう。

 以下にひとつひとつ解説していきたい。

地方DX成功のエレメント -計画フェーズ-

 まずは、計画フェーズのエレメントから紹介する。

※出典元:筆者作成
※出典元:筆者作成

◆NO先入観

 どこに言っても一定以上耳にする声がある。「いや、うちには魅力なんてないよ」。ハッキリ言ってそんなことはほとんどない。ただ、人には慣れがある。日常的なことは特別感がないから、本当は魅力的でもそれを感じづらいこともあるだろう。

 解決するには、先入観のない人の目を入れることだ。一番手っ取り早いのが外部の目。特に、その地域をあまり知らない人だ。思い入れが予めあったり、足を運ぶ前にいろいろ詳しく知ってしまうと素直な視点に欠ける可能性がある。だからこそ筆者は、手がけてきたプロジェクトについて、交通手段以外の下調べは一切しなかった。無責任・不真面目と思われることもあるのだが、先入観のなくす意図があってのことである。

【POINT】

  • 魅力がない地域や企業なんてない。気づけていないだけ
  • 予備知識のない外部の目を入れよう

◆NOバズワード

 「DXをせねば」「デジタルトランスフォーメーションしなければ」といったバズワードは廃れるもの。いちいちそんな言葉に右往左往する必要はない。ただ、そのワードがバズるには何か理由がある。本質は何だろうか。バズワードを辞書で引いて意味を調べたまま理解するのではなく、その単語がなぜ広まっているのかを考えることは大切だと考えている。

 ちなみに、DXは、デジタル化はあくまで手段であり、時代の変化にあわせた大胆な構造改革が必要な状況になっているということだと筆者は理解している。だからこそ勝手に、「大胆(Daitan)トランスフォーメーション」だと伝え続けている。

【POINT】

  • 流行はすぐ廃れる。でも流行する背景をしっかり考えることは大切
  • 大胆に事業の構造改革を実行することが求められている

◆NO前例表面模倣

 前例を参考にすることは悪くない。ただ、得てして前例の事象をそのままマネしがちだ。場所も時間も内容も手がける人も、何もかも違うのに、なぞるように実行しても上手くいかない。きっと、誰もがそんなことは分かっていると思う。

 なぜそのままマネしようとするのか。それは、意思決定者やステークホルダーに説明しやすいから。だが、本当に大切なのは説明よりも実現することにあるはず。いろんなことが曖昧になっている現代ではなおさらだ。だからこそPDCAからOODAループと言われたりもする。前例そのものを模倣するのではなく、その前例が成功した背景をじっくり観察し、決断していく。そのための参考材料として扱おう。

【POINT】

  • 成功事例は参考にしたい。でもそのままマネしても上手くいかない
  • 模倣すべきは、成功要因の背景。それを自分たちに置き換えて活用する

地方DX成功のエレメント -実行フェーズ-

 続いて、実行フェーズのエレメントについて。

※出典元:筆者作成
※出典元:筆者作成

◆NO自前主義

 自分では出来ないし、出来る社員もいない。できる人も知らない。だから仕方ない……。これは本当によく聞く意見だ。それに対して、筆者は「絶対いますよ、ただその人とまだ出会ってないだけですよ」と答えている。インターネットが普及しただけでなく、テレワーク・リモートワークが浸透した現在においては、いくらでも適任の人材を探す方法はある。

【POINT】

  • 自分たちが出来ないことがあってもいい。誰でも得意不得意はある。
  • 自分たちで出来ないこと、すなわち不可能、ではない。

◆NO全体主義

 あの人の意見も聞かねば。この人の主張も受け入れなければ……。これもよく聞く話だ。もちろんその人の声をないがしろにしていいわけではない。ただ、筋を通すことと、全部を闇雲に取り入れることは全く別の話。あれもこれもと取り入れると、何の特徴もない実行策になりがちで、すべてが中途半端になる。当然、結果も伴わない。

