ソニーグループは、米ラスベガスで開催されているCES 2023において、1月4日(現地時間)、プレスカンファレンスを同社ブースで開催。ソニー・ホンダモビリティのEV「AFEELA(アフィーラ)」のプロトタイプを発表したほか、2023年2月に発売する「PlayStation VR2」の説明や、「PlayStation 5」が累計3000万台以上を完売したことに加えて、2023年8月に予定されているレーシングゲーム「グランツーリスモ」の実写映画化の映像を先行公開。さらに、1月3日にソニー初の超小型人工衛星「EYE」を打ち上げたことも報告するなど幅広い内容となった。
CES 2023のソニーブースでは、「Moving People Forward」をテーマに、人の心を動かし、エンターテインメントの可能性を広げるメタバースやモビリティなどの領域において、さまざまな技術を提供。同時に、クリエイターとの共創に焦点を当てた内容で構成しており、プレスカンファレンスでもその観点から説明が行われた。
ソニーグループ 会長兼社長 CEOの吉田憲一郎氏は、「2022年は不透明な1年であったが、一方で日常への回復が望まれた1年でもあった。変わらなかったのは、喜び、好奇心、驚きを感じる瞬間や、心が動き、人とつながる体験をしたいという普遍的な願いであった。ソニーでは、その瞬間を『感動』と呼んでいる。ソニーグループの経営の方向性はクリエイターやユーザーといった人に近づくことであり、ソニーでは人に焦点を当てると同時に、地球への影響も考えている。『クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす』というソニーのPurpose(存在意義)の推進には、感動をつくりだすクリエイターとの協業が欠かせない。クリエイターのアイデア、ビジョン、ストーリーは人々を動かす。ソニーグループは、クリエイターのクリエイティビティをサポートするための新たな方法を常に模索している」と発言。CMOSイメージセンサーやバーチャルプロダクション、小型シネマカメラの「VENICE 2」など、ソニーグループならではの技術や製品がクリエイターを支えていることを強調した。
さらに、吉田氏が言及したのが、ライブ体験の重要性である。「エンターテインメントの本質は、時間や空間を共有するライブである。だが、コンサート会場に入れるファンの数には限りがある。仮想空間は誰にでも開かれており、ソニーは、ライブ体験の幅を広げるために、メタバースやモビリティの領域で、現実世界と仮想空間をつなげることにテクノロジーで貢献していく。メタバースは、人と人がつながる新たな空間である。コンピューティングとネットワーク技術の進歩によって生まれた空間ともいえる。クリエイションとインタラクションの技術で仮想空間にライブ体験を届け、それを、現実社会とエキサイティングな方法でつないでいく。あらゆるユーザーが仮想空間に参加できるように、新たな方法を見つけ出すことにやりがいを感じている」などと語った。
ソニーグループでは、英プレミアリーグのマンチェスター・シティ・フットボール・クラブとともに、現実世界と仮想空間を融合した次世代のオンラインファンコミュニティの実現に向けた実証実験を行っている。仮想空間では、同チームのホームスタジアムであるエティハド・スタジアムにいるかのようなメタバースコンテンツが体験でき、世界中のファン同士が交流し、チームとファンのエンゲージメントを高めるためのさまざまなサービスの提供を目指しているという。
また、2023年2月22日に全世界で発売するPlayStation VR2により、インタラクティブで、没入感が高い次世代バーチャルリアリティが体験できることを説明。ソニー・インタラクティブエンタテインメント 社長兼CEOのジム・ライアン氏は、「ゲームのなかに入り込んだかのような感覚を高めた新世代の仮想現実が実現できる。発売にあわせて、グランツーリストをはじめ、30種類以上のコンテンツを用意しており、次世代のセンシング機能とPlayStation 5の性能を活用することで、プレイヤーを魅了し、これまでにない没入感を実現する。だが、これは始まりにすぎない」と語った。グランツーリスモ7は無償のアップデートで、PlayStation VR2で利用できるようになるという。
会見では、PlayStation 5の新たなコントローラとして、「Project Leonardo」を発表。身体に不自由がある人でも、簡単に、快適に長い時間に渡ってゲームをプレイできるようになるという。詳細は近日中に発表する予定だ。
さらに、PlayStation 5の供給状況についても触れ、「2022年末から、PlayStation 5の供給状況が改善し、12月のPlayStation 5本体の実売台数は過去最大になった。累計で3000万台以上を完売した」と報告した。
一方、スポーツのプレイデータをもとに、新たなスポーツ観戦を実現する取り組みについても説明。プレイデータをもとに、リアルタイムでバーチャルコンテンツを制作し、ファンの手元に届けたり、プレイデータを可視化してトレーニングに活用したり、選手のプレイを再現したりできる。ここでは、ソニーグループの「Hawk-Eye Innovations」や「Beyond Sports」「Pulselive」が持つ各種技術を活用することになるという。
