シャープは、米ラスベガスで開催されている「CES 2023」に出展。世界最大クラスとなる120V型の「AQUOS XLED」や、スマートフォン接続型のVR用ヘッドマウントディスプレイを参考展示するなど、数々の初展示が相次いだ。
シャープが出展したのは、主要展示会場とは異なり、ウィン・ラスベガスホテルのボールルーム「Petrus」である。CES 2023の主要展示会場のひとつであるベネチアンコンベンションセンターに隣接している。
シャープが取り組む「ESGに重点をおいた経営」を具現化する技術や商品を、「New Energy」「Automotive」「AR/VR」「TV」の4つのテーマで展示した。
New Energyでは、カーボンニュートラルに貢献する最新技術を展示。なかでも、2022年10月に、CEATEC 2022に展示された屋内光発電デバイス「LC-LH」を海外初出展し、注目を集めた。
屋内光を高効率で電気に変換可能な色素増感太陽電池と、液晶ディスプレイ技術を融合したもので、時計や電卓などに用いられている一般的な太陽電池に比べて、約2倍の発電効率を実現する。
シャープ 社長執行役員兼CEOの呉柏勲氏は、2023年の年頭所感のなかで、「さまざまな場面で小型デバイスやセンサーなどが活用されているが、その電源にLC-LHを活用すれば、使い捨て電池の交換コストの削減はもとより、電池の廃棄による環境負荷の低減にもつながる」と言及。さらに、「LC-LHのように、シャープには、少し見方を変えたり、別の技術と組み合わせたりすることで、世の中を大きく変える可能性を秘めた技術やアイデアがまだまだ数多く眠っている。今後もこれらの発掘に向けた取り組みを加速し、新たなシャープらしい事業を次々と創出していく考えである」と述べている。呉社長兼CEO自らも注目している技術のひとつといえる。
また、次世代の太陽電池として注目を集めているペロブスカイト太陽電池も参考展示を行った。発電効率が高く、薄型、軽量で、フレキシブルな次世代の太陽電池であり、低コスト、省エネルギーでの生産が可能な特徴を持つ。耐荷重の問題や、形状の問題などから、これまで太陽電池の設置が困難だった場所への設置が可能となる。
Automotiveでは、安全や環境に配慮した走行を支援する各種デバイスを展示した。ここでは、視野角制御ディスプレイを活用した助手席用モニター「Passenger Information Display」を海外初出展。走行時は運転席から表示が見えないように視野角を制御することで、ドライバーが運転に集中できるように促すことができるという。
また、「ドライバーモニタリングシステム」も初めて出展。ディスプレイと一体となったカメラモジュールシステムによって、ドライバーを見守ることができる。さらに、高感度の圧力センサーとハプティクス技術を融合した新開発のディスプレイである「クリックディスプレイ」も海外初展示した。そのほか、人工衛星などの宇宙や航空分野、電気自動車(EV)などの移動体への応用が可能な世界最高の変換効率32.65%を実現した化合物太陽電池を出展した。
AR/VRのエリアでは、各種デバイスやヘッドマウントディスプレイ(HMD)の展示が相次いだ。
注目を集めたのが、参考出展をしたVR用超軽量HMDプロトタイプである。シャープの最新デバイスである超高解像度ディスプレイや超高速オートフォーカスカメラ、超小型近接センサーを搭載したHMDで、約175gという軽量化を実現している。
ディスプレイは、片眼2K×2の4Kによる高精細映像と、120Hz駆動による滑らかな表示を可能にしたほか、リアリティあふれる映像によって、高い没入感を体験できる。さらに、ポリマーレンズの採用によって、超高速オートフォーカスに対応した独自のRGBカラーカメラモジュールを搭載。現実世界の周囲の様子を映像として取り込んでカラー表示する「カラースルー映像表示機能」や、VR空間上の一部に現実世界の周囲の映像をウインドウ表示する「POPUP映像表示」機能にも対応している。ポリマーレンズの厚みを変化させることでピントを合わせるため、一般的なカメラよりもすばやくピント合わせが可能になるほか、ピントの位置が動いても画角が変わらないため、映像に酔いにくいというメリットも生まれている。さらに、2つのモノクロカメラを搭載し、装着者の手の動きを認識しながら、VR上の操作ができる「ハンドトラッキング機能」にも対応しており、操作用のコントローラーがなくても直感的な操作が可能になっている。
長時間使用しても疲れにくく、コンパクトに折りたためることから、外出先などへの持ち運びにも便利であり、VRの利用シーンを広げることにも貢献しそうだ。
そのほか、AR/VRの展示では、高さ2mm以下という世界最薄となる超小型カメラモジュールを出展。アイトラッキングなどのセンシング用途での活用を提案していたのに加えて、小型ToF型距離センサーを展示し、HMD本体やコントローラーに搭載することで、HMD装着者の人や物への衝突抑制に活用するといった用途での提案を行っていた。
TVの展示では、AQUOS XLEDのグローバル展開モデルを初出展した。シャープでは、CES 2023への出展にあわせて、米国テレビ市場への本格的な再参入を発表しており、そのフラッグシップモデルとなるAQUOS XLEDを、日本市場以外にも展開することを明らかにした。
AQUOS XLEDは、mini LEDバックライトと量子ドット技術が生み出す高いコントラストと、色表現力が特徴であるほか、画面上部と下部にスピーカーを配置した音響システムを採用。その場にいるような臨場感を味わえる新世代のテレビと位置づけている。AQUOS XLEDは、米国での販売に続き、カナダやメキシコ、中国、台湾、ASEAN、中近東でも販売を開始する予定だ。
また、シャープでは、米国テレビ市場への本格再参入にあわせて、「Roku」を搭載した有機ELテレビ2機種、液晶テレビ4機種を、米国市場で販売することを発表。普及価格帯にも展開する。
一方、展示会場では、世界最大クラスとなる120V型のAQUOS XLEDを初公開。受信用チューナーは非搭載だが、XLEDならではの大画面と高コントラストを活かし、商業施設でのデジタルサイネージやパブリックビューイング用ディスプレイとしての提案のほか、ホームシアター用途でも活用ができるとしている。
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