 優先順位をつけることと、誰かや何かを優遇することは全く別。特に改革のスタート時は、断腸の思いで潔くフォーカスすることが大切だ。

【POINT】

  • ターゲットと領域をセグメントしよう。
  • 改革には順番がある。最終目標から逆引きで決断しよう。

◆NO完璧主義

 完成度を高めようとする意識は大切なこと。でも、最初から完璧はあり得ない。ましてや自分たちの考えていることがパーフェクトだなんて、確率論的にはゼロに近いはず。お試しでもいいから積極的にアウトプットし、その反応をみて改良し続けるやり方のほうが時代にもフィットしている。思考だけで100点満点を最初から狙うのではなく、70点かもしれないけど世に出してみる。仮にそれが50点という評価だったとしても、事実をもとにしたほうが改善がしやすいもの。完璧主義のスタンスでいたり、さらに一度や二度上手くいかないからといって止めてしまうよりも、続けて取り組めばちゃんと目標にたどり着ける。

【POINT】

  • プロトタイプ状態でもアウトプットしよう。
  • やってみる、やってみる、やって見続ける。

計画フェーズでも実行フェーズでも重要な要素

 最後に、計画フェーズでも実行フェーズでも重要な要素について。

※出典元:筆者作成
※出典元:筆者作成

◆NO他人事

 筆者が何よりも大切な要素と考えているのは「NO他人事」。本気度が問われると言ってもいい。少しエモーショナルに聞こえるかもしれないが、地域の人も何か施策を実行する人も行政も、このプロジェクトに関わる人すべてが本気で取り組むことが欠かせない。少しでも自分事でない人がいたら、たちまちそこから崩れていく。

 余談だが、だからこそ筆者は、プロジェクトに関わる人のコミットメントやコミュニケーションを重視した体制をつくってきた。どんなプロジェクトでも困難は必ず迎えるもの。それを乗り越えようと共創するか、やっぱり難しいと断念するかの分かれ道はそこでしかないと痛感している。

 以上が、地方DXを成功に導くエレメント。あくまで筆者の見解ではあるが、2年で全国7万kmを移動し、様々な立場の人と対話し、議論だけではなく実行してきて実感したことや、カッコよく整理された理論ではないが、愚直に実行をしたからこそ得られた手触り感に基づいたものとなっている。地域一体でも、その地域のひとつの企業でも、この要素は活用できると考えているので、もしよかったらぜひ参考にしていただきたい。

 2月1日に「福岡実証実験フルサポート事業「離島DXプロジェクト」事例・結果・ノウハウ共有セミナー」と題し、2022年に筆者が手がけた離島DXプロジェクトの成果・ノウハウ発表会を開催する。オンライン・オフラインのハイブリッドで開催するが、オフラインの現地会場では、DXプロジェクトのリーダー陣へ実際に苦戦していることなどを相談し、成功の第一歩となる課題整理を体験できるワークショップも予定している。もっと詳細を知りたい方は是非ご参加いただきたい。

 今回は、地方DXにおける地域やローカル企業の成功ポイントを紹介した。エレメントの一部にあるように、外部の仲間を集めることもキーポイントとなるなかで、関わる外部の人はどういう姿勢・視点で取り組めば本当に貢献できるのか。次回は、地方DXに関わる個人側の成功エレメントを紹介したい。

根岸やすゆき

ランサーズCEvO(チーフエバンジェリストオフィサー)

1978年 東京都生まれ。フリーライターとしてキャリアをスタート。2003年、人材総合サービスを展開するエン・ジャパン株式会社に入社。制作部門長、プロ-モーション本部長を歴任。2013年、ランサーズに参画し、取締役CMOを経て、現職。「地方×DXプロジェクト」などのプロジェクト責任者を務め、新しい働き方、新しい組織の育て方、新しい事業の作り方を全国に普及させる活動をしている。働き方系・マーケティング系セミナー登壇実績多数。

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