ちなみに、ソニーグループでは、PlayStation向けゲームと、映画やテレビ番組、アニメなどとの連携を強化しており、2023年8月にはレーシングゲームの「グランツーリスモ」を実写映画化し、公開する予定が明らかになっている。プレスカンファレンスでは、メガホンを取る映画監督のニール・ブロムカンプ氏と、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント モーション・ピクチャー・グループ プレジデントのサンフォード・パニッチ氏、PlayStation Productions 統括責任者のアサド・キジルバッシュ氏が登壇。ブロムカンプ監督は、「現実の世界とビデオゲーム、レースの世界が融合する作品を制作するチャンスになった」と抱負を述べた。ステージでは、実際の映像が初めて公開された。
今回のプレスカンファレンスで最大の目玉となったのが、ソニー・ホンダモビリティによるEVのプロトタイプの発表だ。
ソニーグループの吉田氏は、「モビリティは技術進歩によって、移動空間が進化し、感動空間を作ることができる。私たちの未来のモビリティは移動手段以上のものを実現することになる。この領域では、ホンダとのジョイントベンチャーを通じて取り組みを加速させていくことになる」と述べ、ソニー・ホンダモビリティ 会長兼CEOの水野泰秀氏をステージに招き入れた。
ソニー・ホンダモビリティの水野氏は、「今日は、私たちのビジョンを共有するとともに、エキサイティングなアップデートについて話したい」と切り出し、「モビリティ・テック・カンパニーとして、ソフトウェア中心の最先端技術を通じて、モビリティに革命をもたらしたいと考えている。Autonomy、Augmentation、Affinityの『3A』が目指すクルマの姿になる。人々の移動の歴史に新たな章を刻むことになる」と発言。その上で、「私たちのブランドを紹介する」として、ステージ上に、フロントグリル部に「AFEELA」のブランドロゴを光らせたプロトタイプのEVが登場した。
「移動体験の中心にあるのはFEEL(感じる)という言葉であり、それがブランドの中央にある。人がモビリティに対してインテリジェントを感じ、モビリティがセンシングとAI 技術を活用して、人や社会を理解するというインタラクティブな関係性を表したブランドである。今後、プロトタイプの開発を促進し、2025年前半から先行受注を開始し、2025年中に発売。最初の出荷は、2026年春に北米市場向けに行う。デザインで目指したのはモビリティの新たな価値基準の創出である。既成概念にとらわれず、車両設計の根底にあるフィロソフィーを再構築したい」と語り、「多様なインスピレーションと、最先端テクノロジーに結びつけ、モビリティ体験を創造するモビリティ・テック・カンパニーとして前進していく」と抱負を述べた。
AFEELAのフロント部分に設置されたMedia Barにはさまざまな情報を表示し、クルマが意思を持った形で周囲の人に対して表現を行うことになる。Media Barは、パートナーやクリエイターのコミュニティなどともに活用方法を検討していくという。また、ソニーが持つセキュリティ技術と、ホンダが持つ安全技術を組み合わせ、さらに車内外の45個のカメラおよびセンサーで、安心安全を実現しているという。
「車載カメラやTime of Flightセンサーは、ドライバーの状態と車両の状態を検出して、事故を防ぐことができる。このセンシング技術と、800TOPSの高性能SoCを組み合わせ、世界最高基準の自動運転と、先進運転支援システムを実現することを目指す」と述べた。
また、「安心安全の上に成り立つ移動空間では、クラス最高のエンターテインメントを提供する。 映画やゲーム、音楽に加えて、培ってきたUX、UI技術を活用して、新しい体験を提案していく」とした。
AFEELAでは、エンターテインメントおよび産業用アプリケーションの構築に使用されるEpic GamesのUnreal Engineを活用することを発表。車内エンターテインメントサービスの充実を図る。「エンターテインメントの分野でも時代を先導することができるコネクティッドカーにしていきたい」(Epic Games CTOのキム・レブレリ氏)とした。
さらに、インテリジェントモビリティを実現するには、継続的なソフトウェアによるアップデートと、高性能コンピューティングが必要だとして、クアルコムのテクノロジーを活用していることに言及。最新SoCであるSnapdragonの技術を採用する予定であることを明らかにした。「ソニーグループが取り組んできたモビリティロードマップの重要なマイルストーンを達成するために、サポートをしてくれたパートナーがクアルコム。今後も、長期的な技術パートナーシップを築いていく」(吉田氏)とした。
クアルコム 社長兼CEOのクリスティアーノ・アモン氏は、「クアルコムは、すべての人を接続し、インテリジェントにするという使命を負っている。そのため、私たちは会社を変え、モバイルで開始した技術ロードマップを拡張し、すべてのデバイスを接続し、高性能コンピューティング、インテリジェンスを備えたものにしていく取り組みを進めている。100%接続されたソフトウェア定義の車両に変える機会が訪れており、そこにSnapdragon Digital Chassisというモビリティの未来のための新たなプラットフォームを用意した。新しい経験を将来のモビリティのために提供する」と語った。
ソニーグループの吉田氏は、最後に、「ソニーグループは、11万人の従業員とともに限界に挑戦し続け、感動を創り出すことで、人と人をつなぎ、社会にとって意義のあるものを提供する。そして、世界を感動で満たしたいという思いを共有できるクリエイターとのつながりを深めていく」と語り、プレスカンファレンスを締めくくった。
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